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鉄道ダイヤを考える ❶京葉線編 3. 利便性と収益性を両立する運行形態(平日下り)


図5:考案したダイヤ案における各種別の停車駅

6-1. はじめに


お久しぶりです。期末と夏休みの鉄道旅行に追われて執筆が大幅に遅れてしまいました。思い思いにダイヤ案考案の過程をすべて書いた今回の記事、字数が14,000字となってしまいました。なお、記事内での「現行ダイヤ」は全て2024年3月当時の京葉線ダイヤであり、9月ダイヤ改正には対応していませんので、ご理解をよろしくお願いいたします。

7. ダイヤ案考案(平日下り)

今回は前回考案した上記の停車駅設定を基に、まずは平日下りの運行形態を考案していく。また、京葉線のダイヤを考案する上で外房線・内房線のダイヤ考案も欠かせないため、今回は外房線・内房線もまとめてダイヤ案を検証していく。

7-1. 4〜5時台

まずは早朝時間帯、平日5時台についてだ。現在、主要各駅の初電の時刻は以下のようになっている。

図7:各駅の現在の初電時刻

初電というものは一般的に混雑度が低い印象を抱く人が大半だと思われる。そのイメージはこの京葉線系統の路線にも当てはまり、京葉線・内房線の始発列車は空いている。だが、この中でも外房線は違う。外房線は、始発列車から特に利用の多い鎌取駅を中心に異常ともいえる混雑が発生しており、下りに向かう人は少ないからまだしも上り、千葉方面は初電から世紀末と化しているのが現状だ(このことを扱うのは次回なのだが)。この現状を解決するために私が考えたダイヤ案がこちらである。まず、新習志野5:00発の各駅停車上総一ノ宮行を設定。現状外房線の下り初電は蘇我5:27発快速上総一ノ宮行(551F)となっており、その次が成東行ということも相まって快速通過駅の永田・本納・新茂原・八積では初電時刻が6:30前後となってしまっている。ここより初電が遅い駅は房総地区では干潟駅(総武本線 旭方面/6:42)・延方駅(鹿島線 鹿島神宮方面/6:46)・千倉〜安房鴨川間(内房線 安房鴨川方面/7:00前後)・千歳駅(内房線 千倉方面/6:41)・横田〜上総亀山間(久留里線 久留里・上総亀山方面/6:48〜7:31)くらいしかない。上総一ノ宮方面への需要は少ないとはいえ、流石に初電が遅すぎる。先述の新習志野発上総一ノ宮行(501Y, 3501Y)を設定することで、新茂原駅の下り初電は6:32→5:44へ繰り上がり、上総一ノ宮で6:00発普通安房鴨川行(223M)に接続することで、快速通過駅から千葉県南部への移動の利便性を上げる。さらにこの501Yは折り返し上総一ノ宮6:01発の快速(現行ダイヤでは上総一ノ宮6:03発の2024年3月改正で唯一生き残った朝の外房線発の快速東京行)となり、車両の送り込み運用としても用いることができる。これについては次回の投稿で述べる。また、新習志野発上総一ノ宮行設定に伴ってお役御免となった蘇我5:27発快速上総一ノ宮行(551F)だが、行先を君津に変更することで内房線の初電時刻をも早める(五井:6:03→5:40)。快速が通過する巌根に向けては、蘇我5:45発の各停君津行を設定する(巌根:6:21→6:12)。
京葉線内は東京発の初電が4:55→4:52と3分早まるが、接続列車もないため特に影響はないと思われる。5時台は、京葉線・武蔵野線直通列車共に20分間隔(つまり、東京〜市川塩浜間では10分間隔)での運転となるようにする。

図8:各駅のダイヤ案時刻表(5時台)

7-2. 6時台

次は6時台だ。この時間帯になると京葉線沿線、舞浜駅が最寄りの東京ディズニーリゾートを訪れる人が次第に増えてくる。ただ今回取り上げているのは平日、休日ほど需要が多いわけではない。むしろどちらかといえば出勤客の方が多くなる。朝ラッシュ時間帯は次回取り上げるとして、6時台の下りを見ていく。武蔵野線は引き続き20分間隔で運転する一方、京葉線はこの時間帯から運行本数が多くなっていく。

図9-1:各駅のダイヤ案時刻表(6時台)
左が従来の時刻表、右がダイヤ案。
図9-2:各駅のダイヤ案時刻表(6時台)
左が従来の時刻表、右がダイヤ案。
図10:快速の初電時刻比較

