日産自動車が大赤字になる理由を解説

どうもコージです!
私は、毎日決算書を読んで企業の未来を妄想しています。
そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントを説明しています。

今日取り上げるのは日産自動車です。

以前書いた記事(日産自動車の決算から学ぶ、デリバティブ取引と未来)

この以前の記事で、日産自動車は短期的には業績が大きく悪化しない可能性が高い理由を書きましたが、大赤字となる可能性が高くなりました。
今回はその理由を説明していこうと思います。

まず、以前書いた短期的には業績が大きく悪化しない理由について1部抜粋です。

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それでは、こちらの資料をご覧ください。

日産の業績不振の最大理由は販売台数の不振である事が分かります。
また、イメージの悪化は非常に大きいですから販売台数が回復していく事は難しいでしょう。

では業績は悪化の一途なのでしょうか?

これに関しては、業績回復は難しいとは思いますが今後さらに悪化していくかというと一概にそうとも言い切れません。
こちらの資料をご覧ください。

販売奨励金というのが利益の大きなプラス要因であることが分かります。
ゴーン体制の日産は販売台数の拡大を優先しており、1台売ったらいくら払うよというような販売奨励金を多く渡していました。
しかし、ゴーン体制以後は販売台数へのこだわりを捨て販売奨励金を減らしているようです、つまり業績を回復するためには販売台数を以前の水準まで戻す必要性はないという事です。

さらに昨期の広告費800億円から今期は670億円へと減らしています、現状のような悪いイメージを持たれている状況だと広告が逆影響になってしまうのでさらに広告費を減らすのではないでしょうか。

という事で短期的には広告費の減少と、販売奨励金の減少で販売台数が下がってもある程度の利益は確保できる可能性があります。

しかし自動車産業が大変革期を迎えているこの時期に、これだけの問題を抱えてしまったのは長期的に見れば詰みに近いかもしれません。

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という事で広告費の減少と、販売報奨金の減額で販売台数減少の中でもある程度の利益を出せる可能性があるという事を書きました。

しかし、新型コロナの影響で大赤字になる可能性が非常に高くなったわけです。それはどうしてでしょうか?

日産が大赤字になる理由!!

工場が稼働できないから?
販売台数がさらに減るから?

そんな理由が考えられるかもしれません。

しかし日産が大赤字になる理由は、コロナを理由にすることで減損損失をする言い訳が出来たからです。

ちなみに、減損損失をざっくり説明すると将来の損失の前倒しです。
例えば10年間使う工場を100億円で建てたとします、その工場からどうやら年間5億円の計50億円分しか回収できなそうだとなった時に通常であれば年間5億円の赤字を10年間計上することになりますが、1年で50億円赤字にしてしまおう(45億円分の赤字を前倒ししよう)というのが減損損失です。
投資家へしっかり赤字予測の情報を開示しましょうという事です。

また、減損損失の効果としては赤字を先取りするわけですからその後の業績が好転するという効果があります。
毎期5億の赤字が無くなるので5億分業績よくなるよねって事ですね。

大不振だった日産自動車の業績をゴーン氏がV字回復させた手法が、就任前の年に巨額の減損損失を出す事です、就任後には減損分だけ業績が良くなるんですね。
もちろんその他の改革などの経営手腕も要因にありますが、一番大きいのは数千億レベルでの減損損失による赤字の前倒しだったんですね。

また、この減損損失は将来の予測が必要であることが分かると思います。
ルール上では減損の判断に恣意性を入れる事は出来ませんが、あくまで予測値で判断するとなると実質的には減損を行うかどうかにはある程度経営層の判断がかかわってくるわけです。

日産自動車は販売不振から、前回の決算で巨額の減損を計上する可能性もありました。
しかしゴーン氏以降トップが何度も交代しており、前回の決算時には社長になりたての内田氏は大きな決断が出来なかったともいわれています。

今回の新型コロナの件は決断を後押しするには十分すぎるんですね。
さらに、工場の稼働停止や販売不振なども含め将来予測がさらに悪くなっている可能性は高いですから、かなり大型の赤字を計上する可能性が非常に高くなったと考えていいでしょう。

次回の決算では多額の減損による大赤字を予測します。

しかしゴーン氏の時のように減損によって日産が立ち直る事は難しいでしょう。
自動車産業自体が大変革期ですからこれだけ内部問題によって動きが遅くなってしまうと手遅れになる可能性が高そうです。

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