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命に、出会いに、ありがとう。奇跡に包まれた屋久島時間。【8月26日〜29日 鹿児島県屋久島町】

旅もいよいよ終わりが見えてきた。今回の日本一周、沖縄は行かずに最南端の地として選んだのが屋久島。これまで夫婦で種子島や奄美大島には訪れたが、屋久島は初めて。言わずと知れた、世界自然遺産。樹齢3,000年の屋久杉など、大切に守られてきた自然に出会える唯一無二の島として、いつか訪れたいと思っていた。子どもたちと一緒に、その生命の躍動を感じられたら、と。

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鹿児島のフェリーターミナルからほど近い城山公園の駐車場で目覚めた朝、朝食もとらずに乗り場へ。今回、費用や現地での移動を考えて、キャンピングカーは鹿児島に置いていくことに。現地でレンタカーを借り、ゲストハウスに2泊お世話になる。車中泊続きの旅のなかで、とても新鮮なプラン。私たちも心躍る。いそいそと荷物をまとめ、いざ、乗船!約4時間の船旅は、お昼寝したり、絵本を読んだり。船酔いすることもなく、快適に過ごせた。

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薄曇りの空のもと、屋久島・宮之浦港に到着。少しじめっとした島の空気が私たちを包み込む。あぁ、ついに屋久島に来たんだ。予約したゲストハウスのお母さんが、「小さいお子さんも楽しめそうなプラン、考えておきますね〜」なんて言ってくれていたので、それを頼りに、まずはゲストハウスに向かうことにした。昼食をとり、レンタカーを借り、いつもより小さくて身軽な移動に、子どもたちも楽しそう。レンタカー屋さんのお兄さんが親切に教えてくれた反時計回りルートで、宮之浦港からゲストハウスのある尾之間方面へ。道中、日本一のウミガメの産卵地という永田浜で、まずは深呼吸!

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海は透明、砂浜は白く、どこまでも美しい。娘は早くもパンツまでびしょ濡れに。水着に着替えちゃえばよかったね〜。家族でのんびり島の空気を体いっぱいに吸い込んで車に戻り、少し走ると林道に入った。次第に対向が難しいほどの道幅に。(キャンピングカーで来なくて本当に良かった…。)

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ここ、「西部林道」という原生林の中を通る林道で、車で走ることができる唯一の世界自然遺産地域なのだとか。道中、ヤクシカやヤクザルに出会えるとのことで、娘もマイカメラを構えて大張り切り。ワクワクして少し走ると…「いた!」と娘の弾んだ声。あらら、あっけないほどすぐに、お猿さんに道端で遭遇。続いてシカさんも、林の中からひょっこり顔を出してくれた。車を停めてパシャパシャやっても、ひるむことなくこちらをじっと見つめている。「本当にたくさんのシカさんとサルさんが住んでるんだね、お邪魔しますだね〜」なんて娘と話しながら、何度も出会う動物さんたちにご挨拶。

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約30分ほど。エキサイティングなドライブを楽しんでいると、娘、「めっっっっっっっっっちゃ楽しいかも。来てよかった〜!」と。娘が「帰りたい」と言い出してから5日ほど。あれから3回ほどかな、また「帰りたい」という言葉を聞いていた。「もうすぐ帰れるよ〜やったね!」と明るく言葉をかけつつも、その心の内が、すごく気になっていた。だからこの発言は、私にとってもめっっっっっっっっっちゃ、うれしかった!ありがとう。この大自然を、味わい尽くして帰ろうね。

西部林道を抜けると、また海沿いの景色に変わり、数分走ると今日お世話になる「ルアナハウス」に到着。高台にあり、ハワイをイメージした建物の先には、海が一望できる。なんて素晴らしいロケーション!迎えてくださったご夫妻に案内いただき、お部屋にチェックイン。共用のリビングとキッチンには絵本やおもちゃ、コーヒー、食器類などなどが揃っていて快適。広々としたテラスからの景色はもったいないほどに美しい。海を眺めながらぼーっとするのに最高の環境!

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シャワーを浴びて、別棟にあるダイニングで夕飯のひととき。トビウオの唐揚げに肉じゃがにエビフライに、お刺身まで!手作りのあたたかみあふれる豪華なお食事を堪能しながら、ルアナハウスのお父さん、お母さんとお話を。息子でも安全に川遊びできるところは?オススメのお昼ごはんは?温泉は絶対入りたい!…などなど私たちの思いを伝えると、明日以降のプランをあれこれ考えてくださった。お知り合いのリバーカヤックレンタルに電話してくださったり、温泉の入り方のマナーを教えてくださったり。どこまでも私たちの立場に立って親切にアドバイスしてくれるお人柄に感動し、しみじみ出会いに感謝の気持ちが湧き起こる。私がゆっくり食べられるように、息子の相手もしてくださったりして。

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おふたりのあたたかな温度に触れて幸せな夜を過ごし、ふかふかのお布団でゆるやかな眠りについた。すやすやすや。

翌朝、すっかりおふたりのことが大好きになった娘は、私たちをおいてひとりで朝食へ。もうお家のようにくつろぎながら朝食をとり、着替えを済ませ、念願のリバーカヤックへ出発!途中、教えていただいた「かもがわ」でお弁当を買い、レンタルの方との約束の場所、安房川へ。

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ライフジャケットを身に着けて、息子はおんぶ。安全に関する知識や川上りのルートや危険箇所をしっかりと教えていただき、4人でリバーカヤックに乗り込んだ。いざ、冒険へ!!

