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桐生操『悲劇の9日女王 ジェーン・グレイ』を読んで 前半

 こんにちは。シニヨンです。突然ですが、この絵をご存じですか?

目隠しされた若い女性が訴えかけるように手を伸ばしている、うしろには処刑人がいるこの絵は、印象的ですがこの女性について日本人はあまりよく知らないのではないかな、と思います。何を隠そう、この女性はかつて英国の頂点に立ったことのある女性です。「え、でもなんで元女王がこんな憂き目に?」「というか女王ってエリザベス女王とか、ビクトリア女王とかアン女王くらいしか習ってないし・・・」

ごもっともです。この女性の名前はLady Jane Gray。ほら、習ったことないですよね。実際、ジェーン・グレイはテューダー朝女王としてイギリスでは有名ですが、なにせ統治期間が9日ですから女王とみるかどうか意見がわかれております。

ジェーングレイ。この儚げで優美な響きの少女がいかにイギリス女王に上り、そこから破滅したか。彼女を知るには上記の著作が一番導入として良いのでご紹介します。

当時、イングランドはヘンリ8世の治世。この王様は、生涯で6度結婚し、そのうち二人の妻を殺し、ひとりはお産で死に、二人を離婚したという、ペローの青髯なみに妻を不運に追いやっていました。

晩年はますますヤバさに拍車がかかっていましたが、最後の妻、キャサリン・パーは内面も外面も優れた人で献身的に彼に仕えていました。この女性にはのちに女王となるエリザベス、ブラッディメアリも、そしてジェーン・グレイもよく懐いていました。

さて、ジェーングレイに話をもっていきましょう。ジェーン・グレイはヘンリ8世の妹と初代サフォーク公とのあいだに出来た娘でした。(グレイ夫妻については鹿島茂 『ワル姫さまの系譜学』がわかりやすいです。)https://www.amazon.co.jp/%E3%80%8C%E3%83%AF%E3%83%AB%E5%A7%AB%E3%81%95%E3%81%BE%E3%80%8D%E3%81%AE%E7%B3%BB%E8%AD%9C%E5%AD%A6-%E9%B9%BF%E5%B3%B6-%E8%8C%82/dp/406215787X

彼女は、いわゆる優等生で美人な女の子で、母親の出自からして、血統も申し分なかった。(この出自があとあと彼女にとっては命取りに・・・・)実はこのとき、エリザベスやメアリより出自はよかったのです。なぜならば、彼女らの母は離婚、あるいは処刑され、正式な妻ではない、ということになっているので、彼女たちは庶子という扱いに貶められていたのです。(ヘンリ8世のせいです。)

だからこそ、ジェーングレイの親ふたりは野心まんまんでした。彼らは娘にたいして冷酷といえるほど厳しい扱いをしたのですが、それもこれも自分たちの出世のためでした。ジェーンは、愛情に飢えながらも学問に没頭する少女時代を送っていました。しかし、彼女を利用しようとする魔の手はすでに四方から迫っていたのです。

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