【無料回】グッドコムアセットの決算から考える伸び悩みの可能性と販売不振のリスクが大きい理由

どうもコージです!
進撃の巨人の最終巻を読んで号泣できる程度には涙腺がボロボロです。

さて今週はゲーム業界について取り上げていましたが、今回は気分を変えて賃貸用不動産の販売を行っているグッドコムアセットを取り上げる事にしてみました。
なので今回はコロナ禍での不動産業界の現状とグッドコムアセットの今後について考えていきましょう。

それではまずは事業内容から見ていきましょう。

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投資用の賃貸不動産を販売しているグッドコムアセットですが、その主力商品のGENOVIAの特徴としては賃貸比率が高い東京23区内の駅から徒歩10分以内の物件が中心で、中古物件は取り扱っておらず新築を販売しています。

価格帯としては2000~5000万台となっており、大口顧客や1棟買いというよりは小口の個人顧客が多いと考えられます。

さらに全ての物件を投資物件として販売し、エリアや統一感、緑化によるブランディングをしているとしています。
統一感があるという事は、建設コスト面でもメリットがありそうですし、類似物件から収益の見通しが立ちやすいですから、投資物件として販売する際にも有効な戦略だと考えられます。

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またその顧客属性にも特色があり、公務員が主要顧客で顧客の98.3%を公務員が占めています。
その中でもとくに30~40代が多く79.6%を占めており年収としては500万から900万の層が88.1%を占めています。

公務員は年功序列で年収に大きな差はつきにくいですから、年齢でターゲットを絞れば、収入は把握しやすいので営業はかけやすそうです。

さららに性別としては女性が多く55.9%が女性となっており、これに関しては、戦略的に女性を取り込むことで成長してきたようです。

顧客のほとんどが公務員で資産がある方ばかりではないですから、不動産を買う際には大半の方が当然借入をすることになります。
その際に男性側は居住用の住宅ローンを組んでいる事が多いため、比較的ローンを組んでいる人の少なく借入のしやすい女性をターゲットにしていたようです。

職業、年齢、年収、性別などでターゲティングして戦略的に成長してきた企業だという事ですね。

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また、不動産の購入理由としては生命保険代わりとしての購入が多いようです。
ローンを組む際に団体信用生命保険、いわゆる団信に加入するため、死亡時や高度障害時に残りのローンがなくなり、残された家族に不動産を残せるという事で、生命保険代わりとして魅力なようです。

ですが不動産投資の方が保険より明らかにリスクが高いですから、個人的には保険がわりというのは微妙だと思っています。

とはいえ収入は安定している一方で大幅な増加は望めず、副業も原則的に禁止という中で公務員の方にとっては、不動産投資というのは一定の魅力がありそうです。

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また、これまでは女性メインだったわけですが、近年は新規顧客獲得のため販路を拡大し男性顧客を増やしているようです。

その結果、購入者の内リピート顧客が2018年10月期までは45%でしたが、2019年10月期以降は30%前後となっています。
公務員で女性で、30~40代でと絞っていくともちろん数が限られていきますから、業績拡大のためには販路の拡大は必須な状況になっているという事でしょう。

それではそろそろ業績を見ていきましょう。

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2021年10月期2Q(2020年11月~2021年4月)の売上高は146.0%増の196.7億円、営業利益は232.3%増の21.6億円、純利益は255.7%増の13.8億円となっており大幅な増収増益で好調だったことが分かります。

コロナ禍でも大きな成長を遂げていたようですね。

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売上の増加要因としては販売が、前期の19棟244戸→24棟644戸まで増加した事のようです。

棟数の伸び以上に戸数の伸びが大きいですからから、今期は大型の物件が竣工していたと考えられます。

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また新築用投資マンションの市場としても2019年には前年の7816戸→5977戸と減少していますが2020年は上期だけで3484戸となっておりコロナ禍でも前年を上回るペースで供給され今後も市場の堅調な推移が考えられるとしています。

個人的にも投資用の新築マンションは堅調なのではないかと考えています、というのも数十億や数百億といった規模の資産を運用しようと思えばポートフォリオとして不動産を一部持っておくのは必要でしょう。

となると不動産としてはホテルなどはコロナの影響が大きいですし、オフィスビルなどは長期的に見てもテレワーク化の普及による解約率の増加も考えられ、代替資産のリスクが上がる中で投資が賃貸用マンションに向かうのではないかと考えています。

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2020年11月~2021年4月の6か月間の契約率としても首都圏では66.9%、グッドコムアセットの主要取扱エリアである都市区では70.2%となっていたようです。

好調の目安とされるのが70%のようですから、都市区での新築マンション市場は活況ですね。

それこそコロナの影響が出始めてから、住宅ローンも増えていたり不動産情報サイトもアクセスが増加したりとしていましたから、住環境の見直しが起きていた事が考えられます。
これまで寝る場所ととらえていたような方も、テレワーク化によって生活空間として重要視している方も増えているでしょう。

市場の活況もあり好調だったという事ですね。

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続いてキャッシュフローを見てみると、営業キャッシュフロー(本業で稼いだキャッシュ)は33.9億円のマイナス→62.3億円のプラスへと大きく良化しています。その要因としては在庫(販売用不動産)の減少が大きいです。

