イオンモールの決算から考える今後と、海外市場から見えてくる消費回復の傾向

どうもコージです!
私は、毎日決算書を読んで企業の未来を妄想しています。
そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントを説明しています。

今回見ていくのはイオンモール株式会社です、もちろんイオンモールの運営をしている会社ですね。

こんなニュースがありました。

東証>イオンモールが続落 今期赤字転落、臨時休業響く
2020/7/8 10:39日本経済新聞 電子版

(10時20分、コード8905)イオンモールが続落している。一時、前日比92円(6.5%)安の1330円と4月28日以降、約2カ月半ぶりの安値をつけた。7日、2021年2月期の連結最終損益が40億円の赤字(前期は342億円の黒字)になる見通しと発表した。赤字転落は2002年の上場以来初めて。市場予想平均であるQUICKコンセンサスの189億円の黒字

イオンモールは上場来初の赤字となった事などを要因として、株価が大幅に下落してしまったようです。

今回はそんなイオンモールの今後について考えていきましょう。

それではまずこちらの資料をご覧ください。

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2020年3~5月の売上高は34.6%減の527.9億円、営業利益は83.7%減の24.7億円、純利益は79.9億円→134.7億円の赤字となっており大幅に業績が悪化している事が分かります。

新型コロナの影響で店舗の休業が続いていましたから、その影響が出てしまっていますね。

また、営業利益では黒字を達成しながらも純利益は大幅な赤字となっていますがそれはなぜでしょうか?

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その理由は、新型コロナによる店舗休業中の固定費については特別損失として計上しており、その額が158.1億円にもなるからだと分かります。

店舗を開いている時期に関しては、新型コロナによる客足の減少がありながらも営業黒字化は達成していたという事で強いですね。

続いてこちらの資料をご覧ください。

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イオンモールは日本市場の他に、中国、アセアンといった市場に進出している事が分かります。
そしてその在外子会社に関しては決算期の違いから、2020年1月~3月の業績を連結しているようです。

という事は中国に関しては新型コロナの影響をもろに受けていた時期であり、実際に21のモールのうち11モールで店舗を休業していたようです。

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また、アセアン市場に関しては3月28~4月23日まで店舗休業をしていたとのことですから、その悪影響が数字に表れるのは次回以降の決算となりそうですので、まだしばらく業績は厳しい状況が続きそうですね。

続いてこちらの資料をご覧ください。

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営業キャッシュフローが531億円ものマイナスとなっているのは非常に気になるポイントですね。

その主要因は専門店預り金の減少が351億円あった事だと分かります。
これはイオンモールが預り金精算方式という仕組みを導入しているからだと考えられます。

イオンオールの収益方法は、モールに出店してもらい賃料を得るというのが基本です。
その賃料に徴収漏れがないように、店舗での売上を一旦イオンモールで預かり、賃料や手数料などを引いて出店者へ渡すというのが預り金精算方式です。

つまり、店舗休業によってモール全体の売上が減ったことが、営業キャッシュフロー悪化の要因だという事です。
もちろんイオンモールからするとこの預り金は出店者へ支払う必要がある資金であり、イオンモールの資金だとは言えませんので実質的な営業キャッシュフローのマイナスは531-351=180億円ほどだという事です。

それでも大きなマイナス幅であり、店舗休業の影響の大きさが分かりますね。

続いてこちらの資料をご覧ください。

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中国市場を見てみると、店舗休業から再開後の5月には専門店売上で前期比83.5%まで回復している事が分かります。
特に物販の回復は早く5月時点では94.1%まで回復しているようです。

しかし6月には79.9%ほどまで下落し、物販に関しても81.4%まで下落してしまっています。

続いてこちらの資料をご覧ください。

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アセアン市場であるベトナムの店舗を見ても、新型コロナから本格再開後の5月には、専門店売上げで前期比92.8%まで戻り特に物販に関しては112.5%とむしろ上昇している事が分かります。

しかしその後の6月には専門店売上げで前期比83.3%、物販でも88.3%と下落している事が分かります。

中国もベトナムも似たような推移をしていますね、新型コロナによる自粛とその再開によって一時的に抑圧されていた消費意識が解放されて回復する一方で、経済再開に伴い各国で感染者拡大が起きていますから、しばらくするとまた、ムードが盛り下がり消費の減退が起こっていると考えられます。

続いてこちらの資料をご覧ください。

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中国やベトナムからは1ヶ月遅れで経済再開をした日本市場でも6月は専門店で前期比87.7%、物販では100.2%と大きな回復を見せています。

しかし日本でも東京都内を中心に、新型コロナの感染再拡大がニュースとして取り上げられ始めましたから、中国市場やベトナム市場と同じように7月は下落に転じてしまう可能性が十分に考えられますので、次の月次には注意が必要そうですね。

しかし日本市場においては、イオンモールの多くが感染が拡大していない地方部にありますからその点では強みがあります。
先日記事を書いた高島屋でも地方の方が戻りが早かったので回復傾向が続く可能性もあります。

しかし結局は空気感頼みなところがありますので、東京での感染拡大をマスメディアで流し続け、危機感あおりをし続けている今の状況だと、地方でも消費意欲が減退していく可能性がありそうなのは良くないですね。

続いてこちらの資料をご覧ください。

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イオンモールは今後海外で積極的に出店をしていくとしています。

日本は人口減少・市場縮小となる事はもう間違いありませんから、成長性の高い中国やアセアンの市場で成長していこうという戦略ですね。

新型コロナがありましたが、この計画は継続する(出来る?)のでしょうか?

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イオンモールは新型コロナの影響はあくまで一時的要因であり、出店計画に変更はないと発表しています。
しかし出店を進めるためには資金が必要なことは間違いありません。
今回新型コロナの影響で赤字転落し、営業キャッシュフローもマイナスとなってしまったわけですが、出店資金は足りているのでしょうか?

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投資のための資金計画を見てみると、営業キャッシュフローによって700億円ほど調達するとしています。
本業でキャッシュを700億円ほど稼ぐことが計画の一部に組み込まれているという事です。

という事とは今後想定通りの業績回復が起きなければ借入など別の資金調達方法が必要となり会社への出店による負担が大きくなってしまうかもしれません。

特にイオンモールのような大型商業施設は、ずいぶん前の段階から入札、建設と進んでいるはずですので、業績不振だからと言って途中で計画中止となるとそれもまた大きなコストがかかってしまいます、なのでやめることも難しいわけです。

という事で、今後は想定通りの需要回復が起きなかった場合には本業の不振に加えて出店計画による負担が大きくなり、2重のコスト増となり業績が大きく悪化してしまう事を予測します!!

しかし新型コロナによる客足減少にもかかわらず、店舗開店時には営業黒字を達成していますので客足が回復すれば順調に成長しそうです。

とりあえずは次回の月次で日本市場が他国と同じように減少に転じてしまうのか、それとも地方出店の強みを生かし需要回復となるのかに注目です!!

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