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令和四年、『今』の個人サイト文化を楽しんでいる

定期的に興る『古の個人サイトに帰ろう』というムーブメントを目にするたび、“古の”ではなく“今の”個人サイトの存在や意義が蔑ろにされているように感じ、何とも言えない複雑な気分になる。

昔流行り、今は主流ではなくなったものは沢山ある。趣味の個人サイト文化もその一つだ。
そして、今は主流ではなくとも、続けている人がおり、“今”に合わせて変化しているものも沢山ある。個人サイト文化も勿論、そうである。

というわけで、今の個人サイト文化がどんな風になっているのか、雰囲気の話などをしたためてみようと思った。CSSだとか<center>タグが廃止になったとかそういう変化の話ではなく、自分が個人サイトをやっていて『今の個人サイト文化は心地がよい』と感じている話だ。

なお、あくまで自分の環境・自分の観測範囲の話であるという断りを入れておく。1個人の見えている世界の話であるという前提で読んでいただけると嬉しい。 (今、個人サイトを運営している全員の総意ではないよ!という意味です)


自己紹介

どういう人間がこの記事書いてるのか?について
・趣味で二次創作の絵や話を描いたりする
・個人サイト全盛期にサイトを持っていたが、SNSの台頭とともに閉鎖
・数年前なんとなく自前サイト欲しいなと思い立つ→作る
・2022年現在、アクティブに自サイトを運用している

前提:趣味の個人サイトとは

これについては調べれば詳しい記事がわんさか出てくるかと思うので割愛したいが、一応軽く触れておく。前提は大事

当記事で触れている『趣味の個人サイト』とは、主にマンガ・ゲーム・映像・小説などのコンテンツファンや、自主制作のオリジナル創作物など、愛好者同士や興味のある人々向けに運用されるものだ。

現在はSNSで完結できるこれらの趣味活動だが、SNSが無かった時代は自作のホームページをサーチ・リンクサイトに登録することなどで周知していた。

サーチエンジンの今

結論から言うと、この手のリンクサイトは当時に比べれば圧倒的に過疎状態だと思う。

ただし、全く機能していないかと言うとそういうわけではない。個人サイトをやりたい人はまだまだ沢山いて、そしてそんな今稼働しているサイトが集うオールジャンルのサーチエンジン、あります。

※隠棲的に個人サイトをやりたい方の迷惑にはなりたくないので、該当サーチのリンクを直接貼ることはしません。気になった方は頑張って探すか、偶々見つけた時に「あ、これかあ!」ってなってください。

そのサーチエンジンは新着登録されるサイトが週に10件程度、更新してリストアップされるサイトが週40件程度。これは個人サイト全盛期と比べれば過疎も過疎かもしれないが、それにしても意外と動いている、と言えるのではないだろうか。週に40も『更新したからアップしておこう』となるサイトがあり、運営者がいる。多くないですか?自分はけっこう多いと思います。

もちろん、この密度だと特定ジャンル・特定キャラクターの二次創作を探したい!という目的だとほぼ収穫は無いだろう。まあそれをするならSNSで良いのだが。

自分はこの、全然動いてないわけでもなく、断続的に大量の情報が流れ込んでくるわけでもない、適度で緩やかなペースが心地よい。そして、『今、個人サイトをやりたくてやってる人』を見るのが好きだ。ほとんどは全然知らないジャンルのサイト。でも色んな人が色んなものをマイペースに愛でているところを見るのが、すごく楽しい。
人が何かを楽しんでいるところ、好きなものを表現しているところというのは、そのモノを良く知らなくても魅力的に映るものだ。少なくとも自分は大好き。

追記:令和5年、新しいサーチエンジンができてサーチエンジン界隈もにわかに盛り上がってていいですね。


SNSよりも肌に合う点

SNSでも、好きなものに打ち込んでいる人を観測することはできる。だが、SNSは様々な人の様々な目的で運用されているサービスであるため、『自分が得たい情報』に絞るとノイズが非常に多いのだ。

・この人にはどれくらいフォロワーがいるのか
・一つ一つの発言にどれくらいのリアクションがついているのか
・どんなコミュニティに属し、誰と仲良くしているのか
・RTされる他者情報
・アルゴリズムによるおすすめ情報

この辺りは自分にとってはけっこうノイズだ。その人の創作物や考えが見たいのに、それに対して見ず知らずの不特定多数がどんな反応をしたか、どれくらい評価されているか、関係ないオススメなど、心底興味が無い。SNS不適合者で申し訳ない。

個人サイトというものは、性質上これらの情報のほとんどを見なくて良い。ただただ管理人が飾り付けた、何の数字的装飾もない作品を見て、リアクションが目に見えにくい個人的な日記や呟きを読める。直接的なコミュニケーションもあまり目に入ってこない。本当にノイズが少ない。良すぎる。

もちろんこれは全てに当てはまるわけではない。つぶやく発言の一つ一つに反応可能なボタンをつけている人もいるし、交流が目に見える人もいる。
だが重要なのは、個人サイトが『管理者の裁量で機能を決められる』という点なのだ。自分に合う自分だけの機能とフィールド構築ができる。例えば反応が欲しい人はリアクションボタンをつけるし、要らない人はつけていない。

皆、自分が欲しい機能を取捨選択してサイトを作っている。それができるのも、SNSという大きな母艦が主になった今個人サイトの魅力と言えるだろう。

現在の個人サイトを作るハードル

これはあくまで個人的な意見なのだが、ハードル自体は割と下がっていると思う。タグを打って作る場合はハウツーがあらゆるところに転がっているし、それが無理でもホームページ作成サービスが沢山ある。WordPressという選択肢もある。

