【連載小説】朝陽のむこうには ~サバトラ猫のノア~ 6〈全8話〉
僕はおかあさんの運転する車の中で車窓から外を眺めていた。
次々と街路樹が流れていく。
車が角を曲がってから、それは家々が見える景色に変わった。
住宅街に入ってきたみたい。
弟は僕をひざに乗せて後部座席に座っている。ほとんど身動きをしないで、タオルの上から僕の背中をそっとなでている。
僕が眠っていると思って起こさないようにしてくれているんだ。
しばらくして、車は速度を落として停車した。
「おかあさん、先に家に入っていい?」
弟が小さな声で訊いた。
「いいわよ。大輝は猫さん