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かけがえのなさの結晶。詩を贈るお仕事。

大学生の頃、知り合いの男の子が詩をつくってメールしてくれたことがありました。音楽をやっている人で、友達の友達という関係性。別に恋仲でもなんでもなかったですが、お誕生日のメッセージに添えて、さくっと送ってくれました。(外国だとよくある光景でしょうか)

わざわざというわけでもなく、ごくごくライトにつくられたもの。それでも、他のおめでとうメールにはない〈かけがえのなさ〉がこもっていて、とてもうれしかったのを覚えています。

詩は〈かけがえのなさ〉の結晶。そう思えて以来、詩を読むこと・つくること・朗唱することが大好きになりました。昔は、詩っていうだけで、なんだか恥ずかしかったのに。偶然か必然か、今ではそれが仕事の一部になっています。

さて、わたしが勤めている学校の生徒たちは、一人一人、自分の詩を持っていて、日直になるとそれを朗唱することになっています。

その詩は担任によるお手製。お誕生日になるともらえるという仕組みです。

先日もちょこっとつぶやきましたが


このときで、今年度すべての詩をつくり終えたことになりました。(自分、おつかれさま!)

一区切りついたので、これまでつくった8篇の詩を振り返ってみようと思います。

(詩をそのまま載せるわけにはいかないので、タイトルやちょっとしたエピソードのご紹介に留めます)

◆「雨がやむとき」(2019.06)

4月に編入学してきたばかりの二年生男子へ。授業に参加「していない」ように見えるけれど、きちんと内側をぐるぐる動かして頑張っていた子。そんな彼に、雨には「ふらない」という働きもある、「ふらない雨」は新しい季節への準備だ、という詩を贈りました。

◆「ひまわり」(2019.08)

二年生女子へ。大人を見上げるときの首の傾きや、首をかしげながら「こうかな」ともじもじする仕草が印象的な子。その姿がひまわりと重なり、お日さまを慕うひまわりの気持ちを詩にしました。

◆「レシピ」(2019.09)

低学年クラスで一緒に学んでいる七年生女子へ。彼女の口から聴いてみたい音の響きや、浮かんでくる断片的なイメージを組み合わせた詩をつくりました。ご両親が「すごい!うちの子っぽい!」と言ってくださったのが印象的でした。

◆「天からおっこちてきた話」(2019.10)

二年生男子へ。大人っぽいものへの憧れが強い子。稲垣足穂を意識して、モダンでユーモアのある感じにしてみました。が、意外にもこの詩は一年生に大人気。初めてみんなの前で読み上げたとき、みんな声を上げて笑ってくれました。

◆「あきのね」(2019.10)

一年生女子へ。いつも「あのね、なんとかでね、なんとかなの。でもね、ああでね、こうでね、こうだったの!」という話し方で、身の回りの出来事を報告しにきてくれる子です。その語り口調を活かして、リズミカルな詩をつくりました。

◆「森のトロッコ 」(2019.11)

いつもまめまめしい働きをする二年生男子へ。トロッコで丸太や石ころをせっせと運ぶイメージが浮かびました。あんまりメルヘンすぎても雰囲気が違うので、音遊びのような詩にしました。後日、曲がつくようになり、今では歌化しています。

◆「わたしのポット」(2019.11)

詩をもらえることをすごーーーく楽しみにしていた一年生女子へ。ミルクポットに大切なものがたまっていく、それをのぞいたり揺らしたりしながら、喜びをかみしめるという感じの詩にしました。この詩にも、後日、曲がつきました。

◆「白銀の世界」2020.01

一年生男子へ。まっさらな雪の世界に美しい足跡をつけて、旅をするという詩。なんでも器用にこなせるようで、ときどき、アンバランスさが見え隠れする子。一歩一歩、確実に積み重ねて行こうね!というメッセージを込めました。

10年前の自分に、「あなた、将来、お誕生日に詩を送る仕事してますよ!」と言ったらびっくりするだろうな。

人のために詩をつくるのはなかなか大変(精神的に)ですが、子どもたちが詩を大切にする姿を見ると、下手でも頑張ってよかったと思えます。本気でみんなが天使に見える瞬間です。

次の詩づくりはまた来年。今のうちから練習しておこう。

サポートしていただけたら、毛糸を買って何か編みます☆彡