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『傷だらけのタイトルホルダー』〜3杯目〜最後にちょこっと競馬探偵🕵️‍♂️

 「タイトル6冠‥」
この言葉の凄さは競馬でも共通する‥

強すぎる‥

『武藤選手はタイトルを
守ることが出来たんですか?』

 私は武藤が『タイトル』を『ホルダー』する事が出来たのかが気になった!

「俺も強い男にはずっと強くいて
欲しかったよ‥でもな‥
強い選手なら誰しもが通る道‥
ケガだよ‥
武藤は膝を大手術する大ケガを負ったんだ‥」
 それからは、武藤は無敵のヒーローではなく『傷だらけのヒーロー』となった‥
それでも‥
武藤はコナーポストから飛び続けた‥
プロレスの為に‥
ファンたちの為に‥」 

 今年の《天皇賞・春》途中棄権したタイトルホルダーと又もや重なった‥
あのレースで引退かと思われたが‥
ケガはなくタイトルホルダーは
なんとか復活をとげた‥
競馬の為に‥
ファンの為に‥

 『それで‼︎武藤の引退試合はどうだったんですか!?飛べたんですか?』

 プロレス教師は3杯目を呑みながら
 その時を噛み締めるかの様に
最後の試合を話し出した‥

《3杯目:タイトルホルダーの最後》

武藤の引退試合の相手は

先程も少し話した
ブレイク真っ只中のユニット

ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン
(制御不能な奴ら)

カリスマ!ヒールが売りの

『内藤哲也』

10年前は武藤が勝利してる相手だか
この時すでに武藤は60歳

プロレスラーの定年をはるか超えている
身体はまともに戦える状態ではなかった

試合開始のゴングが鳴った

武藤の膝の爆弾は爆発寸前‥
それでもリングに上がったは
傷だらけのタイトルホルダーは
プロだった

最後の試合で『灰』になると決めた男は誰かが乗り憑る様に大技を連発した

橋本真也「袈裟斬りチョップ、DDT」

蝶野 正洋「STF」

三沢 光晴「エメラルドフロージョン」

100kgの巨漢を投げる60歳にドームは揺れた

そして遂にファンが待ちに待った
チャンスが訪れた

もう昇っては行けないと医者に言われた‥

それでも‥

武藤はファンに三日月を見せるため

コーナーポストに上がった

三日月が昇る体勢が整った

実況が叫んだ

「さぁもう一度、もう一度だけ翼をください」

満員のドームが静寂に包まれた‥

さぁ!

しかし

その月は昇る事なく

武藤はゆっくりと
ポストから降りたんだ‥

見れない事は全員がわかっていた

ムーンサルトをやろうとした勇気と

ムーンサルトをやらなった勇気に

ファン達から『ありがとう』声援が飛んだ

 昇る事のなかった月は

次の世代に希望を託すように‥
全てを出し切り満足気に‥
マットに沈んだ‥。

「私の青春はこうして幕を下ろしたんです‥」

 話が終わり‥真面目そうなお客様は3杯目を呑み終えた‥

 カクテルが空になった事に気が付かない程
 私は感動していた‥

 空グラスのフチには3本目のレモンチャンピオンベルトが巻かれていた‥

 その時を思い出して悲しそうなお客様‥
 今度は私の競馬愛を伝える番だ‥

 感動のお返しに、私は競馬を知らないお客様に競馬の面白さと武藤敬司と重なったタイトルホルダーの話を熱く語った‥

 凱旋門賞という世界に挑戦して敗れた事‥

 前走のジャパンカップは絶対的逃げ馬パンサラッサにハナを取られ逃げれなかった事

 どれもが武藤敬司選手と共通する点があり
お客様もまた『武藤敬司』と『タイトルホルダー』を重ね‥競馬トークを真剣に聞いていた‥

 今週行われる有馬記念は競馬ファンにとって1年を締めくくる最大レースであり、不思議なことに1年の世相が馬券に反映されるという事も話した‥

 そして、1番重要な事を伝えた‥

 タイトルホルダーは
この有馬記念を最後に
『引退』するという事‥

 『え!てことは‥もう一度武藤敬司の試合を見れるって事かっ!?』


 タイトルホルダーの事を武藤敬司という真面目な教師が熱血20代に戻った‥

 熱血教師はよほど酔いがまわったのかタメ口になっていたが‥そんな事はどうでもいい!
 私はとりあえず、どうしても4杯目を呑んでもらって欲しく、頼まれる前にカクテルを作った‥

 タイトルホルダーに‥
 まだ取れていない4本目のG1ベルトを巻いて欲しかった‥

 すると‥奥の方から

『マスター‥タイトルホルダーを1杯‥』

 あまりに熱中しすぎており、奥のテーブル席に座った探偵風のお客様が来たのに気づいていなかった!

 『申し訳ございません!すぐにお作りいたします!』

 いつもより手際良く作り、すぐにお客様のテーブル席に持って行った‥

 探偵風なお客様は今回もメモ帳に推理をしていたが‥何のレース推理かもあまり覚えていない‥

 それより熱血教師とタイトルホルダートークをしたかったからだ‥

 真面目そうな熱血教師とのタイトルホルダートークは閉店まで続いた‥

 カクテルグラスの縁には4本目の
チャンピオンベルトが
まかれていた‥

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