ANAの決算から考える大赤字で今後はどうなるのか

どうもコージです!
私は、毎日決算書を読んで企業の未来を妄想しています。
そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントを説明しています。

今回見ていくのはANAホールディングス株式会社です、もちろん航空会社ですね。

さてこんなニュースがありました。

ANAHD、コロナで4~6月期の最終赤字1088億円
新型コロナ サービス・食品
2020/7/29 19:44
ANAホールディングス(HD)が29日に発表した2020年4~6月期の連結決算は最終損益が1088億円の赤字(前年同期は114億円の黒字)だった。新型コロナウイルスの感染拡大で主力の航空事業が極度に低迷し、全体の売上高が前年同期比75.7%減の1216億円にとどまった。コロナ禍の長期化も懸念され、抜本的なコスト削減が急務となる。

どうやらANAは1088億円もの赤字となってしまったようです。

新型コロナの影響で、旅行・ビジネスともに移動の需要が激減してしまい航空産業は壊滅的な状況になってしまっている事は周知の事実ですが、こうやって改めて数字で見ると、厳しさが実感出来ます。

今回はそんなANAは大丈夫なのか、今後はどうなるのかについて考えていきましょう。

それではまずこちらの資料をご覧ください。

売上高は75.7%減の1216億円、営業利益は161億円の黒字→1590億円の赤字、純利益は114億円の黒字→1088億円の赤字となっており、ニュースの通りで大幅に業績が悪化している事が分かります。

続いてはセグメントごとに見てみましょう。

その他という小規模なセグメントを除く、全セグメントで業績が大きく悪化してしまっている事が分かります。
ANAは全事業が航空関連でしたから、全てのセグメントが大打撃を受けてしまったようです。

特に主力の航空事業が売上は4397億円→953億円となりものすごい落ち込みを見せている事が分かります。

どうしてそれだけ売上が下がったのかというと、旅客数は、国際線で96%減、国内線で88%減となっているからだと分かります。

しかし貨物では重量は54%減少する一方で、単価が+110%となった事によって収入は3%減に収まったようです。

どうやら貨物では経済の停滞によって既存のビジネス需要減る一方で、新型コロナによるマスクなどの物資輸送は増えたようです。
あとは人が乗らないので物資の積み込める量が増えたために単価が上がったと考えられますね。

しかし、今期の業績を見ると分かり通りでやはり人を運ばないと利益が出ないようですから、旅客数が回復するかどうかが勝負となるのでしょう。

続いてこちらの資料をご覧ください。

かなり厳しい状況にいるANAですが、相当なコストカットに動いていたことが分かります。
グループ36社、43500人にも及ぶ一時帰休なども行っているようです。
ちなみに一時帰休とは単純に言うとリストラはしないけど、しばらく休んでいてねって事です、その際にも賃金の60%は支払いの必要がありますのでそれでも休ませるという事は、言ってしまえば来ても仕事がないよって状態だということですね。

その結果として、3ヶ月で1625億円のコスト削減につながった事が分かります。

営業費用は前期比で2000億円以上減少したようです。
しかしそれでも1590億円の営業赤字ですから、コスト削減でどうにかなるレベルの話ではないことが分かります。

航空機を含む多くの機材は長期のリース契約を結んでいたりと、航空業界はとにかく固定費が大きいですから売上が立たないとどうしても大赤字になってしまうんですね。
ANAのバーンレート(1ヶ月に必要な資金)は1000億円と言われています。

企業努力での対策ではどうこう出来る話ではなく、移動の需要が戻ってこない事にはどうしようもないんですね。

さてこれほど厳しい状況ですが、財務状況は大丈夫なのでしょうか?

まず現預金が1094億円から5169億円へ4075億円も大幅に増加している事が分かります。

有利子負債が5160億円も増加していますから、かなりの借入によって現預金を増やしたことが分かります。

有利子負債は合計で1兆3589億円にもなってしまいましたから、今後業績が回復したとしても長期的な悪影響があると考えておいた方がいいですね。

一方流動負債は5210億円ほどですから、現在の現預金だけでほぼ足りていますので、短期的には余裕がある水準にいることが分かります。

しかし本当に余力があるのかというもちろんそうではありません。

続いてこちらの資料をご覧ください。

営業キャッシュフローは1353億円ものマイナスとなっていることが分かります、たった3ヶ月の営業活動の中で1353億円もの現金が失われたという事です。

このまま需要が回復しないとして単純計算すると1年間だと1353億円×4=5416億円となりますから、1年後には今持っている現預金が全てなくなってしまう計算になります。

しかし、多少ではありますが需要は回復していますし、融資枠はまだ5000億円あるようですからしばらくの間は大丈夫でしょう。

とはいえ、しばらくの間と言っても先程の単純計算を使えば融資枠を含めて現預金は2年でなくなってしまいます。

新型コロナのワクチンが認可されて広く普及するまでとなると2年はかかると考えられますから、ワクチン待ちなんてしている余裕はない事は間違いありません。(もちろん徐々に需要は回復していますので先程の単純計算ではいかないでしょうが)

直ぐにでも需要が戻って来ないと厳しいANAですが、どの程度の需要回復を見込んでいるのでしょうか?

長期的な見通しは出せていないようで2020年8月までの短期見通ししかありませんが、国際線はほぼ回復しない、国内線は前期比で75%ほどまで回復すると見込んでいるようです。

貨物は横ばいのまま5割程度を見込んでいるようです。
一方LCCのPeachの国内線は8月には需要が回復する見通しを立てています。

ANAは国内線でもまだまだ落ち込んだ状態が続き、国際線の需要回復はそれこそワクチンが普及してからとまだまだ先になるでしょう。

収益性の低いLCCのPeachの国内線しか、回復の見込みがないということで、この見通しの通り回復しても黒字化はまだまだ遠そうです。

さらに最近は再び新型コロナの感染拡大が騒がれ始めていますから、見通しが悪化する可能性は十分にありそうです。
ちょうど今日知人から、夏休みこそは旅行に行こうと思っていたけれども、取りやめたなんて話も耳にしました。

これから秋・冬と迎えていくと当然気温の低下に伴い人の免疫力は低下しますから感染者数は増加するはずです。
このまま感染者数を重要指標とした世間の空気感が続いていくようだと、需要の回復は遠いのではないでしょうか。

世間が重視する指標が変わってこないと需要の回復は遠そうですので、まずはその変化が起きるかが大切になってきそうです。

という事で今後も需要回復は遠く、業績の悪化が続く事を予測します。
そして今回借入を相当増やした事で、新たな投資が難しくなっていますので、長期的にも業績の悪化が続く事を予測します。

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