「月例経済報告」と景気後退判断



 月例経済報告は内閣府の政策分析官が,様々な指標から「日本の景気の景気の現状」を判断したものです.閣僚会議で報告され,経済政策の指針となることが期待されています.月例経済報告の内容をもっとも短く示すのが報告書冒頭の「判断文」というところ.1月23日に発表された1月の月例経済報告では,

-景気は、輸出が引き続き弱含むなかで、製造業を中心に弱さが一段と増しているものの、緩やかに回復している。-

とのこと.ほんとかよ!?という疑問はさておき,「経済情報の収集」という点では月例経済報告の大事な部分は判断文じゃないです.だって政府公式の景気判断で経済が動くわけじゃないですから.

◆ものぐさ月例経済報告

そんなことよりも,

主要な経済指標をざっくり解説してくれているので便利

というのが月例経済報告の実用的な意味.ただ,月例経済報告そのものは統計データを文章で説明するという非常にわかりにくい.効率的に情報収集するためには,同報告の関係閣僚会議資料を中心に見るとよいです(仰々しい名前ですが15ページくらいのパワポで作った図表集です).雑にまとめると,

・まずは月例経済報告の2Pに載ってる「基調判断」をみる
・注目すべき点について,関係閣僚会議資料の図表で確認

感じが上手な活用方法なんじゃないかな.10分くらいで出来る作業で,いろんなとこが出してるやっつけレポートより効率的な情報を得られますよ.

◆すでに景気後退局面にある……いつから?

 さて,今月の月例経済報告基調判断ですが,

【個人消費】は、持ち直している。
【設備投資】は、緩やかな増加傾向にあるものの、一部に弱さがみられる。
【輸出】は、弱含んでいる。
【生産】は、一段と弱含んでいる。
【企業収益】は、高い水準にあるものの、製造業を中心に弱含んでいる。企業の業況判断は、製造業を中心に引き続き慎重さが増している。
【雇用情勢】は、改善している。
【消費者物価】は、このところ上昇テンポが鈍化している。

となってます.正直,個別項目で景気がよいものがほとんどない...唯一明確に「改善」としているのが「雇用」ですが,そもそも雇用は典型的な遅行指標(景気が悪化しはじめてもしばらく下がらない=動きが遅い指標)です.比較的楽観的な表現の個人消費についても,その根拠は新車販売台数や家電販売額の下げ止まり……ですが,そりゃ消費税増税直後の10月よりは回復するでしょうという感想.
 政府の景気判断の恣意性については「景気って誰が決めるの?―3つの「景気判断」」を,また以下で出てくる景気動向指数については「景気って何だ――まずは景気動向指数の話から」を参照いただくとして,私自身は

2018年の7-12月(下半期)が景気の山だったと思う

……つまりは2018年後半からは景気後退局面なんじゃないかと考えています.景気の転換を見る際には,景気動向指数のCI先行指数に注目するとよいでしょう.景気の先行き予想に左右されやすい先行指数が伸び悩む,さらには低下し始めたら景気転換点近し!というわけ.ではでは何はともあれ先行指数みてみますね.

画像1

 2018年半ばからどうも低下傾向にあることがわかります.ちなみに,一致指数の動きはこんな感じです.

画像2

 一致指数も2018年後半から低下していますが,絶対水準がまだ高いことや,一時的悪化のこともある.はっきりと低下傾向になるのは2019年に入ってからという感じです.「先行指数」の方が「先行」していることが確認できますね(というかそうじゃなきゃこまる^^).
 ちなみに一部界隈で有名な「イワタ式景気判断術(c)岩田規久男先生」は,

・CI先行指数が半年前と比較して2%以上低下していて
・景気の広がりを示すDI一致指数が連続で50を割る(悪化している指標の方が多い)

の両方が成り立つと景気拡大から後退への転換が疑われるとしています.CIの「勢い」に注目するのはビジネス系のエコノミストの方には結構いる印象です.理屈はないのですが,これまでの転換点予想方法としてはそれなりに実績のある経験則です.この判断によると2018年の10月が景気後退のはじまりという判断になります.
 ここでの重要なポイントは,先行指数をみても,よくある景気転換局面の予想法からも……

2018年年内時点で入手可能なデータから「景気後退への転換が十分予想できる状況だった」こと

です.以前のエントリで指摘の通り,景気動向指数研究会による公式の景気日付が発表されるのはめちゃくちゃ時間かかりますが,消費税増税の意思決定を転換可能な時点ですでに景気後退サインがでていたーーにもかかわらずそれを断行したという政策判断は重く,追求されてしかるべきことなのではないでしょうか.

以下今後の参考に

ちなみに,「イワタ式景気判断法」は下記の本の補論に載っています.景気の入門書として(理論よりものとしては)最適な本です.



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明治大学政治経済学部准教授 専門は経済政策.マクロ経済学の実証分析が元々の専攻のはず.最近は地域経済の問題に関心があります.

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