とはいえ、まだこの段階では5時台と比べてそこまで本数は変わらない。また新木場6:01発各停蘇我行が2分繰り上げられた影響で6時台の本数は1本減っているほか、新習志野発も1本削減している。一方で海浜幕張方面への通勤・通学客の需要に応えるため、快速の初電時刻を2時間程早め、2013年改正時の下り初電の快速と同水準とする。また内房線では、巌根駅の列車等間隔化のため、姉ヶ崎行の時刻を20分後ろ倒しにしている(五井発 6:35→6:55)。また東金線は6時台1本減便とした(東京行の送り込み運用が1本前倒し)。

7-3. 7時台

図11:各駅のダイヤ案時刻表(7時台)
左が従来の時刻表、右がダイヤ案。

ここからは京葉線内、新浦安への通学需要と海浜幕張への通勤・通学需要が強まる所謂「逆ラッシュ」の時間帯に突入する。なお、長期休暇シーズンになるとこれに舞浜のレジャー需要も加わる。上りの武蔵野線直通の本数も徐々に増えてくるため、新木場7:38発以降は武蔵野線方面は12分間隔での運転とし、東京に着いた上り武蔵野線直通の一部は新習志野へと入庫させる。さらに快速毎時2本運転し、海浜幕張方面への通勤・通学需要をカバーする。また海浜幕張〜蘇我間の途中駅には「東京への通勤需要が非常に大きい」という特徴があり、ラッシュへの列車送り込みのため7・8時台の本数はかなり多くなる。そして海浜幕張で満を持して登場したのが、7:22発の特急「わかしお1号」勝浦行だ。現行ダイヤでは東京7:15発、海浜幕張7:43発での運転となっているが、今回のダイヤ案ではこれを東京7:00発、海浜幕張7:22発へと繰り上げた。わかしお号は東京〜蘇我間30分の最速レコードを持っており、海浜幕張に停めても東京〜蘇我間は32分(2022年度の特急わかしお5号・14号・20号が蘇我〜東京間を海浜幕張停車で32分というレコードを出している。13号・23号に至ってはノンストップで31分)を保つことができる。なお今回は変更点はあるが、特急に関しては概ね2023年度のダイヤを復元しており、停車駅も平日は下りに関しては東京15:00発の「わかしお11号」までは変わらず、京葉線内は途中海浜幕張蘇我にのみ、外房線内は途中大網茂原上総一ノ宮大原御宿勝浦・上総興津(3号のみ)・安房小湊(3〜9号)安房鴨川(3〜9号)に停車する。なお、わかしお号のうち、1号・2号・また快速は7時台以降9時台までは毎時2本ずつ運転する。各駅停車は線内運用の蘇我行と入庫運用の新習志野行を共存させて運転する。また蘇我行はラッシュ時運用の蘇我への送り込みのために本数が多くなっており、海浜幕張駅の下り方面は7時台だけで各停が9本(海浜幕張から各停の快速含む)も運転される。また外房線・内房線はこの時点で毎時4本ダイヤを確立し、外房線はこれ以降10時台まで一部行き先変更等はあるものの基本的には各駅停車上総一ノ宮行2本/h、S快速上総一ノ宮行1本/h、各駅停車成東行1本/hを運転する。内房線も同様に、これ以降16時台まで基本的には各駅停車君津行3本/h、S快速君津行1本/hを運転する。

7-4. 8時台

図12:各駅のダイヤ案時刻表(8時台)
左が従来の時刻表、右がダイヤ案。

8時台も引き続き、内房線・外房線は上記の通り運転する。東金線はこの時間30分間隔である。武蔵野線方面の列車は12分間隔での運転を続け、一部は東所沢行となって日中の武蔵野線内10分間隔での運転に備える。京葉線方面も特筆すべきことは特にない。だが、ここで初の外房線直通列車が登場する。新木場8:56発快速上総一ノ宮行である。東京の発車時刻は2024年3月改正と変わらず8:48だが、種別を快速に変更している。改正前の東京8:53発の快速は、時間調整のため蘇我まで49分かけて非常にのんびりと走っていたが(新浦安で特急待避したり蘇我で7分停車したり)、改正後は特急から新習志野まで逃げるようになった。これに加えてダイヤ案では、種別格上げにより速達化し、蘇我まで42分(つまり9:30着)で到着するようになる。なお、9月1日のダイヤ変更に伴い、3月改正で誕生した東京8:48発各駅停車上総一ノ宮行は、下り快速第1便として東京9:02発快速上総一ノ宮行へと変更されると思われる。

