就職を考える君へゼネコンを提案します。

1:自己紹介と提案
 私は建設現場で働く現場監督です。もう少し書くと、割と大きめなゼネコンに勤務する社員です。勤務年数は10年を突破して、まだしばらくは記録を更新していけそうです。急に現場監督ですと書いてみましたが、現場監督って何?という方は、ヘルメット被って工事現場で図面を持って指示している姿をイメージしてもらえればと思います。
(よくわからない時は[現場監督]で画像検索してみてください。すぐ出てきます。)
 何を隠そう私もそのイメージで入社しました。大学の建築学科で勉強する中、設計や計画は擬似的に体験できましたが、実際に建物を作ることはできなかったので現場で働きたいなと思ったことが最初の動機です。あとは、学生時代の私には苦手なことがあり、それは「人前で喋ること」と「チームの中心になること」でした。工事現場に入れば否が応でもそれが身につけれるのではないかと考えて、ゼネコンに入社しました。そのため、実は具体的な業務内容は知らずに会社を決めて、そして運よく入社できて、今に至ります。
(試験前など追い込まれると真の力を発揮するタイプです。)
 どの業種に就職するか検討する際は、給料はいくらか、どんな業務か、白か黒かどちらに近い会社が多いか、などを調べると思います。今回ここでは、それらを調べる君へ、私の経験からゼネコンに入って身につけられた能力や専門性を説明したいと思います。それは、就職を決める時に上に書いたような理由以外で「何を身につけられるか」も決め手になりえることを伝えたいからです。そして就職先の一つとしてゼネコンを提案します。
(建物を作ることが好きな方はそのまま入社してください。)

整理すると、就職には、その仕事で身につけられることも検討事項になるよ、その理由をゼネコン経験から書くよ、就職先にはゼネコンもあるよ、となります。そのことをこれから書いていきます。
(一部プロモーションを含みます。)

2:ゼネコンとは、請負とは
 まずは一般論を共有したいと思います。ゼネコン社員でありながら、ここに書くために[ゼネコンとは 請負業とは]と検索欄に入力しています。ここで君と一緒に学んでいきたいと思います。
 ゼネコンとは、ゼネラル・コントラクターの略です。コントラクターは建設工事分野の「請負者」という意味です。そのためゼネラル・コントラクターとは、「総合請負者」となります。
 次はその「請負」について書きます。ざっくり書くと完成させることで報酬をもらう仕事です。もう少し細かくは、請負者がある工事内容を工事期間内で完成することを約束し、発注者がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約束することが、請負業となります。
 そのため、契約上で決められた工期を守ることは当然ですが、それ以外の安全・品質・原価管理についても「総合的」に行う会社が、ゼネコンということになります。ちなみに海外の建設業はこの請負とは違う形態のため、ゼネコンは日本でしか通じません。
(そのため海外に出て失敗することがありますが、海外から日本に入って来づらい理由にもなっています。)

まとめると、ゼネコンとは、ゼネラル・コンストラクターの略だよ、総合請負者で工事期間を守る仕事をするよ、建設工事を総合的に請け負う会社だよ、となります。今できたそのイメージで、今までのゼネコン≒談合のようなブラックなイメージを上書き保存してもらって大丈夫です。
(一応参考までに、2005年に「談合決別宣言」を行い、2024年から「時間外労働の上限規制」が適用され、働き方の改善がなされます、と書いておきます。)

3:能力は工事で、専門性は工務で
 ここでは現場監督の仕事を説明しながら、身につけられる内容を書いていきます。現場監督の仕事は、工事現場の品質・原価・工程・安全を管理することです。全般的な内容については、就職サイトでわかりやすくまとめられていますので、そこを読んでもらうとして、ここではそこにはあまり書かれていなかった業務の分け方から書いていきます。
 現場監督の業務は、大きくは「工事」と「工務」と分けられます。「工事」はイメージ通りの現場監督です。「工務」は図面管理、設計者と打合せ、発注者と会議などの業務になります。デスクワークや事務所内での打合せが多くなります。業務が異なるため、それぞれで身につけられることが異なります。
 「工事」は、工事現場で、全職人に朝礼をして、担当業務の職人に指示して、工事を進めます。私が苦手だった「人前で話すこと」と「チームの中心になること」が必要な業務です。コミュニケーション力(いわゆるコミュ力と伝達力)とリーダーシップ力(現場の統率力と管理力)などの必要な能力が身につきます。
 一方「工務」は、窓などの外装材からカーペットなどの内装材までの材料知識、火災時の避難経路や避難時間を確保するための扉やシャッターの機能知識、品質を確保できるために必要で適切なコスト把握、設計変更や発注者の追加要望を行うか行わないか判断するコスト感覚、図面の作図・運用ルールと設計者と監理者との決定事項の共有と承認スケジュール管理、モノの製作期間の把握と取り付け予定の職人を準備するスケジュール調整、職人の作業姿勢に無理がなく安全に作業できる工事計画、作業がラップして作業時の立入禁止範囲が重複することがない工程計画、など工事現場の外で、品質・原価・工程・安全を管理します。工事開始前に、不具合が出ず、利益が上がり、工期内に、無事故無災害で工事が完了するように計画します。工事を計画する上で必要な建築特有の専門性が身につきます。

簡単に書くと、ゼネコンでは工事と工務と業務があり、工事では現場で必要な能力が身につき、工務では現場で必要な専門性が身につきます。そう理解してもらえればと思います。

4:能力と専門性を更新する
 身につけた能力と専門性をどう活かすかを、最後に建物を造ることから説明します。建設業は基本的に5W1Hが現場毎に全て違います。「工事時期」「工事場所」「 施工者」「建物の用途」「発注者の目的」「 施工方法」が変わります。
 建物を計画から工事を行うなかで、活かされるのが今までの経験で得た能力と専門性です。それらの普遍的な部分を使い、現場毎の特異的な内容を今までの経験と組み合わせ、自分の答えを出して工事を進めます。建物を造る中で自分を更新できます。そういう意味で、現場毎で変わる「施工者」には自分も含まれています。

仕事をする中で、何度も自分の能力と専門性が更新されます。さらにゼネコンでは、その途中で私や君が死んでからも残る建物を造ることができます。

5:まとめとお願い
 私は不足していた能力を身に付けるために就職先を決めました。考えていた以上の力を得ることができ、満足しています。今は、その能力と専門性を「総合」的に活用して、さらに自分を更新しています。そのおまけとして、何十年か建物が残るので、ちょっとした自慢とともに家族と利用できてたりします。君も就職を考える際に、君に必要な能力と専門性がその仕事で手に入れられるか考えることが良い就職につながりますので、ぜひ考えてみてください。
(ゼネコンは総合請負者であり、建物を未来に残す仕事と覚えてください。入社しなくてもイメージ更新はお願いします。)

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