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日本の宥和外交への疑惑

少し前に近畿大学教授の柴田直治氏が寄稿した「日本の『ミャンマー宥和外交』は機能しているか 今こそミャンマーとのパイプを機能させよ」という記事を読みました。

当該記事には次のようにあります。

日本政府は、民主化を阻んだ過去の軍政時代にも制裁から距離を置き、批判も控えて援助を続けた結果、主要国の中で唯一、ミャンマー国軍にパイプがあり、対話ができることを売りにしてきた。

これを読んで私は直ちに、あ、これはイランと同じ構造ではないか、と思い至りました。

2012年には千葉大学教授の酒井啓子氏が次のように書いて鳩山外交を擁護しています。

イランに大使館のない米国は、日本がテヘランの大使館から得た情報を提供してくれるのを、期待していた。イランとのパイプは、米国に恩を売るのに、大きな材料だったのである。冷戦終結後、世界は雪崩を打って新自由主義経済の波のなかに飲み込まれている。「東」だったり「反米ナショナリズム」だったりで、米国がアプローチできない国はたくさんあったが、その数はどんどん減っている。言い換えれば、「米国がアプローチできないから同盟国にパイプ役を頼む」ような機会が、減っている。そのなかで、イランは唯一、米国がアプローチできず、日本が太いパイプを持っている国だ。その外交的資産を捨てて、ただ米国が行くなというから外交をしない、というのは、日本が唯一発揮できる独自外交の機会を、自ら捨て去ることに他ならない。

ここにはイラン・パイプ論の雛形を見ることができます。反米国家イランとのパイプこそが、日本が唯一発揮できる独自外交の機会だ!だからイランと仲良くしろ!という、ここにイラン宥和外交の立脚点はあります。

イラン・パイプ論は今も健在です。

しかしパイプが、酒井啓子氏のいうようなかたちで本当に機能しているかに関しては、

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