7-5. 9時台

図12:各駅のダイヤ案時刻表(9時台)
左が従来の時刻表、右がダイヤ案。

9時台になると本数も落ち着いてくる。内房線においては日中時間帯、毎時4本のうち1本を木更津行として運転する。また先述の外房線直通快速(便宜上外房線内では「K快速」と記述)第1便の時刻上の関係で、各駅停車成東行を14分繰り下げ、10:03発として運転するため、土気駅9時台には成東行が1本も存在しない。また安房鴨川行の最初の特急「わかしお3号」に関しては、大きな変更はない(つまり、この便が上総興津停車便ということでもある)。以後、10:22発 わかしお5号 安房鴨川行・11:22発 わかしお7号 安房鴨川行・13:22発 わかしお9号 安房鴨川行・15:22発 わかしお11号 勝浦行に関しては、23年ダイヤから平日に関しては大きな変更点がないので記述しないことにする。京葉線内、快速は変わらず毎時2本だが、日中ダイヤに備えるため9時台は25分間隔での運転となる。また武蔵野線直通列車も20分間隔へ戻り、日中ダイヤへ向け本数も減っていく。

7-6. 10時台

図13:各駅のダイヤ案時刻表(10時台)
左が従来の時刻表、右がダイヤ案。

10時台まで来ると、日中時間帯との違いはほぼなくなるが、先述の快速の関係で外房線内は成東行が2本となっている。あの快速は9:02発の方が良かったかもしれない...と内心思う。この時間からは快速毎時3本での運転を開始。武蔵野線直通も東京・南船橋(海浜幕張?)から20分間隔で出発する。

7-7. 日中時間帯(11〜15時台)

図14-1:各駅のダイヤ案時刻表(11〜15時台)
左が従来の時刻表、右がダイヤ案。
図14-2:五井駅の従来の時刻表(11〜15時台)

11〜15時台は日中時間帯となり、ここからはパターンダイヤとなる。今回のダイヤ案では京葉線・外房線・東金線に加え、現行ダイヤでは毎時3本で列車時刻が不均等な内房線でもパターンダイヤを考案した。今回のパターンダイヤ考案は、列車間隔が大きくばらつく「不整脈ダイヤ」を解消することが目的だ。まず京葉線では、各駅停車1本を快速に置き換え、本数の比を各停:快速:武蔵野線直通=1:1:1とすることで、葛西臨海公園駅では列車間隔が現行ダイヤの5〜13分から10分に、新習志野駅では列車間隔が現行の12〜18分から20分に統一される。日中の本数が15分間隔→20分間隔とかなり少なくなるので、南船橋止まりの武蔵野線直通列車を日中も海浜幕張まで延伸するのも良いかもしれない。海浜幕張〜蘇我間も20分間隔となり、あまりに本数が少なくなるので各駅停車を蘇我まで延伸する形での毎時6本化も考えたが、海浜幕張〜蘇我間の平日日中の利用客数のデータが取れていないため(日中に収録されたYouTube上の車窓動画を片っ端から漁ったが、検見川浜・稲毛海岸・千葉みなとの各駅には10人程度しかいなかった)、ここでは毎時3本と置いておくことにする。もし海浜幕張〜蘇我間の利用実態を知っている方がいれば、コメント欄にてご教示いただきたい。外房線は日中毎時4本のままだが、本千葉を毎時6本にすると京葉線直通が合間を縫う形になり列車間隔が不均等になるので、内房線を毎時3→4本へ増発し列車間隔をできるだけ均等にする。将来的に、2024年問題によりアクアライン経由の高速バスが減便せざるを得なくなった時は、それを補完する形で日中に「さざなみ」を復活させる、なんてことがあるかもしれないが、現時点では減便は行われておらず、東京〜君津間は高速バス優勢の状況が続いている(というか、2024年3月改正でそれに拍車がかかった)ので、現時点の情勢で「さざなみ」が日中に復活することはないだろう。

7-8. 16時台

図15:各駅のダイヤ案時刻表(16時台)
左が従来の時刻表、右がダイヤ案。
なお、新木場16:51発の快速は蘇我行ではなく
上総一ノ宮行である。

本筋はここからの夕ラッシュ時間帯である。16時台の時点では、京葉線系統は引き続き快速を運転するくらいで大きな変更はない。この他は、東金線が毎時2本に変わり、内房線の毎時1本あった木更津行が上総湊行に変わるくらいである。

