GDP速報値と台風・暖冬の影響
2020年2月17日,昨年度第4四半期(2019年10月~12月期)GDPの第一次速報値が発表されました.実質GDPの成長率は前期比▲1.6%(年率▲6.3%),名目GDPの成長率は前期比▲1.2%(年率▲4.9%)と散々な数字です.
前回の消費増税後の2014年第2四半期の一次速報が▲1.7%(年率▲6.8%)であったのとほぼ同じネガティブショックが経済に生じたわけです(なお2014年については二次速報で下方修正).まだまだ景気の拡大が加速していた中での▲1.7%と,景気がすでに停滞・悪化局面にある状態での同程度のインパクト――どちらが後に深刻な,そして継続的な影を落とすのかは想像に難くないでしょう.
GDP速報値の内訳
さて今回の一次速報値の内訳を見ると,(▲1.6%のマイナス成長のうち)民間最終消費支出の寄与度は▲1.6%とGDPの低下のほとんどが消費の低下によるものと考えられます.
さらに心配なのは民間設備投資が前期比で3.7%の低下と,投資の減少によっても▲0.6%のGDPの下押しが働いています.設備投資がここまでのマイナスになっていることから企業部門の先行き予想も明るいものではないことがうかがえます.これを輸入の減少(0.5%のGDP引き上げ寄与)がカバーしている状況となっています.ちなみに,公的需要(≒政府支出)は0.1%の+寄与ですが,その小ささがかえって目立つ状況といってよいでしょう.
GDP統計の基本的な読み方については,後日追記しますね.
消費減は台風か暖冬か
さて,今次のGDP低下の主役である消費減ですが,その状況を供給側の統計である商業販売から見ていきましょう.

今回の消費増税の影響は,元々の消費の地足が悪いこともあり,「駆け込みが弱く,反動が大きい」,「消費の回復速度も遅い」という特徴があることがわかります.「駆け込みが弱い分,反動減も小さい」と予想したエコノミストもいましたが,全くの見込み違いだったわけです.
さて,10月に突然消費が減少した理由は何か,また消費が回復しない理由は何かーーそう!当然ですが10月の台風と暖冬ですよね!!ね!
台風の影響
昨年の10月は台風19号につづいて21号による各地での大雨が続き,多くの犠牲者を出しました.住宅等への被害も小さくありません.台風・大雨被害やそれに警戒して外出を控えたことはきっと,消費の抑制に強く影響したのではないでしょうか.
そこで,まずは同月の台風・大雨の被害・被災状況を確認しておきましょう.
◆台風19号で大雨特別警報が出されたのは,
【東北地方】福島県、宮城県、岩手県
【関東地方】神奈川県、東京都、埼玉県、群馬県、山梨県、茨城県、栃木県
【中部地方】静岡県、長野県
【北陸地方】新潟県
◆台風19号と台風21号に関連した10月25日豪雨で10名以上の死者が出た(死者数は10名未満だが1000軒を超える住宅の全半壊被害が出た)のは,
【東北地方】宮城県、福島県
【関東地方】千葉県、(栃木県)、(茨城県)
【中部地方】(長野県)
となってます(出典).ここから関東・東北・中部・北陸の消費動向は大きく悪化したのではないか……そんな予想に基づき,再び販売統計を見てみましょう.まずは,ショッピングセンターの売上推移から.

深刻な被害が出た東北での売上減はさほど目立ちません.確かに大きな被害が出た長野県では大きな売上の変動があったようですが,その減少幅は四国よりも小さくーーショッピングセンターの売上減少は全国的な傾向のようです.
この傾向は,百貨店・スーパー販売額をみても変わらないようです.2018年の第4四半期比での2019年第4四半期の販売額を見ると……

むしろ,台風・大雨被害が大きかった東日本・中部よりも近畿以西での販売減少が目立ちます.
どうも「台風被害で消費減少が予想外の大きさになった」というのは結構厳しい主張のようです.
やはり原因は暖冬なんじゃないか?
それにしても今年の冬は暖かいですよね.先日,新潟県の新発田市におじゃましたのですが,年配の方も口々に「こんなに雪のない冬ははじめてだ」とおっしゃっていました.暖冬の影響自体は非常に深刻です.除雪事業がほとんどなくなってしまった地域では,関連業者の経営に深刻な影響が出ています.また,スキー場については人工降雪費用の高騰と客足の停滞とーーこれまた地域経済に落とす陰は甚大です.さらに春以降の「雪解け水」の減少も農業への影響が小さくないでしょう.
このような暖冬は消費にも影響する部分があるかもしれません.実際,私も今年はほとんど冬物衣料を購入しませんでした.というかぜんぜん寒くならないのでぼんやりしている内に晩冬になってしまったのです.
そこで,次は消費側(需要側)統計から消費の内訳をみてみましょう.用いるのは『家計調査』の品目別データです.2人以上世帯の2018第4四半期の支出額と2019年第4四半期の比較データですが,「消費者側の支出額」データのため,「2%増で実質的な消費額一定」であることにご注意を.

消費支出の内訳を見るとーー確かに「被服・履物」は大きく減少しています.ですが……他の分類に比べて特別に減少幅が大きいわけではありません.「家具・家事用品」「教育費」の低下の方が大きく,さらに「交際費」や「仕送り金」(こちらは分類上「消費支出」ではありませんが)の減少が顕著です.
確かに暖冬だと家具は買わないですよね! 接待・交際なども冬が暖かいとついつい控えがちになるでしょうし,教育に至ってはそりゃ冬暖かいと塾や学校にお金を落とそうとは思わないに決まってるーーわけないですよね.
暖冬を理由に消費の減少を説明するのも,やはりフツーに考えると無理筋な訳でありますことよ.
素直に考えると
素直に考えて,今次の消費低迷とそれによるGDPの低下は「消費増税」以外に考えようがないのではないでしょうか.今回紹介したものはいずれも昨年末までのデータですので,新型コロナウィルスの影響なくして,ここまで悪い数字であることを十分に意識しなければなりません.
足下の景況感が悪化している中で行われた消費増税が日本経済にもたらす影響は深刻です.さらには現下の新型ウィルスの影響もまた,景気の縮小へと急速に変化させる可能性が高まっています.
緊急な需要支持策によって,景気のモメンタムをせめて増税前の状況に保つ必要がある.「消費増税の大失策」を認めたくないがゆえに景気対策が控えめな物になるような事態はなんとしても避けなければならないでしょう.
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