レノンとマッカトニー
レノンとマッカートニーの2人についてのお話。
2人とも人類史上稀に見る天才音楽家で、その2人が同じ時代に同じ場所にいて、同じバンドで活動していたということがどう考えても不自然なほどですから、どっちが上みたいな話はまったくナンセンスです。
でも、個性が非常に際立った2人でもありますから、違いについて考えるのはなかなか楽しいと思います。
まず最初に作曲家としての2人を考えると、かなりアプローチが違うように感じられます。
マッカートニーは作曲に限ったことではありませんが、ものすごく達者です。長年に渡る彼のキャリアを一言で片付けることはできませんが、ひとつの特徴、殊にビートルズ時代の傾向としては、元々ある音楽ジャンルをマッカートニースタイルでキレイにまとめ、ついでにちょっとオシャレな仕掛けを仕込む、みたいな感じ。
そして、これは想像に過ぎませんが、多分リズムや楽器の音といったアレンジまで頭の中で仕上げて曲を作っているんじゃないかと思うんですがどうでしょうか。
それに対してレノンは感覚的。音楽理論やセオリーなどハナから眼中になく、ひらめき一発をとりあえず形にして、それを演奏で仕上げていくというタイプだと思います。
それでもマッカートニーに劣らない超一流のポップセンスがありますから、実は突拍子もない曲を作っていても仕上がった作品がまとまって聞こえるんです。
4分の4拍子がどうのとか、全く眼中にありませんから、彼が足したいと思ったら足すし、切りたいと思ったら切ります。たとえば「Across The Univers」とか「Walrus」とか。でも、レコードになるとそのめちゃくちゃな拍子の曲を聴いても気持ち悪さがないんです。
でも、楽器を持って真似して演奏してみると何だこりゃとなる、レノンの曲ではよくあることです。
そして2人の作曲家としての関係性を推測・・・というか憶測ですけど、どうもマッカートニーはレノンの作曲に対して憧れに近いものを持っていたんじゃないかと感じるんです。
これも憶測極まりないんですが、レノンの自由すぎる超大作の「Warm Gun」などは特にマッカートニーが憧れた対象だったのでは。だって「Band On The Run」とか「Admiral Halsey」なんて完全にWarm Gunタイプの構成を持った曲じゃないですか。もちろんAbbey RoadのB面も、Warm Gun憧れと無関係とは思えません。
歌手としての2人は、これまたタイプが違います。マッカートニーは超万能、甘い声のイメージがありますが、パワーやブラック分も彼流の個性の中で完璧に表現できちゃいます。あらゆる曲を最良の形で歌いたいように歌えちゃう。
対してレノンは、彼の人間性が歌声になっているという点が特徴です。具体的には、本質的には優しいのに強さや暴力性に対する憧れを隠せないという部分が歌にも出ています。そして何といってもその艶っぽさ。そしてそれを本人はあまり気に入ってない感じ。危ういバランスで絶妙に、最高の形で成り立っている歌声です。
演奏者としての2人は、いずれ劣らぬ素晴らしいプレイヤーです。マッカートニーは何を演奏しても本当に達者。テクニック的には全てのパートにおいて、ビートルズの中で一番うまいんじゃなかと思います。
ただ注釈をつけたいのは、マッカートニーが全パート一番うまいけど、レノンやジョージ・ハリスンの方が圧倒的に良いギターを弾きます。テクニックがあればそれが一番良いというわけではないことは、いまさら言うまでもありません。もちろんドラムについてはテクニック関係なく、リンゴ・スターに敵うワケがありません。
しかし長年本職としてやっているベースは本当に個性的で素晴らしいです。歌いながらベースにも歌わせると言えばしっくりきます。これはちょっと他に敵うベーシストがいないんじゃないかと思える個性です。
レノンは演奏において、ことさらにクローズアップされることは少ないんですが、実はとんでもないスーパーギタリストです。センス一発でとんでもないノリを生み出します。
それがよく目立つのはアコースティックギターのバッキングです。試しに演奏の上手な人を集めてビートルズのコピーバンドを組んで「Help!」あたりの曲を演奏してみればよくわかります。あのリズムギターのノリはそうとう上手い人でも出せません。
もちろんエレキギターを弾いてもスーパーでスペシャルです。リズム感なんていう陳腐な言葉でまとめたくありません。お化けギタリストです。ソロやオブリを弾いても、作曲や歌と同じく感情をバシーンと表現できてしまうセンスの塊です。
ソロキャリアを比べでも、当然ですが全く違った道を歩んだなと感じます。
マッカートニーは新しいビートルズをやろうとして、しっかり形にしました。あくまでポップ・ロック路線でそれは今日まで続いています。またバンドとしての活動に重きを置いていますから、近年のソロ活動でもしっかりとしたバンドを率いて演奏や音作りにかなりこだわっています。
対してレノンはライブにおいてはバンドに恵まれなかったと思います。しっかりまとまった形のバンドでのライブが皆無と言っていいほどです。エレファンツ・メモリーをバックに従えたライブはレコードにもなって有名ですが、ひどい演奏ですねえ(笑)。
しかし安定したバンドがなかったことで、レコードではアルバムごとに色んなタイプのアレンジが楽しめるという良い面も。「John Lennon」(ジョンの魂)は超シンプルなアレンジで、それだけにリンゴ・スターの最高のドラムを堪能できます。「Imagine」はパワフルなロック・アルバムに仕上がっていますし、「Mind Games」はかなり達者なミュージシャンを従えて、非常に充実したサウンドを楽しめます。
これは言うまいと思ったのですが、もしレノンが健在だったら、どんな音楽を生み出していたのでしょう。そしてマッカートニーとの関係性はどうなっていたのでしょう。
それは誰にもわかりませんが、ジョージ・ハリスンが生きていた間でも、もう一度ビートルズをやることはなかったんじゃないかと思いますし、やらなかったとしてもそれで良かったんじゃないかという気もします。
「Anthology」プロジェクトで、レノンのテープにオーヴァー・ダブをして作られた2曲、あれは素晴らしいデキでしたが、本当のビートルズ再結成よりも、実はあの形がベストだったのではないかと思うことがあります。
いや、もちろんもし4人が揃っていたら、ビートズルは聴きたいですよ。でも、どうしてもやらない方が良いのではという気持ちになってしまうんです。理由はよくわかりません。
ちょっと話が違う方に流れ始めたので今日はこのあたりで。
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