7-9. 17時台

図16:各駅のダイヤ案時刻表(17時台)
左が従来の時刻表、右がダイヤ案。

夕ラッシュ時間帯に入り、徐々に本数が増えていく。京葉線系統はこの時点で相当な本数になっているが... ひとまず、順を追って説明していく。

7-9-1. 特急「わかしお・さざなみ」

この時間帯からは特急「さざなみ」も登場し、わかしお号と併せて特急は京葉線内30分間隔での運転となる。また停車駅も大きく変わる。日中に停車していた海浜幕張が通過となる点は現行ダイヤ(京葉線内Non-Stop)と同じだが、17時以降は特急は新たに中央区にあり通勤需要が大きい八丁堀とお台場へのアクセス駅で乗換需要が非常に大きい新木場に停車する(つまり、京葉線内 東京→八丁堀→新木場→蘇我と停まっていた旧通勤快速と京葉線内においては停車駅が同じになる)。加えて東京17:00発の「わかしお13号(現行:11号)」が土気に停車し、着席需要に応える(従来通り東京18:00発以降のわかしおも土気に停車する)。「さざなみ」については停車駅(わかしおと同じく八丁堀・新木場に追加停車)以外は2023年改正時と大きな変更はなく、内房線内は五井・姉ヶ崎・木更津・君津に停まる。17時台は、東京17:00発 「わかしお13号」勝浦行と17:30発「さざなみ1号」君津行を運転する。

7-9-2. 通勤快速

続いて今回騒動となり、9月改正発表以後も復活の要望が相次ぐ通勤快速だが、こちらは今回のダイヤ案では3月改正前の下り2本から10本へと増発し、夕ラッシュ時間帯(17〜21時台)毎時2本運転する。また、そのままの停車駅ではまた廃止となるのが目に見えているため、停車駅を変更する必要がある。詳しい過程は前回の記事を参照していただきたいが、今回私が選んだ追加停車駅は、定期乗降人員が新木場以東で最多の6.47万人を誇る新浦安、そしてその新浦安に次ぐ定期乗降人員(5.88万人)の幕張新都心の中心駅海浜幕張である。この2駅に停車することで、房総地区の通勤・通学需要を吸収した上で、東京⇔蘇我間を2022年比で2分増の36分で結ぶことが可能となっている。さらに房総地区の沿線価値向上のため、外房線・内房線内でも通過運転を行う速達タイプの通勤快速を設定し、勝浦・君津からの通勤・通学需要を大きくする。停車駅は後述するが、これに伴い、表のように房総地区へのアクセス時間は大きく短くなる。10本の内訳は、速達・勝浦行1本(新木場19:23)、一般・勝浦&成東行1本(同18:23)、一般・上総一ノ宮行3本(17:23・20:23・21:23)、速達・君津行3本(17:53・20・53・21:53)、一般・上総湊行1本(18:53)、一般・君津行1本(19:53)である。これにより、東京~勝浦間を23年度より20分・現行より46分短縮した94分で、君津~東京間を23年度より3分・現行より23分短縮した71分で結ぶことが可能となっている。

図17:ダイヤ案での通勤快速一覧表(下り)
左:2024年改正での右記に対応する各停
※東京18:45発の通勤快速は上総湊行

↑通勤快速の停車駅を考案した前回の怪文書記事はこちらになります。

7-9-3. 快速

快速は現行と比べて停車駅の変更はないが、通勤快速の増発に伴って夕ラッシュ時間帯は毎時3本→2本へ減便する。さらに一部を除き夕ラッシュ時間帯は全列車蘇我行とすることで、千葉市美浜区・中央区の利便性向上を狙う。これに伴って房総各線直通列車は夕ラッシュ時間帯は全車通勤快速となり、速達性が向上する。

7-9-4. 各駅停車

京葉線の快速通過駅の乗降人員は、最小の越中島駅で10,442人(乗車人員×2)、最大の葛西臨海公園駅で27,292人である。以下は各社の優等通過駅の利用客数と夕ラッシュ時間帯(18時台)の停車本数である。

国領(乗降:32,622人)→毎時6本
江古田(乗降:30,837人)→毎時8本
北赤羽(乗降:35,908人)→毎時9本
中板橋(乗降:25,433人)→毎時8本
新習志野(乗降:23,310人)→
京葉線毎時9本・武蔵野線毎時3本
葛西臨海公園(乗降:27,292人)→
京葉線毎時7本・武蔵野線毎時5本