今、同人系の個人サイトの支援サイトと言えばdoだ。doさんは本当に神のような存在。doさんを信じれば救われる。今doという支援サイトがある時代に生まれたことに感謝しよう。

『(ビジネス・アフィリエイト系ではなく)趣味のサイト作り』に主眼を置いたサイト作りのノウハウ記事をたくさん投稿されている。さらにテンプレートも多数配布されており、役に立つプログラムも提供してくれている。
プログラムというのは『いいねボタン』や『メッセージフォーム』『画像表示モーダル』などだ。どれも個人サイトに欲しいなと思える機能ばかり。それが簡単に実装できる。


そして、doさんに並んで現在の個人サイトアクティブ運営者の多くが知っているであろう神CGIがこちら、『てがろぐ』だ。

呟く欄がTwitterのようにシンプルで、短文の呟きでも長文の語りでも気軽にできる。『自分だけのTwitter(字数制限なし)』のようなミニブログが作れる。
『ブログ』だと更新するぞ…という気合が必要だが、『つぶやき』だと気軽にポンポン書ける、というのが人間けっこうあると思う。自分はある。

シンプルながら機能が非常に充実しており、
・カテゴリ、ハッシュタグ機能
・続きを隠す(ワンクッション)機能
・TwitterやYoutube、Spotifyなどの埋め込み
・画像だけを並べるギャラリーモード
・鍵付き機能あり
・複数人で共有して使うこともできる

など、様々なことができる。しかも現在も開発中であり、要望に応じて頻繁に機能が追加されたり、バグが修正されたりしている。神様だと思う。(感謝の投げ銭)

必要な機能だけを使い、不要な情報は表示しない、ということが細かくできる。カスタマイズの自由度がかなり高い。もちろんデザインをカスタムするにもHTML・CSSの知識が必要だが、これはdoさんの記事や色々調べるなどして頑張る。自分だけの手軽な呟き場が欲しいならがんばろう。応援しています。

ちなみにdoさんが作成したてがろぐ用スキンも存在する。これは自分のHPデザインにてがろぐのデザインを合わせるという趣旨のものだ。
他、調べるとてがろぐのスキンを配布してくださっている方もいるようだ。


以上のように、『作ってみよう』と思った時の支援環境はかなり豊かだと思う。もちろん、その上で簡単に作れるかどうかは人によるが。全くのゼロから始める場合、HTMLやCSSの概念がそもそも分からないといったこともあるだろう。
だが、それでもやってみたい人に向けた支援は充実していると思う。あとは調べたり検索して頑張ればできる。…かもしれない。

自分は『〇〇できない CSS』みたいなバカっぽい検索を繰り返してある程度満足のいくサイト作りを達成できた。タグやプログラムは訳の分からないことでエラーを吐いたり上手く表示されなかったりするが、同じような壁に当たったことのある人は大体いるものだ。ありがとうインターネットの先駆者たち


丁寧な支援サイトがあり、検索すればいくらでも情報が転がっているからハードルはそこまで高くはない……と言っても、数ステップの入力作業をすれば即運用可能になるSNSに比べると遥かに面倒な道のりを往くことになる。だから個人的には『みんな作ろうよ』とは思わない。だが、「個人サイトやりたい!やりたすぎる!」という気持ちがあるならいけるよ、割となんとかなるよ、ということは伝えたい。
何事もそうだと思うが、手間暇とやりたい気持ちを天秤にかけて傾いた方を選択すれば良いのだ。なにせ趣味なのだから

SNSが主流だからこそ、個人サイトを選ぶ意義がある

SNSという圧倒的に手軽で人目に付きやすい土壌がある現在、敢えて自分だけの城を建造してそこに住み着いている人がいる。死ぬほど手間がかかるし、見る人も少ない。数字は取れない。何故それをするかって、その土が自分に合っているからだ。少なくとも自分はそうだし、よく覗きに行っているサイトの管理人にもそういうタイプが多いように感じる。

なんというか、『メインストリームに適合できない人たちが自分の息しやすい空間を構築している』というような空気感が今の個人サイトにはある。これは、『個人サイトしか手段がない』時代には無かったものだと思う。

自分は個人サイトめちゃすき人だが、『メインストリームを個人サイトに戻そう』というような言論にはあまり同意できないし、そもそもSNSの手軽さを覚えた趣味人の過半数以上が個人サイト主流に戻ることはないだろう。万が一Twitterが無くなっても、類似サービスに人が流れるだけだ。(個人の意見です)川の流れみたいなもので、多くは流れに従うし、遡るには相応のパワーがいる。そういうものだ。多分。知らんけど

これは閲覧側にも言えることで、『フォローやリスインすればタイムラインを開くだけで全部まとめて確認することができる』時代に、『わざわざ一つ一つブラウザで開かなければいけない個人サイト』が主流になるとはあまり思えない。(RSSを活用するという手段がなくもないが)

繰り返すが、お手軽SNS時代の今、本当に手間で面倒な作業だ。個人サイト作りは。
だからこそ、敢えてそんな面倒極まりないことをしてでも個人サイトがやりたい、自分の城が欲しいと思い立った人の構築する空間は魅力的なのだ。パワーがある。そこに自分の趣味の好きなものを置いたり、SNSに流れない場所で気軽に好きなことを語っている。それが合うから、それを選んでいる。

みんなやろう、とは言わないし、言えない。でも、やりたい人は是非やろう、個人サイト。楽しい人は楽しいぞ。かなり


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