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「本当に幸せな美容師を増やす」IJK OMOTESANDOは美容業界の「当たり前」を変え続ける

「IJK以外では、もう働けない」

離職率の高さが深刻な問題となっている美容業界。働くスタッフが声を揃えてこう話す美容室が、IJK OMOTESANDOです。

縮毛矯正が有名な美容室ではありますが、その経営方針はスタッフ一人ひとりの強みを活かすことを最優先しています。

「スタッフファースト」・「ホワイト経営」…IJK がこう称されることに特別な魔法はなく、労働環境の厳しさといった美容業界の「当たり前」を、一つずつ変えてきた結果にすぎません

今回は、IJKならではの採用方法や、代表芝原が目指す「楽しく美容師をする」ための教育について、オーナーの芝原 俊輔、店長の釼持 恵梨香、副店長の川井 美緒のボードメンバー3名に聞いていきます。

「今のIJK OMOTESANDOができるまで」はこちらの記事をご覧ください。
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「ただ華があるだけじゃない」IJK OMOTESANDOは、スタッフファーストで日本一の美容室を創る

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売上のある美容師になるための、大切な心得

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ーIJKには現在12名が所属していますが、採用はどのタイミングで行っているんですか?

芝原:お店の状況を見ながら採用をするので、新卒一括採用は行っていません。スタッフが稼げる環境を作ることが僕の仕事で、お客様の数に対して、席と人材に余裕を持つことを大事にしています。お店側の問題でお客様をお断りしなければならないとか、売上が上がらなくなる事態は、絶対ストレスになりますからね。

ーアシスタントさんも、中途採用なんですね。その方々は、どうやって入社されたんですか?

釼持:大体、芝さんがどこからか見つけてきます。「この子明日から入るから」って。

芝原:2人を雇った時と変わらないですね(笑)。

川井:でも、どんな子が入ってきても不思議とみんな良い子なんです!

釼持:芝さんが見抜いてきている子だからでしょうね。採用は天才的だと思います。

ー先日Twitterでスタッフさんを公募されていましたよね。IJKで働きたい方も増えていると思うのですが、ここだけの話、どうしたら合格できますか?

芝原:あの時は30名ほど応募をいただいて3人採用しました。残念ながら最初に不採用としてしまったのは「話が聞きたいです」とだけDMしてくる人。SNSという気軽にコミュニケーションが取れる場ではありますが、曲がりなりにも会社の社長にいきなり「話聞きたいです」って、少し失礼ですよね。まずは自己紹介をしようよと。

採用した子は、名前と経歴、志望する理由を最初から送ってくれていました。IJKのスタッフはSNSの活用を必須としていて、一見華やかな印象はありますが、まずは人としての礼儀があることが絶対です。それはお客様への対応にも、絶対に関係してくるので。

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ースタッフが増えることで、大変だなと思うことはありますか?

芝原:新卒採用をしない分、複数人を一気に育てることができないことでしょうか。延々と育て続けることが大変で、アシスタントがスタイリストデビューするたびに、嬉しさと共に「また1からか」と、思わなくはないです(笑)。

ただ、そもそも美容師は教育業で、ほぼ同じ教育を繰り返すことが仕事です。IJKの目標の一つは、表参道の一等地にあるAoビルの1フロアを貸し切るくらいの規模になること。今の形でどこまでいけるかは、僕らにとっての挑戦でもあります。

ー美容業界の悩みとして、「アシスタント時期の練習が辛い」と辞めてしまう話をよく聞きますよね。IJKでは、どのように教育をされているんですか?

芝原:付き合う上司も、大変なんですけどね(笑)。美容師はどこまで行っても人対人の仕事なので、後輩の教育を疎かにするスタイリストは、100%売上は伸びません。そんな先輩を、営業中に下の子たちが助けてくれるわけがないので。とはいえ上司の負担が大きいのも問題なので、簡略化するようにはしています。

ー簡略化ですか?

芝原:スタッフ専用のYouTubeチャンネルを作り、そこに全てのカリキュラムの動画を入れています。まず動画を見てもらえれば、ある程度は理解できるようにしてあります。デモンストレーション1回分上司の負担は減るし、アシスタントにとっても、寝る前にスマホで見るだけで勉強になるならお互い良いじゃないですか。

ーなぜそのようなことを思いついたのですか?