筆者調べ

新習志野の本数が異様に多いが、これは夕ラッシュ最ピークの東京駅17:30〜18:00発の本数が他の時間と比べ多いためである。なお、2023年度までの停車本数は新習志野が京葉線毎時7本・武蔵野線毎時3本、葛西臨海公園が京葉線毎時4本・武蔵野線毎時5本である。毎時3本分はどっから湧いてきたんだ。これでも快速停車駅に需要が集中している京葉線では適切な本数ではあったが、改正によって本数過剰となってしまった。今回のダイヤ案では武蔵野線直通列車は各駅停車のみとして考えているが、夕ラッシュ時間帯に限り旧来の「武蔵野快速(停車駅:東京・八丁堀・新木場・舞浜・新浦安・西船橋からの各駅。市川塩浜はハブられる運命だった。)」を復活させるのも良いかもしれない。
今回のダイヤ案では、各停利用客に配慮して京葉線各停を毎時8本確保。さらに新木場駅ホーム滞留問題解消のため、武蔵野線直通列車を府中本町行3本・西船橋行(終点で府中本町行へ接続)3本の計6本を東京〜西船橋〜海浜幕張間で確保する(17時台はまだ4本だが)。なお某市長が

京葉線に快速が停車しない4駅のうち、武蔵野線から東京への電車が合流する市川塩浜駅以外の3駅で、住宅街を背負うのは新習志野駅だけだ。その利用客数は快速が停車するのにも値する。

習志野市・宮本市長、会見にて指摘

ということを言っているが、そもそも京葉線の快速通過駅は越中島・潮見・葛西臨海公園・市川塩浜・二俣新町・新習志野・幕張豊砂の6駅であり、市川塩浜を除けば(市川塩浜「解せぬ」)5駅。二俣新町は工業地帯にあり、幕張豊砂は地域利用にはあまりに不便な位置であることを考えて外したとしても(実際、幕張豊砂の利用客はなんと7割が非定期利用)、コロナ禍から新習志野(利用数コロナ前比87.7%)より圧倒的に早く立ち直った潮見(利用数コロナ前比107.5%)の方が定期利用も圧倒的に多く、また新習志野は3面4線の構造であり緩急接続が可能だが、快速を停車させて緩急接続を行ったとしてもメリットを受けるのは市川塩浜・二俣新町・幕張豊砂の3駅のみ(さらに言うと、この3駅は京葉線でそれぞれ利用客数ワースト4・ワースト1・ワースト3である)。さらにそもそも各停から快速への乗り換えには階段を用いてホームを移る必要がある。地価の下落に伴う「都心回帰」の流れが続く今、新習志野の利用客数の大きな増加は見込めず、むしろ潮見の方がどんどん利用客数は伸びていくものと思われる。このことから、新習志野への快速停車は速達性を損なうだけであり、緩急接続は新浦安で十分だと考える。

7-10. 18時台

図18:各駅のダイヤ案時刻表(18時台)
左が従来の時刻表、右がダイヤ案。
※新木場18:38発の特急は君津行です。
※内房線の時刻表は絶望的にミスしています。訂正箇所は以下の通りです。
ダイヤ案18:03発:通勤快速君津行→S快速君津行
ダイヤ案18:32発:S快速上総一ノ宮行通勤快速君津行


18時台においても、新機軸を取り入れている。基本的運行形態は17時台と大差はないが、一部異なる点がある。まず、新木場18:23発の通勤快速は2024年3月改正で廃止された列車をそのまま復活させた(といっても停車駅は増えているが)勝浦・成東行。廃止前と同じく誉田で切り離しを行い、4両が成東行、6両が勝浦行となる。終点にはそれぞれ成東行が19:30、勝浦行が20:04に到着する。勝浦行を上総一ノ宮行に短縮しなかった理由についてだが、この列車に関しては「上総一ノ宮からの地域輸送」という本来千葉発着の列車が担う役割を担うためである。この後登場するもう1本の勝浦行に関してはまた目的が変わるが…。
そして新木場駅の時刻表に「18:51 特急 吉川美南」という表示があることに気づいた人はいるだろうか。京葉線系統に着席保証列車が走っているのならば、ほぼ毎土休日に運転されている「特急鎌倉」の車両を用いて、武蔵野線系統にも同様の着席保証列車を走らせられないだろうかという企みの元設定してみたのがこの特急である。南越谷や東所沢まで走らせれば別の需要を拾えるか、とも思ったが、南越谷より先は武蔵野線経由以外の方が早いため、今回はギリギリ武蔵野線の東京直通需要があるであろう吉川美南止とした。なお、この特急の名称だが、今回は仮に「よしかわ」とする。ネーミングセンスの欠片も持ち合わせていない私の想像力ではこれが限界だった。

