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号泣。でもママのところには「帰らない」。6歳娘の大冒険【6月15日〜16日 宮城県石巻市】

今日の朝は、娘も私もそわそわ。いつも以上に早起きして朝食を済ませると、一緒に持ち物をチェック。水筒、着替え、サンダル…リュックに詰めて、準備OK!道の駅から今日の目的地へと車を走らせる道中にヘアアレンジも整えて、ニコニコ。うん、いい顔してるね!

今日の目的地、それは「MORIUMIUS(モリウミアス)」。2015年、森と海、豊かな自然に囲まれた石巻市雄勝町にある利用されていなかった廃校をリノベーションして誕生した子どもの複合体験施設。暮らしと自然が共存する環境を学び、体験し、地域とつながるプログラムが年間を通して行われている。今回は、旅の途中でタイミングよく「MEET MORIUMIUS 田んぼオーナー2019」に、娘が参加できることになった。この旅で唯一、旅立つ前から予約していたプラン。車中泊した道の駅「上品の郷」からは約1時間。今日は雨、しかも後半の山道は険しそうなので、余裕を持って出発した。

まちの約8割が津波によって壊滅したという雄勝町。津波が押し寄せた湾に出ると、防潮堤の工事が進められていた。想像よりもとても高い。Google Mapにはあるガソリンスタンドが、どこにも見当たらない。この地にあった暮らしを思いながら、車を走らせる。山道に入ると、雨音が強まり、杉林の先に、モリウミアスが見えてきた。

平屋だったであろう木造校舎を思わせる趣ある外観。新緑の中に佇むその姿は、とても雨が似合っていた。なんだかいい予感。娘は足早に校舎の中へ。私たちの方を振り返り、少しはにかんだ表情を見せて、一緒に参加する小学生の輪の中に飛び込んで行った。

モリウミアスのプログラムは、子どもと大人は別行動が基本。1泊や2泊の短期プログラムは大人も宿泊できるが、プログラム開始後は、ほぼ顔を合わせることはなく、食事も寝る場所も別々。6歳・年長の娘にとって、それは生まれて初めての経験。「子どもだけでお泊りする」ことに目を輝かせて「(モリウミアスに)行く!」と自ら言ったけれど、親としてはドキドキを隠せない。

今回のプログラムは、無農薬ササニシキの田植え作業と雄勝町の自然探検の2本柱。1日目が雨だったため、2日目に田植えをすることが決まったらしい。今日はここモリウミアスをフィールドに過ごすようで、レインコートを着た子どもたちが畑を囲んで何やら始めている。大人はモリウミアスの敷地内を散策したり、読書をしたり、居合わせた人と会話をしたり。校舎の隣の宿泊棟で、子どもと離れ、思い思いの時間を過ごす。

私はスタッフののんちゃんにご案内いただき、モリウミアスの中を、ゆっくりと散策。2段ベッドが置かれたベッドルーム、ライブラリー、アースオーブンのあるアウトドアキッチン、薪で炊く露天風呂。築90年以上の校舎が、設計士さんや職人さん、5,000人ものボランティアさんたちの手で自然と共生する暮らしの場に生ま変わったという。畑や田んぼ、ハーブガーデン、ヤギや豚、ニワトリの姿も。(モリウミアスのこと、また詳しくメディアの記事にしたいと思います)

五感がフル回転しそうなこの場所で、子どもたちは何を感じ、どんな時間を過ごすのだろう。さっきは竹を使って、お箸づくりをしている様子が見えた。主人が隠し撮り。最年少らしい娘もしっかりと、その輪に加わっていて、少しホッとする。

夕飯前、子どもたちがキッチンであれこれ格闘している様子が遠目に見えた。火をおこしてかまどでご飯を炊いているの様子。親子が別行動を始めてから5時間ほど。あれ?娘の姿が見当たらない。大丈夫かな。

窓の外を見つめていると別の参加者の方から、娘が部屋で一人泣いていたという情報が。「ママー!」と、ベッドでしばらくしくしく泣き続ける娘にスタッフの方が寄り添ってくれて、「お母さんのところに帰る?」と聞かれると、「帰らない!」と答えていたという。わぁ、娘は耐えているんだ。一度ママのところに戻ったらその後は親と行動するというルールも、聞いたのかな。私の中で、いろいろな想いがめぐる。動揺が隠せない。

夕飯どき、大人は雄勝の豊かな食材を囲み、各地から集まった人々と楽しい会話を。こんなとき、授乳中の私はちょっと寂しさを感じるけれど、パタゴニアのビールを一口だけいただいて、満足、満足。(息子よ、ゴメンね)

それにしても、ここには実に多様な人たちが集まっている。会社の企業研修で関わり始め、プライベートでもプログラムの企画をして何度も訪れるようになった方。モリウミアスの企画段階からボランティアとして関わり続け、今もお子さんと第2の故郷のように通い続けている方。初めはプログラムに参加していた中学生だったけれど、この春からスタッフになったという方も。もちろん私たちと同じく今回初めて訪れたご家族もいる。オープンから4年を迎えようとしているモリウミアス。多様な人々の多様な関わりが、場をどんどん面白くしていることを知る。

