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心と身体の声を聴く 〜断食プログラムに参加して〜

最終日の朝、山の上にくっきりと綺麗な虹がかかった。
それはまるで、私たちを祝福してくれているかのようだった。

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海と山と空に囲まれた豊かな自然の中で、心と身体をリセットするために、一週間の断食プログラムに参加した。

プログラムに参加しようと決めた理由の一つに、”海が眺められるテラス”があった。海好きな私には大きなポイントとなった。
昨年ワークショップで訪れた岩手の陸前高田の宿泊施設も、テラスから一望できる海と山と空が絶景で、テラスで食べるごはん、寝転がって仰ぐ星空が最高だった。

ここの施設はプログラムが豊富で、食事管理だけでなく、朝ヨガ、瞑想、気功体操、散歩など、精神面と身体面、両方からきめ細やかなサポートをしてくれる。
こうしたプログラムの参加は任意で、そのときの自分の心と身体の声を聴いて決めることができる。

また、身体を整えるための様々なマッサージや岩盤浴も組み込まれていて、心身共にリラックスして整えられる。

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半断食は日常的に行なっているのだが、断食は初めてで、3日間も空腹感に耐えられるのか、少し不安があった。でも、結論から言うと、意外と空腹感は感じないし、思ったより大変ではなかった。
料理を作らなくていい(自分は食べないのに家族の分の料理は作るというのは、なかなかハードルが高い)、ほかにも断食をする仲間がいるというのが大きかったように思う。

とはいえ、しんどいこともあった。
断食中に鈍い頭痛が断続的に出たのだ。
日頃、カフェインを多く摂取している人は、離脱症状として頭痛が出たりするようだが、私の場合は首と肩のひどいコリから来るものだった。
頭痛があるときは、痛みに逆らわずに睡眠をとると幾分か症状が和らいだ。
また、ヨガやセルフ整体講座で首や肩にアプローチすると、頭痛が徐々に改善された。
そして、きわめつけは、オプションの鍼灸マッサージを受けたこと。
井原先生がゴッドハンドと言われる所以を、身を持って体感した。
首を左右にひねった時のひきつりが解消され、肩の盛り上がりがなくなり、肩や腕の可動域が広がった。
おおげさではなく、身体に羽が生えたように軽くなった。本来の緩んだラクな状態に身体が戻ったことで、身体が喜んでいるのを感じた。

断食3日目の朝には、胃がむかむかした。
前夜、就寝前に飲んだ生姜湯と梅湯が、消化しきれずに胃に残っているような感じがした。
低血糖を防ぐために、一日3回まで飲んでいいとされている甘い生姜湯を、寝る前に飲んだ。
ついでに、運動後の塩分補充のための梅湯も飲んでみたくなり、口に含んでみると、ほどよい酸味と塩味に舌が喜んだ。
身体は明らかに欲していなかったが、味の誘惑に負けて飲み干した。
翌朝に吐き気をもよおして、ああ、やっぱり身体の声はきちんと聴いた方がいいんだなあと前夜の行動を反省。

3日間の断食が終わると、いよいよ回復食が始まる。
舌を十分に休めて味覚が鋭くなったのもあり、素材の味を生かして作られた薄味の料理は、どれも美味しかった。
トウモロコシやキャベツの甘味。
ゴーヤや玉ねぎの苦味。
トマトやレモンの酸味。
出汁やじゃこの旨味。
また、よく噛んでゆっくり食べるようになったからか、胃が小さくなったためか、少量で満足できるようになった。

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    (こちらは最終日朝の普通食)


それでも、やっぱり初日の夜に飲んだ"具なし味噌汁"が忘れられない。
それは、朝から水とお茶だけで過ごしていた私にとって、待ちに待った食事だった。
鼻に抜ける出汁の香り、口に広がる出汁の旨味、細胞一つ一つにしみわたる感覚を味わった。
日本人でよかった。
そして、カップ一杯のお味噌汁をゆっくり時間をかけて食した。

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回復食がスタートすると、俄然エネルギーが湧いてくる。
何かしたいという前向きな気持ちになった。
6日目は、朝からヨガやトレイルウォークをして一汗かいたのに、まだ元気が有り余っていた。雨が上がったこと、体調がよかったことも大いに影響していた。
朝食後、バスに乗って一碧湖に行き、湖畔を散策した。

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帰りがけに大室山にも登った。(といってもリフトで山頂に行ったのだが)
山頂に着いた途端に、サーッと霧がかかり、あっという間に一面霧に覆われて何も見えなくなった。と思ったら土砂降りの雨となった。
リフトにも乗れないほどの激しい雨が降り、山頂にいた人たちは足止めを食った。
15分ほど経つと、ふいに雨が止んで、太陽の光がうっすらと差し込む。
と同時に、霧が晴れてきて、幻想的な景色が広がった。

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雨でスタートした断食。
滞在中は雨風が強まり、窓に叩きつける激しい雨は、さながら嵐のようだった。
雷も轟いた。
濃い霧で海も山も見えない日があった。
そして、6日目には雨が止み、青空が広がった。

この一週間で、雪以外の一通りの天候を体験した。
晴れの日、曇りの日、雨の日、嵐の日。
それぞれの日を味わうことで、受け取った恵みがある。

太陽の有難み。
テラスで感じる心地よい風。
そして、そこでまどろむひととき。
風にそよぐ葉の音。
鳥のさえずり。
雨に濡れた植物のみずみずしい美しさ。
外出できないほどの雨が降ったことで得た、のんびりとくつろぐ時間。(晴れるとつい出かけないと勿体ないと思ってしまう)
しとしとと降る雨の音にいざなわれる深い瞑想。
雷鳴を聴きながら感じた「自分を現せ」というメッセージ。
雨上がりに響いた、夏の到来を思わせるセミの鳴き声。
山にかかったきれいな虹。
皆で長さを競った線香花火。

それはまた、喜怒哀楽、全ての感情を味わい尽くしなさいということなのかもしれない。

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素晴らしい出逢いもあった。
断食初日、みんなの前で自己紹介する彼女を見て、ああ、この人と話をしてみたいと心惹かれた。
話してみると、初対面とは思えない感覚があって、時間を忘れて、心のままに内面を語り合っていた。
彼女は変容のときを迎えていた。
本当の自分を現そうとしていた。
これから彼女の人生に面白いことが起こっていくだろうと直感で感じた。
すると、翌朝、
「あのな、私をインタビューしてくれへん?私、今、大きな変革期におるねん。それを記録として残しておきたいんよ」
と仕事のオファーをいただいた。
変革期にいる人とここで出逢い、その人をインタビューして、記事にできるという幸運に感謝した。
さあ、どんな物語が生まれるのか。
静かなワクワクが私の心を温めている。

そして、今度はどの季節に、やすらぎの里に帰ろうか。
帰りたい場所が、また一つ増えた。







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