武蔵野線直通特急「よしかわ」停車駅(1号:東京18:43発 平日のみ運転)
東京駅(18:43) - 八丁堀駅(18:45) - 新木場駅(18:51) - 西船橋駅(19:05) - 新松戸駅(19:17) - 南流山駅(19:19) - 吉川美南駅(19:27)

最後の変更点についてだが、これはこの特急「よしかわ」の後続を走る通勤快速についてだ。この18:53発の便は内房線直通の5本の中で唯一上総湊行となっている。かつての通勤快速の上総湊発は上り1本しかなかったが、これを下り便にも設定した形だ。17時台と同じく一般タイプの通勤快速で、終点の上総湊には20:17の到着となる。

7-11. 19時台

図19:各駅のダイヤ案時刻表(19時台)左が従来の時刻表、右がダイヤ案。
※3月ダイヤ五井19:05発は木更津行です。

ここで、外房線・内房線共に無料優等の最速列車が登場する。19:23発通勤快速勝浦行と19:53発通勤快速君津行である。これらは共に速達タイプであり、先述の通り停車駅を極限まで絞って房総地区への速達性を確保する。停車駅は下記の通りである。

通勤快速(速達タイプ)外房線系統
東京駅 - 八丁堀駅 - 新木場駅 - 新浦安駅 - 海浜幕張駅 - 蘇我駅 - (大網まで各駅に停車) - 大網駅 - 茂原駅 - 上総一ノ宮駅 - 大原駅 - 勝浦駅
(一般タイプは上総一ノ宮〜勝浦間各駅停車)

通勤快速(速達タイプ)内房線系統
東京駅 - 八丁堀駅 - 新木場駅 - 新浦安駅 - 海浜幕張駅 - 蘇我駅 - 五井駅 - 姉ヶ崎駅 - 袖ヶ浦駅 - 木更津駅 - 君津駅
(一般タイプは蘇我〜上総湊間各駅停車)

外房線系統は毎日1往復運転
内房線系統は平日のみ下り3本・上り1本運転
土休日は全列車快速として運転するが、一般・速達タイプ共に外房線停車駅は変更なし
内房線は土休日は一般タイプのみ運転(つまり全列車が海浜幕張~君津間各駅停車)
(速達タイプの成東行は東金線ホーム有効長の関係で設定なし)


勝浦行の方に関しては、大網〜勝浦間の優等運転区間の停車駅は特急よりも少なく(特急停車駅の御宿通過)所要時間は39分にもなり、これは2024年3月ダイヤで同区間最速の「わかしお9号」、ダイヤ案で同区間最速の特急「わかしお1〜11号」の38分に匹敵する。なお、特急の所要時間を超えないのは最高速度の差である(特急120km/h、他110km/h)。これにより、大原・勝浦の2駅の沿線価値向上を狙う。なお仮にも特急が停まる御宿を通過とした理由についてだが、そもそも御宿や安房小湊へ特急全列車が停まるのは海水浴客への利便性を図るためだからである。御宿の乗降人員は820人(乗車人員×2)で上総一ノ宮〜勝浦間では上総一ノ宮・大原・勝浦に次ぐ規模となるが、その利用の半数以上は非定期利用であり、定期利用に限れば乗降人員は388人となり、特急通過駅の太東(536人)・長者町(430人)にすら負ける。ここに限らず御宿以南の駅は行川アイランドを除く全駅の近隣に海水浴場があるため、非定期利用の割合が定期利用よりも高い。このため大原(1,590人)や勝浦(750人)と比べると定期利用が少ない御宿に「通勤」快速の速達タイプを停める必要はない、と判断した。なお、速達タイプ通過駅には夕ラッシュ最ピーク時間帯に運転される一般タイプの通勤快速(先述の新木場18:23発 通勤快速 勝浦・成東行)が停まるため、利便性は損なわれないようになっている。
君津行の方は内房線内特急停車駅に加え袖ヶ浦に停車する。今回は「1自治体最低でも1駅」を原則として停車駅選定を行っており、袖ヶ浦市にある長浦と袖ヶ浦の2駅のどちらかを停車とすることを考えた。この時、両駅の利用客数の差はほとんどないことから、市の中心部により近い袖ヶ浦に通勤快速を停車させることにした。ちなみに通勤快速設定当初は内房線内でも快速運転を行っており、その時は逆に長浦に停車し袖ヶ浦は通過していた。現特急停車駅に加え八幡宿・長浦に停車する形となっていたわけだが、徐々に停車駅が増えていった結果、2015年改正で最後まで通過駅となっていた巌根が停車駅に加わって内房線内各駅停車となっていた。これにより速達タイプは蘇我~君津間33分・東京~君津間70分となり、現行ダイヤの特急「さざなみ」の蘇我~君津間30分(ダイヤ案では32分)・東京~君津間66分に匹敵する所要時間となる。

