ニコンの決算から考える700人の早期退職の理由と今後

どうもコージです!
私は、毎日決算書を読んで企業の未来を妄想しています。
そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントを説明しています。

今回見ていくのは株式会社ニコンです、カメラメーカーとして有名な企業ですね。

こんなニュースがありました。

ニコン 海外工場で700人削減 カメラ事業不振で

ニコンは28日、デジタルカメラを中心とした映像事業の構造改革の一環で、東南アジアの工場で合計700人の従業員を削減したと発表した。早期退職などにより2019年秋から3月末まで段階的に実施。人数はタイで500人、ラオスで200人と各拠点の従業員の約1割にあたる。

オンラインで開催された20年3月期の決算説明会で発表した。今後も新型コロナウイルスの感染拡大の影響を加味して「生産規模に応じて最適化を図る」(池上博敬映像事業部長)とする。

ニコンが28日に発表した20年3月期の連結決算(国際会計基準)は、純利益が前の期比88%減の76億円だった。新型コロナの影響でカメラの市場投入が遅れるなど販売が減少。子会社の減損損失も計上した。

21年3月期の業績見通しは未定とした。足元でもカメラの販売回復は遅れている。映像事業について「2期連続の赤字を覚悟せざるを得ない」(徳成旨亮専務執行役員)としている。

どうやらニコンは大幅な減益となってしまい、カメラ関連の海外事業で700人にも及ぶ人員削減を行うようですが、それでも映像事業(カメラ関連)については「2期連続の赤字を覚悟せざるを得ない」という状況のようです。

今回はそんなニコンはどうして700人にも及ぶ早期退職を実施するのかそして、今後はどうなるのか考えていきましょう。

それではまずこちらの資料をご覧ください。

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売上高は16.6%減の5910億円、営業利益は91.8%減の67.5億円、純利益は88.2%減の78.4億円となっており、業績が非常に大きく悪化している事が分かります。

もう少し詳しく内容を見ていきましょう。

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事業セグメントとしては①映像事業(カメラ事業)②精機事業③ヘルスケア事業④産業機器・その他、の4つであり、その全てのセグメントで売上、利益ともに前期を下回っている事が分かります。

さらに、①映像事業は171億円の赤字で③ヘルスケア事業も24億円の赤字となっていてそれを②精機事業の467億円の黒字で補っている事が分かります。
実はニコンはすでにカメラ(映像事業)では稼ぐことが出来ない会社になっていたんですね、スマホカメラの質がすごい速度で上がりましたし、様々な加工アプリなどが登場した事でハード・ソフト両面で事で伸びているのでなかなかニコンなどのカメラは売れなくなってしまっているのですね。

さらに詳しく各事業を見ていきましょう。

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映像事業に関しては、レンズ交換式のデジタルカメラ、交換レンズ、コンパクトデジタルカメラという主要な商品の全てで市場規模が縮小している事が分かります。

市場規模自体が縮小してしまっていますし、スマホにとって代わられているのでニコンがどれだけ頑張ったとしても、業績の回復は考えずらいですね。

さらに2020年3月期に関しては新型コロナの影響による需要減で計画を下回ってしまったとしています。
確かに考えてみれば外出したり、誰かと会ったりしなければカメラって使わないので、当然売れないですよね。
という事はこの影響は4月5月と続いている可能性が高く、2021年3月期の業績も悪化している可能性が高そうです。

続いてこちらの資料をどうぞ。

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精機事業に関しても、主力製品のFPD露光装置、半導体露光装置ともに顧客の投資が一巡したという事で市場規模が縮小している事が分かります。

とはいえこの精機事業がニコンの稼ぎ頭で467億円の利益となっていますから、顧客が新たな投資段階になった際にどれだけ回復できるかは非常に重要ですね。

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ヘルスケア事業も、見通しの段階で前期を下回る見通しだった事が分かります。
また、計画を下回った要因としては新型コロナの影響で生物顕微鏡、網膜画像診断機器ともに売上が下振れしてしまったようです。

新型コロナの影響で病院に通うい方が少なくなってしまい、実は多くの病院の経営が厳しくなっています。
今後は新しい機器を導入する余力のある病院が少なくなっていく可能性が高いので、この事業も業績悪化が続く可能性が高そうですね。

続いてはこちらの資料をご覧ください。

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産業機器・その他の事業に関しても見通しの時点で前期を下回っている事が分かります。

つまり、ニコンは行っている全ての事業で市場規模の縮小や見通しの悪化という状況になっており新型コロナ関係なく状況は悪化していた事が分かります。
そこに追い打ちをかけるように新型コロナによるさらなる業績悪化があったわけですね。

続いてこちらの資料をご覧ください。

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ニコンの主力事業は競争が厳しく、研究開発を常に行う必要があり収益性が低下したとしても投資を継続しなければいけないと言っています。

精機事業の半導体関連のものなどは、完全な技術力勝負なわけです。
どれだけ集積率を上げるのかという勝負なので、付き合いでとかそんな理由では買ってくれませんので、技術力向上のための投資を辞めることが出来ないと言う事ですね。

つまり業績が悪化しているからといってコストカットはそう簡単では無いわけです。

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実際に業績悪化の中で、人件費や広告宣伝費は減らしていますが研究開発費や減価償却といった、開発のための投資は減らせていない事が分かります。

という事で、なぜ700名にも及ぶ人員削減が必要なのかが見えてきます。
市場縮小という、解決がかなり難しい状況で業績悪化の中でも開発費用は減らせないので、減らすことが出来る人件費を削っていかないといけないという事ですね。

ニコンの未来!!

ニコンの事業内容を見ていくと、主力事業が市場縮小という状況に立たされておりこのままでは業績は悪化の一途を辿ってしまう事になります。
しかし研究開発の手を緩めることは出来ないのでコストカットでは限界が直ぐ来てしまいます。

となると次の一手として考えられるのが、研究開発によって得られた技術力の横展開です。

こちらの資料をご覧下さい。

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カメラ事業や精機事情で得られた技術を利用して光加工などを行い、材料加工業に注力して伸ばしていこうとしている事が分かります。

こうやって横展開していけるのは強みでもありますよね。
どの道研究開発にはコストをかけなければ行けないので、基礎の部分や同じような研究が必要な部分は、精機事業とコストを折半出来て少ないコストで新規事業を進められるという訳です。

という事で、ニコンはしばらくのあいだは市場縮小により業績も悪化が続くでしょうが、横展開により低コストで始められる新規事業が当たり始めれば、復活の可能性もあるのではないでしょうか。

今後は新規事業の伸びに注目です!!



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