経済成長のための「人の移動」
本日(2/2)読売新聞朝刊8面<あすへの考>で紹介いただきました.東京一極集中の問題点から地域再生にとっての女性雇用・中心市街地の重要性などについてお話ししております.
リンクは有料会員のみとのことなので……こんな感じの紙面です.6段ぶち抜き大判写真での登場はなかなかに緊張しますね.おなかの出っ張り修正してほしかった。。。

軽く内容と紙面では言及できない点を紹介しておきましょう。
◆東京一極集中は「効率的ではない」
まず,東京一極集中が限界に近づき,もはや経済効率面さえ合理性を失いつつあるのではないかという議論から.
昨年日経新聞が報じたように(2019年1月9日朝刊「東京一極集中に異変 成長率、全国平均下回る」),東京都の実質経済成長率は減速しており,ひとりあたり県民所得に至っては全国の下位グループになっています.これを高齢化だけで説明するのは難しいでしょう.東京は過剰集積(人口規模が過剰で効率を損ねる状況)の疑いが日に日に濃くなっています.
東京都心部の地価・家賃高騰さらには,東京近郊・郊外都市からの通勤者の長距離通勤問題もQOL(生活の質)という観点からだけでなく,生産性に直結する問題になりつつあります.
近年では付加価値を生む活動は、クリエイティブ(ビジネスモデルの構築や顧客の問題に解決策を紹介するコンサルティング型営業)やホスピタリティ(顧客への癒やし・安心を提供する活動)の色彩が濃いものになっています.これらの活動を行うにはリフレッシュの少ない心・体が必要です.高い住居費を捻出するための長距離通勤,長距離通勤の時間的損耗とストレスは働く者にとって深刻であるだけでなく,企業や社会にとっても大きな損失なのではないでしょうか.
◆UIターンを拡大するために
このような現状を踏まえ,小田切(2014)ですでに指摘されているように,「東京に住み続けたいとは思わない」とする若年層の割合は増加しています.しかし,実際のUIターンは増加しない.
その要因としては,都市部共働き世帯――なかでもいわゆるサラリーマン同士の夫婦にとってUIターンの際のハードルとなるのが「女性の職」です.JILPT(2016)においても,Uターンに際して男性よりも女性にとっての懸念・不安がおおきいことが示されています.大都市部で正社員としてキャリアを積み上げてきた女性にとっての適職を提供できるかUIターンの鍵になるでしょう.
また,同じくJILPT(2016)では,Iターン者について「移住前の不安」と「移住後の不満」についても調査しています.ここから読み取れるのが「なんとなく街が楽しくない」という「中心市街地の魅力」がUIターンを拡大するための大きな課題であることがわかるわけです.
◆人の移動が経済成長のコアになる
こんな感じのことを紙面で言及させていただきましたが,これらの(私なりの)理解のバックにあるのが古典派的成長理論です.
ごく単純にまとめると古典派成長理論では――人が「低生産性地域・産業から高生産性地域・産業」に移動することで経済成長が生まれると考えます.典型的には高度成長期の日本.生産性の低い中山間地域・農村部から生産性の高い沿岸部工業・都市部商業部門に人が移動することで年率10%もの実質経済成長が達成されました.このような人の移動による成長は日本では60年代前半まで続いたようです.
これからの日本経済を考える際に,さらには地域を考える際に,古典派成長理論は大きな導きの糸になる!と私は考えています.
もちろん令和の御代に,昭和の高度成長を復活させよう……なんて話ではありません.そもそも,中山間地域は過疎化と高齢化が進んでおり,そこからの人口移動が経済成長を引き起こすなんてことはないわけです.
むしろ,東京から東京以外への人の移動がマクロの生産性を上げうるのではないかと考えています.
「人がより自分の実力を発揮できる職に移動する」こと「(クリエイティビィティ・ホスピタリティを発揮できる)働き方・暮らし方ができるライフスタイルを確立すること」が生産性を向上させる.自発的な転職の前後で生産性が向上するという研究もあります(山田2016).人の移動による生産性向上――そのひとつの方法としてのUIターンという観点に注目する必要があるのではないでしょうか.
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