7-12. 20時台

図20:各駅のダイヤ案時刻表(20時台)
※海浜幕張20:37発は9月1日以降快速となります。土気20:02発は成東行です。

9月改正で快速が復元される20時台は、本数が少なくなり始める時間帯だが、この後の舞浜の帰宅客需要対策のため本数は変更せず夕ラッシュパターンダイヤをキープする。外房線直通の通勤快速はここからは全て上総一ノ宮行。この後の君津行2本も速達タイプだ。ところで、夕ラッシュダイヤの内訳について説明していなかったので、しておく。京葉線では前述の通り特急2本/h・通勤快速2本/h(内房・外房各1本/h)・快速2本/h・各停14本/h(京葉線8本/h・武蔵野線6本/h)だが、蘇我を超えればそれも大きく変化する。外房線系統は京葉線から直通してきた通勤快速・特急が各1本/h・総武快速線直通快速が1本/h・千葉発の各駅停車が6本/h(内2本/hは東金線直通)が基本である。

7-13. 21時台


図21-1:各駅のダイヤ案時刻表(21時台)
図21-2:各駅のダイヤ案時刻表(21時台)
※海浜幕張21:10発は9月1日以降快速となります。

ここからは東京ディズニーリゾートからの帰宅ラッシュが始まるが、平日なのでこれは土休日のように入場規制レベルに混雑するわけではない。武蔵野線系統の列車を設定すれば恐るるに足らないだろう。21時台も基盤は変わらない。また、通勤快速および金曜日以外の特急は外房線系統が21:00発の「わかしお21号」、内房線系統が21:30発の「さざなみ9号」で終了する。

7-14. 22時台

図22:各駅のダイヤ案時刻表(22時台)


深夜時間帯へと突入することから、ここからは運行形態も大きく変わる。ところでJR東日本では、一部路線において「金曜特急」を走らせている。ビジネスマンの帰宅時間は金曜日に特に遅くなる傾向があり(とはいっても、数十年前よりは減ったが)、その需要に合わせる形での運転だ。例えば、以下の列車がある。

高崎線
上野21:00発 特急あかぎ81号 本庄行
中央線
東京22:30発 特急はちおうじ7号 八王子行
東海道線
東京23:00発 特急湘南19号 平塚行
常磐線(少しベクトルは異なるが)
上野19:15発 特急ときわ97号 勝田行

このため、京葉線でも同様に金曜日限定の特急として以下の特急を運転することを考える。

東京22:00発 特急わかしお23号 上総一ノ宮行
東京22:30発 特急さざなみ11号 君津行

高速バスと違い、特急は収容力が大きい。その力を使い、房総各地へ快適な帰宅ができるようにする。2024年問題により苦境に立たされている高速バスを鉄道で補完する、というのが目的だ。

特急運休日も房総各地への速達性を保障するため、この特急の直後には以下の通り東京発の最終快速を運転する。

東京22:01発 快速 上総一ノ宮行
東京22:31発 快速 君津行

この2本はそれぞれ上総一ノ宮に23:19、君津に23:52に到着し、東京方面からの直通最終として、金曜日を中心に多くの客を輸送する。流石に深夜帯に入ってくるので、この2本の快速を残し、残りは京葉線各駅停車が概ね10分間隔、武蔵野線直通列車が15分間隔で運転する。

また、この時間になると、各方面への行先の最終列車、いわゆる「終電」も登場し始める。22時台に登場する最終は土気22:50発の各停安房鴨川行。現行より3分ほど遅くなっているが、さらに上総一ノ宮で後続の京葉線快速上総一ノ宮行から接続を受け、最終的に終着の安房鴨川には現行より5分遅い0:20に到着する。これにより、東京都心や千葉からの帰宅需要を確実に拾う。

7-15. 23~24時台

図23:各駅のダイヤ案時刻表(23時台)