一方で財務キャッシュフロー(借入などの財務的な活動の収支)は31.8億円のプラス→69.1億円のマイナスとなっています。その要因は借入の返済が大きいです。

ではどうしてこのような推移になっているのかというとそれはやはり事業内容が影響しています。

不動産を建てるにはもちろん大きな投資と時間が必要です。

なので今期が好調だったのは前期から作っていた不動産が売れたためであり、新しい物件の建設に支出した資金より、売れて入ってくる資金のほうが大きかったので営業キャッシュは増加します。

一方で、新規の建設のための借入より、売れた物件の建設のための借入の返済が必要になるので投資キャッシュはマイナスになっていたという事です。

時間のかかるビジネスなので今期の好調は必ずしも、今期だけの影響という事ではないんですね。

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実際に在庫(販売用の不動産)と仕掛販売用不動産(建設中の不動産)の合計は172.9億円→123.6億円まで減少しています。

今期の業績に前期の影響が出ているという事は、現状が今後の業績に影響が出るという事です。

つまり在庫の減少は今後販売できる不動産がそれだけ減っているという事ですから、短期的にはこのまま右肩上がりで業績が伸び続けるかというとそうではないという事ですね。

また、借入金や社債などの有利子負債の金額を見てみると合計で100億円ほどとなっています。

実はこれは同業他社と比べると借入の額としては少ない方で、こういった投資用の不動産販売の会社で基本的に借入をして建設するので売上と同程度の借入がある事が多いです。

2020年10月期の売上が263億円ですからその程度あってもおかしくないという事です。

ではどうしてグッドコムアセットの借入額は少ないのでしょうか?

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それはグッドコムアセットがオフバランススキームと呼んでいる仕入れの方法に理由があります。

通常であれば20億円の開発をしようと思えば、土地の取得から竣工までを行うのに20億円の借入が必要になり、そして建設から販売が完了するまで2~3年かかり長期間資金は寝てしまいます。

さらに回収まで2~3年かかるので、例えば売上200億→300億→400億と伸ばしていこうと思えば、売上200億の内に売上400億分の投資が先行し借り入れが必要になるので、企業を成長させようとすれば財務内容が特に大きく悪化する事になるわけです。

そもそも、将来の売上規模に合わせた先行投資が必要になるので現在の自社の規模以上の借入が可能かという話でもあり、借入が出来ず建設が進まず成長が鈍化するという事につながるわけです。

なのでグッドコムアセットでは、仕入の契約だけを行い、支払う額は手付金として総額5%のみに抑え、建設中は建設会社側に資金負担をしてもらい、竣工後に全額の支払いを行うという、オフバランススキームと呼んでいる方法によって手付金の5%のみでの仕入れを可能にしているようです。

これによって借り入れ負担が小さくなりますので、財務状況も良化して大きな先行投資が可能になるという事です。なので借入の金額も小さかったわけです。


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ちなみに具体的な代金の支払いとしては、竣工後数か月に設定してあるようで、その際にはまとまった資金がもちろん必要になります。
なので竣工後、数か月以内にはある程度売れている必要があるんですね。

オフバランスされた負債が多く通常より大きな先行投資が出来る分、販売不振に陥ると一気に資金繰りが苦しくなることが考えられますから、販売不振のリスクは大きそうです。

そしてもちろん、自社の負担額が少なくなるだけの夢のようなスキームはありえませんから、建設中の資金を建設会社が負担している分、より多くの建設費や手数料を支払っていると考えられます。

なので全額自社の借入で負担する企業の物件と比べ、物件自体の収益性が悪化することや、販売価格の上昇につながっている可能性は高そうですから、投資する側としてはしっかり検討する必要性がありそうです。

そしてこのオフバランススキームによって、収益性が悪化したとしても建設できる物件の量を増やしたいという事が分かりますので、売上の成長というのを非常に重視している企業だと分かります。

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実際に2026年10月期までのロードマップとして年間の売上の平均成長率を30%超にするという売上の成長を重視した目標を掲げ、時価総額では現在の220億円ほどから1000億円へと成長を目指すロードマップを描いています。

販売まで2~3年にわたる事を考えると既に売上600億円ほどの見通しのもと、動いている事になるわけです。
順調に販売が進めばいいですが、それだけリスクが大きくなっているという事ですね。

現状は投資賃貸不動産は好調のようですから堅調な業績は期待できますが、市場成長よりもはるかに大きな成長が必要になります。
コロナがあって主要顧客の公務員の方も不確実性が高まる中で回収に長期を要する不動産投資というのを行う方がそれだけ増えるかというと疑問符は付きます。

となると顧客層の拡大が必要になるわけで大口顧客のようなものも重要になるはずです。

しかし先ほど取り上げたようにオフバランススキームというところから考えると、建設費用や販売価格は割高になりやすいはずで、となると不動産の専業投資家のような方を集めるのは難しいのではないでしょうか。

なので成長を見通し通り達成できず、それに伴い財務状況の悪化も起きる可能性には注意が必要そうです。

という事で現状は絶好調で、在庫の額は減っているので成長鈍化が考えられますが、市場環境も悪くない中で好調な業績が続くと予測します!!

中期的には公務員への販売にも限界があり、顧客層の拡大が必要ですが、オフバランススキームと呼ばれる手法によって、財務状況以上に販売不振のリスクが高まっている事や、建設費用の上昇につながり収益性の低下が起こっていると考え、見通し通りに投資は集まらず不振となり、それに伴い財務状況も悪化すると予測します!!

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