お酒も加わって夜が深まるとともにますます盛り上がる大人の時間。私も久しぶりにお酒の席に参加し、楽しい時間を過ごしてはいるものの、やっぱりどこかで、娘のことがいつも気になり、ついつい窓の外に目を向けてしまう。大丈夫かな、もう泣き止んだかな。眠れているかな。あぁ、子離れできていないのは私の方だな。

ひとり葛藤の中にいるであろう娘のことを思いつつ布団に入り、ニワトリの声とともに朝を迎えた。山には霧が出ていた。

朝ごはんのとき。少し離れた子どもたちのテーブルの中に、娘の姿を発見。スタッフの方の隣で、ニコニコと会話をしていた。ホッとする私に、別のスタッフの方が、昨日は泣いたまま夕飯も食べずに寝てしまったこと、そのまま朝を迎えて、シャワーを浴びてスッキリしたこと、今はとても元気な様子であることを、こっそり教えてくれた。あぁ、娘は寂しさに耐えたんだ。でも疲れて、寝てしまったんだね。丁寧に関わってくれるスタッフのみなさんへの感謝の気持ちとともに、胸がきゅんと苦しくなった。今すぐに抱きしめたいけれど、今日のお昼過ぎまで、もう少し子どもだけの時間。娘を信じて、見守ろう。

雨が小ぶりになり、今回のメインプログラムである田植えを決行できることに。車で30分ほど移動し、農薬不使用ササニシキを育てる「田伝むし」木村純さんの田んぼに到着。木村さんは、米の消費量が減り、”もち系”と呼ばれるコシヒカリやあきたこまちの人気が高まるなか、さらりとして胃腸への負担も軽く日本人の身体にぴったりのササニシキを無農薬でつくり、加工品の開発も手がけている。モリウミアスでいただいた胚芽米は、主食をたくさん食べるのが苦手な私でも、ぺろりと一杯いけてしまう美味しさだった。木村さんの田んぼで田植えをして、田んぼオーナーになれるなんて、なんて贅沢なんだろう。

木村さんの合図で、田植えがスタート。娘は最近、泥んこ遊びよりも室内で遊ぶことが増え、ここに来る前は「お泊まりはいいけど、田植えはなぁ〜」とちょっと渋っていた。どうかな、参加したいと思えているかな。ちらりと子どもの田んぼを見ると、裸足になって田んぼに足を踏み入れ、ニコニコと苗を手に取る娘の姿が。お尻は泥だらけ。泥が顔にも飛び散っている。いい顔してる!

大人も子どものとなりで、田植えに参加できるというので、私も息子おんぶで田んぼにイン。あ、気持ちいい!!心も身体も、リセットされていく感覚。

子どもも大人も、全身で地球を感じて。田植えを終えたあとの、ササニシキのおにぎりの美味しさと言ったら。何にも変えがたい実感の伴った、至福の体験をさせていただきました。家族でこの時間を共有できたことも、本当に嬉しくて。秋に稲刈りに参加するのが、今から楽しみ。モリウミアスのスタッフのみなさん、木村さん、本当にありがとうございました!

モリウミアスでの2日間を終えた娘は、あまり多くを語らないまま、夕方4時には夕飯を済ませ、5時半には眠ってしまった。彼女が話せる時になったら、気持ちを話してくれるかな。ゆっくり待っていよう。力を出し切ったような寝顔を見つめながら、娘の成長に思いを馳せる。

私としては、帰ってきてくれても全然良かった。娘がそう決めたのなら、素直にそれを表現してくれれば、「おかえり」と迎えてあげようと思っていたし、娘にもそう話していた。でも娘の決断は、「帰らない」だった。意志の強い娘。どんなに寂しい気持ちに襲われても、自分で決めたこのプログラムへの参加を、全うしたかったのだろう。小さな心で、身体で、耐えて乗り切ったこと。ちゃんと見ていたからね。ママは心から、あなたを尊敬します。

子どもたちが寝入ってから、主人とコインランドリーへ向かい、娘の成長の証みたいなどろんこ服を洗濯。今夜の車中泊の場所に選んだ南三陸の道の駅「三滝堂」へ。旅立ちから16日。大きな階段を登った娘と、日に日にずりばいが上手になる息子にパワーをもらって、旅路は続きます。

いつの間にか、2日間降り続いた雨は止んでいた。明日は晴れるのかな。


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フリーランスライター・エディター、2人の子どものお母さん。人の言葉をありのままに聞くことで本質を見つめるインタビューがライフワーク。現在は主にウェブマガジン「greenz.jp」にて、「ほしい未来」のつくり手のみなさんの言葉を紡いでいます。
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