23時台から最終まで、京葉線は15分間隔、武蔵野線は30分間隔で運転する。そのほか、各方面への最終は以下の通りだ。

新木場23:17発 各停 府中本町行き(現行から44分繰り下げ)
新木場23:47発 各停 東所沢行(現行から4分繰り下げ)
新木場0:17発 各停 吉川美南行(現行から34分繰り下げ)
新木場0:47発 各停 西船橋行(現行から64分繰り下げ)

武蔵野線系統

新木場0:25発 各停 蘇我行き(現行から8分繰り下げ)
新木場0:40発 各停 新習志野行(現行から5分繰り下げ)

京葉線系統

土気23:26発 各停 勝浦行(現行より22分繰り下げ)
土気23:46発 各停 大原行(現行より3分繰り上げ)
土気23:57発 各停 成東行(直通列車に限れば現行より255分繰り下げ)
土気0:06発 各停 上総一ノ宮行(現行より17分繰り下げ)
土気0:26発 各停 大網行(現行より3分繰り下げ)

外房線系統

東金0:10発 各停 成東行(現行より94分繰り下げ)

東金線系統

五井23:15発 各停 館山行(現行より23分繰り下げ)
五井23:48発 各停 上総湊行(現行より56分繰り下げ)
五井23:58発 各停 君津行(現行より9分繰り上げ)
五井0:13発 各停 木更津行(現行より13分繰り上げ)
五井0:28発 各停 姉ヶ崎行(現行より2分繰り下げ)

内房線系統

ダイヤ案で特筆すべき点を順にあげていく。まず、府中本町行最終を大幅に繰り下げたというのが1つ目だ。現行ダイヤでは、府中本町行最終が終点に0:11に着くのに対し、東所沢行は1:03着である。また、府中本町を通る南武線の終電は0:18、西国分寺を通る中央線の終電も0:43と東所沢行に対してやや早くなっていることから、これを是正するため、府中本町行の終電を44分ほど遅め、同駅への到着時刻を0:52とした。これにより、西国分寺には0:47に到着し、中央線の最終から武蔵野線への乗換が可能となり、新秋津にも同駅で乗り換えられる西武池袋線の最終とほぼ同じ0:39に到着するようになり、東所沢~府中本町間の利便性向上につながる。

そして2つ目に、房総地区の最終を概ね「終着駅に0:30前後に着く」という形に統一した。また、東金線沿線民の通勤利用を促進するため、ダイヤ案考案においても1番となる94分もの終電繰り下げを行った。東金行がある関係上、大網~東金間では繰り下げ幅は減少するが、それでも52分の繰り下げとなった。一応成東には総武本線経由で0:33までならアクセス可能であるのだが、東金線はローカル線にしては利用客数がかなり多く、特に東金・求名の2駅は乗降人員が4桁台(東金 7,816人・求名 3,706人)である(福俵は現在の乗降人員は不明だが、2006年までのデータからおそらく約1,000人ほどであると考えられる)。また、定期利用率も東金74.3%・求名76.3%とかなり高い。このため、この2駅、特に求名の利用客数に配慮する形で、東金線の終電を大幅に繰り下げることを考えたのである。また、先述の通り房総地区の最終列車の終着駅到着時刻を0:30前後に統一したことで、館山行・上総湊行も終電時刻が繰り下げられた(館山行最終の動画を見た時、竹岡時点で乗車率3%とかだったので、上総湊行に関しては「そもそもそんな需要あるのか」という話なのだが、一応設定した)。一方で、君津・木更津への最終は10分程繰り上がっている。これは、現行の君津行が終着駅に0:35、木更津行が0:48とかなり遅い時間に着いていたためであるが、終電ウォッチの動画を見た限りでは終電はそれなりに空いていたようであるため、恐らくは問題はないと考えておく。とはいえ、金曜日の夜などのいわゆる「飲み会」が行われる日になるとこういう終電は混む… と思ったらXの投稿を見る限りではあまり混まないようなので、この繰り上げに大きな問題はないと私は考える。

8. おわりに

今回は平日下りのダイヤ案を実際に考案してきた。JRの主張である「混雑の平準化」と千葉県側の主張である「速達性」の両方を達成するのはやはりかなり難しいと実際にダイヤを作成してみて感じた。今回作成したダイヤもまだまだ不完全ではあるので、改善できるところはさらに改善していきたい。14,000字もの長さのnoteをここまで見てくださり、ありがとうございました。


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