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川の流れはゆるやかで、小さな子どもを乗せた私たちでも、無理なくカヤックで前進することができた。清流から眺める景色は、悠久の時を感じる屋久島の大自然。圧倒的なパワーを感じながらしばらく進むと、砂浜が見えてきた。ここで川遊びでもしようか、と、カヤックを停めて降りてみることに。人はまばらながらも、ガイドらしき方と親子が魚を探していてお話したり、SUPを楽しむ学生グループに手を振ったり。のんびりと自然を楽しむ人々との、付かず離れずの距離感も楽しい。

娘は浮き輪で川にドボン!私も一緒にドボン!…つめた~い!!海とは違うひんやりとした川の水に、キャーキャー言いながら、ひとしきり川遊びを楽しんだ。流れもあって、冷たくて、あがったあとはサラサラしていて。普段は海派の私も、この川遊びにはハマりそう!

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息子は砂浜の脇にあった木の根元でスヤスヤ〜。これ、神様がくれた最高のお昼寝だね。

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遊び疲れた私たちも、木陰でお弁当タイム。おにぎりとおかずが竹の葉っぱに包まれた「たけのは弁当」、ここでしか味わうことのできない、最高のライチタイムだったなぁ。

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食後も魚を探したり、船でやってきたおじちゃんと遊んだり、時間を忘れて川遊びを味わい尽くした。

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帰り道、疲れて寝てしまった娘を車に残して少しだけ散策しようと「猿川ガジュマル」へ。島を一周する県道から少し入ったところに看板があって、車を停めてすぐにジャングルのような森の中へ足を踏み入れることができる。約100平米というガジュマルの群生。どこからが根っこで、どこからが木なのか。エネルギーをいっぱいいっぱい使って力の限り根を張り生きるガジュマルたち。生命力の塊のようなその空間に、なんだか圧倒されてしまった。間違いなく、ここには神様がいる。普段スピリチュアルなことにとことん疎い私だけど、ここには何かを感じずにはいられなかった。息子も「あーうー」と一生懸命声を上げ、木々を見上げていたっけ。

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大自然の余韻を楽しみながら、今度は温泉へ。海中に湧く海一望の温泉で、地元の人の管理で成り立っているのだとか。北海道・羅臼の相泊温泉を思い出しながら車を走らせる。県道から少し海側へ下ると、「湯泊温泉」の看板が。少し先に、温泉らしき仕切りも見える。地元の方に聞くと、水着で入浴する場所と裸で入る場所が分かれているとのこと。パパと息子は、裸エリア。娘(寝起きでちょっと不調)と私は、まずは水着着用のエリアで足だけ入浴。海水なのにあったかい、この不思議な感じも旅で2度め。すぐ横では子どもたちが海にもぐって遊んでいるはしゃぎ声も聞こえる。「ウミガメいたよー!」なんて声も。あぁ、気持ちいい。

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最初は足だけだった娘も、そのうち元気を取り戻し、洋服を脱いで裸エリアへドボン!天然の湯で心身ともにあたたまっていると、ゲストを送迎してきたルアナハウスのお父さんにばったり。そうそう、ルアナハウスでは、一人ひとりの過ごし方を提案してくれていて、送迎までしてくれている。本当に心温まるお宿に出会えて、心からうれしくなる。

夕方、ホカホカの身体でゲストハウスへ戻ると、すぐにお客さんが来てくださった。「キブカバン」というナチュラルウェアブランドを屋久島で営まれている、Yoneさん。以前偶然見つけて、その作品に一目惚れ。スカートを購入した際の丁寧なやりとりがこれまた感動で、いつか屋久島に行ったらお会いしたいな〜なんて思っていた。屋久島に到着してから問い合わせたところ、店舗はなく、でも、商品を持ってゲストハウスまで会いにきてくださる、と!気になっていた授乳対応ワンピースをお願いし、今日の夕方にお約束していたのだ。

車が入ってきたのを感じて表に出ると、あれ?さっき温泉で会った女の子。なんと、Yoneさんのお子さんだったなんて〜!いきなり運命的なものを感じながら、あれこれお話を。初対面とは思えないほど心地よく言葉を交わせる、不思議な時間。ワンピースはもちろん素敵だけど、それをつくるYoneさんにお会いできたことが、本当にうれしい。

