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台詞を入れるということ。

 舞台役者の仕事は「感情を動かすこと」と以前の記事で書いたが、その前段階として役者が最初にするのが台詞を入れることだ。

 役者は台詞を「おぼえる」のではなく身体に「入れる」ものだと思っている。「おぼえた」台詞は頭で考えて意識して言わなければいけない。身体に「入った」台詞は意識しなくても、言えるものだ。

 不思議なことに、上手な役者と稽古しているほうが自分の台詞も入りやすい。なぜだろうと思ったので考えてみた。

 まず、記憶方法についてだが、人の記憶方法には「視覚型」「聴覚型」「体感覚型」があるとされている。(最新の学説では否定されていたりもするのだが)

 読んだほうが覚えやすいか、聴いたほうが良いか、喋ったほうが良いか。自分がどの感覚が強いかで記憶しやすが違うらしい。

 役者も様々な台詞の入れ方をする。台本をひたすら読む人、録音して聴いて覚える人、実際に台詞を言う人。

 自分がどの感覚が強いかは知っていて損はないと思う。不得意な方法で台詞を入れようとするのは効率が悪い。

 台詞も現代の日常が舞台の台本は入れやすい。だが、翻訳劇だったり時代劇場だったり、言い回しが慣れないものは、なかなか入らなかったりする。

 どれだけの言葉を読み慣れているかは、結構大切だ。(だからこそ、役者は読書するべきだ)

 もう一つ、人は感情が動くと記憶に残りやすいと言われる。子どもの頃の記憶や初めての経験がいつまでも残っているのは、感情が大きく動くからだ。

 ただし、台詞を入れる読み稽古の段階から、役の感情を掴むというのは難しい。

 感情というのは刺激に対する反応だ。つまり、刺激が強いほうが感情は動きやすい。

 だから「相手役の感情を喚起するために、読み稽古の時には、おおげさに台詞を言う」ことを薦めている。

 台詞が上手な役者と稽古したほうがおぼえやすいのは、こういう理由なのだろう。





 

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