芝原:「そもそも、毎回デモンストレーションをしなきゃだめか?」と思ったんです。僕が大変だと感じることは、ゆくゆくこの2人にとっても、負担になりますから。

ーその方法だと、本人のやる気さえあれば、どんどん先に進んでいけますね。

芝原:変な話、やる気がある子は勝手にうまくなるんですよ。僕、この2人にめちゃくちゃ教えこんだ覚えはないですけど、うまくなりたい熱意が凄かったから、営業中もずっと僕の技術を見て盗んでいたと思うんですよね。

教えを乞いすぎたり、待ちの姿勢に慣れてしまうのは成長のためには本当によくない。あまりこういうことをいうのは好きではないですが、大きな結果を出す人は、技術を習得するためにとにかく努力をする時期がある。学ぶ時期にどれだけ吸収するかは、そのあとの美容師人生を大きく変えると思います。


目指すは『ONE PIECE』全員が「縮毛矯正」を習得しなくてもいい

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ーIJKといえば「縮毛矯正」が有名ですが、入社すれば全員がこの技術を習得できるんですか?

芝原:もちろん教えるノウハウはありますが、縮毛矯正はあくまで僕の好きな施術なだけであって、IJKの美容師だから全員取得しなければいけないものではありません

川井:強制されるわけじゃないですよ。

芝原:最近入った子にも「やりたくなかったらやらなくて良いよ」と伝えて、その子はカラー技術に注力することにしました。

ーそこは自由なんですか!

芝原:自分の強みは自分で決める、みんながやりたいことをやってくれて良いんです。僕はたまたま縮毛矯正が好きで、それが受け入れられてIJKは有名になりましたけど、同じように他の技術のスペシャリストが揃う集団が理想です。

川井:私の小顔矯正も、私がやりたいからメニューに入れてもらったんです。IJKに入ったばかりの頃は知名度が低かったので、SNSを使って発信し続けました。小顔矯正できる美容師が珍しかったこと、加えてランジェリーに詳しいという強みがあったから、お客様に気にしてもらえたんだと思うんですよね。

釼持:目指すイメージは、漫画の『ONE PIECE』。いろいろな特殊能力を持つスタッフがいて、IJK に来ればどんなスタイルも叶うというのが理想です。なのでうちは、施術によって指名替えをするのも大歓迎なんです。

ー指名替えは御法度だと思っていたのですが、他のスタイリストを指名されるのは嫌じゃないんですか?

芝原:うちの子たちは、お金に汚くないんです。ちゃんと稼いでいるから、自分の給料よりもお客様が望むことを叶えたいと思える。他の美容室でなぜこれがうまくいかないかというと、単純に人間関係なんですよね。「あの人にはお客を渡したくない」と、思ってしまう。

釼持:他の美容室に行くより、うちのスタッフにやってもらった方が素敵になれると思います。お互い技術を認め合ってるからこそだし、人柄も大きいですよね。自分にしかない魅力を見つけて、私たちを助けてくれる子が入ってくれると嬉しいです。

IJKのスタッフが、お店を「自分ごと」にできるワケ

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ーお互いに認め合える人間関係、どうしたらそうなれるんでしょうか?

川井:スタイリストでもアシスタントでも、教えつつ教わりつつなんですよね。IJKに入社したての時は自分のことで精一杯で、あまり上手に関係を保てなかったんです。でも流石に1人では限界があって、アシスタントをつけてもらって。

教えることで自分の中でも課題がいっぱい見つかるし、自分一人の力で頑張り続けることで、むしろ成長を止めていたんだなって気づきました。エリカさんは教育もすごく上手なので、その姿を見て真似をしたり…尊敬の気持ちが大きくなりました。

釼持:ミオはすごく素直なんです。芝さんや私からのアドバイスをすぐに実践する。IJKで一番の売上があっても、まだまだ成長すると思います。

ーお話を聞いていると、「この子のここがすごい」という理解度がすごく深いですよね。

芝原:3人での幹部会があるのですが、「この子は良いところはここ、こういう接し方をした方がもっと成長する」と、一人ずつ細かく話し合います。

釼持:よく見て、褒めることを大事にしているんです。人は褒められたら嬉しいし、じゃあ次はこういう風に頑張ろうと工夫するようになりますから。

ー自分の成長だけでなく、お店を良くしていこうと全員が思える秘訣は何ですか?