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そしてこのあと起こったこと。思い出すだけで鼓動が高まるけれど、勇気を持って書き留めます。

Yoneさんとお話したり、お互いの子どもたちと遊んだり、試着したり。楽しい時間を過ごしていたとき、突然、息子の「ぎゃっ!」という大きな声が。ハイハイのポーズでバタン、と床に手をつき、動かない。「たすく?」と駆け寄ると、顔が硬直していて、目が合わない。唇が、みるみる紫色に変わっていく。ただならぬ異変を感じて主人を呼び、「たすくー!」と呼び続けるも、意識は戻る様子もない。

気が動転していた私たち、気づくと宿のお父さんとお隣の部屋で宿泊していたお姉さんも来てくれて、お父さんが息子を抱っこしてくれた。実はお父さん、元消防隊員。呼吸や心音をチェックしてくださり、「呼吸はしてる。救急車呼ぶより早いから消防署行こう」とすぐに車を出してくださった。娘に聞くと宿にいるというので、息子を抱っこした主人とふたり、車に乗り込む。車中でも息子は小さく息をして、でも意識は戻らず、顔は硬直したまま。名前を呼び続ける私たちも、不安がどんどん大きくなる。

3分ほどで消防署に到着。待ち構えていてくださった救急隊員の方々がすぐに救急車に乗せて酸素濃度をはかり、酸素マスクをつけて…。「息はしている」ということを望みに祈るしかない私たち。ただただその様子を見つめ、名前を呼び、祈り続けていたら、しばらくして、「ぎゃーっ」と小さな泣き声。「戻ってきた!」と救急隊員さん。「泣いたらもう大丈夫です。おかあさん、抱っこしてあげてください」。促されるままに抱っこすると、息子と目があった。あぁ、戻ってきてくれた!!!

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この写真は、その動転した気持ちのなかで、主人が記録としておさめた大切な1枚。息子が意識を失っていたのはおそらく、5分ほど。でも私たちにとっては、30分にも1時間にも感じられるほどの長さだった。「このまま戻ってこなかったら…」とまで考え、生きている心地がしなかったその時間のことは、今も鮮明に、生々しく思い出される。

その後近くのお医者様に診ていただいたところ、「泣き入り引きつけ」という症状を教えてくださった。何かショックなことや衝撃があって激しく泣いたあと、一定時間、低酸素状態になって意識が低下することがある。後遺症もなく、幼児期を過ぎると自然に発症しなくなるのだとか。息子も問題なさそうとのことで、そのままゲストハウスへ戻ることができた。宿で先にご飯を食べて待っていてくれた娘と、息子の無事を喜び合い、私たちもご飯をいただく。美味しいご飯が目の前にあるけれど、なんだか放心状態。何事もなく、本当に、本当に良かった。この夜は、ただ、それだけ。

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結果としては、なんでもない、乳児によくある症状だったのかもしれない。でも私にとっては、命と向き合う体験だった。お父さんが消防隊員だったこと、隣の部屋のお姉さんも実は保育士さんだったこと、消防署がすぐ近くだったこと。奇跡みたいなたくさんの幸運に恵まれたおかげで、的確な処置と判断がなされ、息子は戻って来られたのだと思う。これが4人だけのキャンピングカーの中だったら…と思うと、人のつながりに、この島での出会いに、感謝でしかない気持ち。神様、本当にありがとう。

「旅の疲れもあるかもしれませんね」というお医者さんの言葉が頭にひっかかっていた私、本来であれば今日屋久島を立つ予定だったが、主人と相談して、ルアナハウスにもう一泊させていただくことにした。翌日は心身ともに疲れを感じたので、午前中はのんびり宿で過ごし、昼過ぎから、ヤクスギランドへ。気軽な50分コースの散策路を選び、樹齢1,000年を超える屋久杉が息づく森の中を4人でゆっくりゆっくり歩いた。今あるこのときに、家族の時間に、感謝しながら。

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屋久島最後の夜は、3人のお子さんのいるご家族が隣の部屋に来て、賑やかに。一緒に花火をして、遊んで、ルアナハウスにいるみんなが大家族みたいだった。翌朝、みなさんとの別れを惜しみながら、宿をあとにしました。お父さん、お母さん、出会ってくれたみなさん、本当にありがとう。また必ずここに、家族4人で帰ってきますね。

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命と向き合い、奇跡に包まれた屋久島時間。それは、一番大切なものを思い出させてくれる時間でもあったと感じています。こうして家族みんなで笑っていられるだけで、なんて幸せなんだろう。これ以上、望むものなんて、なにもない。原点にかえることができた、かけがえのない時間。

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ありがとう、屋久島。私たち家族は、帰路へつきます。




貴重な時間を割いて読んでくださったこと、感謝申し上げます。みなさんの「スキ」や「サポート」、心からうれしく受け取っています。