芝原:僕が2人に美容院の運営を任せるのと同じで、権限委譲をし続けることじゃないですかね。彼女たちも忙しいし、人が増えればお店の隅々まで気を配ることは難しくなっていきます。

「じゃあこっちのフロアのことはあなたに任せる」と、1つ下のスタイリストに任せればいいんです。ずっとその繰り返し。その空間にいる一番上のスタッフが、アシスタントを気にかける。「あの話し方は失礼じゃなかった?」と指摘できる責任を持たせることが大事で、本来は全員がその意識を持たなきゃいけないんです。

ー「一人ひとりの動きがIJKというブランドを作る」、そんな意識が芽生えそうですね。

芝原:美容業界にありがちなワンマン体制は、上が全てを決めて責任を持つからある意味楽なんです。でもそれでは、お客様にとって何が失礼で、何で満足してもらえるのかを知らずに育ってしまう。そんなの楽しくないじゃないですか。

人数が増えれば増えるほど、「人任せ」になりますから、ある程度は決まり事を作らないと、最後に迷惑がかかるのはお客様です。お客様のためになることに一生懸命にならない美容師は、誰からも支持されません。そういう僕の考えを、彼女たちが一番下のスタッフにまで伝えてくれているんだと思います。

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ーなるほど…。美容業界に限らず、組織論としてすごく勉強になります。お二人から見て、IJKはどんな美容室ですか?

釼持:良い意味で欲張りになって、やりたいことだけ頑張れる場所ですね。自分がお客様に提供したいことを我慢しなくてよくて、一緒に働く仲間も大好きだし、お金も欲しい、休みも欲しいという望みも叶う、綺麗でいるためにジムに通える福利厚生もある。ずっとハッピーでいられる職場です。

川井:美容師って「お客様ファースト」すぎて、休みを取ることや稼ぐこと、自分の幸せを後回しにしてしまいがちだと思うんです。でも、お金を稼いで自分を豊かにするって、何も悪いことじゃない。自分が幸せでいるから、お客様も幸せにできる。仕事をしてちゃんと稼いで、ちゃんと幸せになれる。そういう当たり前を、美容師でも叶えさせてくれる場所です。

ー皆さん他の美容室も経験されているからこそ、「IJKで働くことが楽しい」と感じられているんですね。

芝原:スタッフ同士が信頼しあえる環境は、豊かですよ。先輩たちが後輩の面倒をよく見てくれる、愛し合っているんですよね。

うちの社訓は、“お客様、そして共に働くスタッフたちを日本一愛する集団は、きっと日本一の美容室を造る”。目の前の相手を愛し、小さなことを一生懸命やってきた、その証として今のIJKがあるんだと思っています。

経営者として僕も結構頑張っているとは思いますが(笑)、「うちで無理ならどこ行っても美容師は無理だ」と胸を張って言える会社にはしてきたつもりです。

「IJKじゃなきゃ働けない。でも、どこからでも必要とされる人材である。」そういう人間臭くて魅力的な美容師が、たくさんいる美容室であり続けます。


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コロナの影響で大打撃の2店舗。美容室とBARを守っていきたい![※終了しました]

5月末を持って、IJK groupのクラウドファンディングを終了致しました。15,361,155円にものぼるご支援、またたくさんの温かいご声援をいただき、スタッフ一同言葉にならない感動と感謝を感じております。誠にありがとうございました!リターンでしっかりとお返ししていきます。今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます!


IJK OMOTESANDO

住所:東京都渋谷区神宮前5-46-16 IL CENTRO CERENO 2階
電話番号:03-6438-9882
定休日:毎週月・火定休日(月曜日が祝日の週は火水休み)
HP:http://ijk-hair.com/
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執筆:柴田 佐世子
編集:柴山 由香
撮影:池田 実加
バナーデザイン:小野寺 美穂

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