2023年11月22日、離婚後の共同親権の反対集会でのスピーチ in 議員会館


フリーライターの今一生です
離婚後の共同親権については反対です。
 
そもそも離婚する前に、お父さんとお母さんが離婚する・しないで揉めてるようすを、子どもはずっと見てきたわけです。
だから、「離婚するからどっちについてくる?」って言われても、「どっちの親にもついて行きたくないよ、もう二人にうんざりだよ」と思ってる子もいます。
その子は、「なんで2人以外に親を選べないんだろう」って悩んでいるんです。
 
日本の法律では、子どもが親権者を選択・追加・排除する権利を認めていません。
そのために、親から一方的に「俺にはおまえに会う権利がある」と言われるばかりで、子ども側には「会いたくないから会わないでいられる権利」が保障されていないんですよ。
 
学校では、いじめっ子と付き合いたくないから、友達を選ぶ権利が保障されているのに、家に帰った途端、いがみ合う両親がいて「こんな二人と付き合いたくない」と望んでも、両親以外を親権者にするには、親権停止や親権喪失を家庭裁判所に求める手続きが必要になります。
 
夫婦は両者の契約関係ですから、離婚するのも自由にすればいいでしょう。
しかし、子どもは親と契約したわけでもないのに、離婚後も親を選ぶ権利がないため、「大親友のパパやママが自分の親だったらいいな」と思っても、里親になる手続きは煩雑で、しかも時間がかかるうえに、そもそも親権喪失を求める権利も、その手続きの仕方も学校で教えてくれません。
 
これはまさに、日本の法律が子どもの権利を奪っているんです。
15歳以上なら、どちらの親についていくかについて意見を言える権利があるといっても、親の方が子どもより知性や理性が発達していない虐待親こそ子どもにとっては恐怖の対象なのに、なぜ15歳にならないと意見表明権すら得られないのでしょうか?
 
日本の民法では、「成年に達しない者は父母の親権に服する」と書いてあります。
服するとは、一方的に従うって意味です
つまり、子どもは親のことに黙って従えってことです。
子どもは、親から虐待されても拒否する権利もなければ、やめてくれと交渉する権利もなく、おそろしい親から自主避難する権利すらないんです。
 
しかも、虐待かどうかを判断できる権利を持っているのは、児童相談所と裁判所だけですから、子どもが児童虐待防止法で定義されている4つの虐待以外の虐待をされていても、親から逃げることは非行少年扱いされます。
 
宗教2世として育てられて学校で孤立を強いられていたり、自分で働いて得たお金を親に勝手に使われたり、ヤングケアラーとして一生障害のある親族の面倒を見るように強制されたり、親の資産を継承する世襲をしないと「家の恥だ」と疎まれるなど、法律では禁止されていない虐待は他にもいろいろあります。
 
しかし、虐待サバイバーの声を聞かず、親に虐待される痛みを知らない有識者による議論だけで、虐待防止法は作られてきました。
 
今回の離婚後の共同親権についても、離婚によって子どもは転校を余儀なくされて友人を失ったり、なじみの塾に通えなくなるなど、デメリットリスクを負うのに、ステークホルダー(利害関係者)としてはみなされず、親の権利として子どもをどうするかを大人だけで話し合ってきました。
 
なぜ、離婚によってデメリットやリスクを負う子どもをかやの外に置いて議論を先走るのでしょうか?
 
離婚するのは夫婦の勝手ですが、子どもを愛しているというなら、真っ先に論じるべきは、子どもに親権者を選んだり、拒んだりできる権利を法律で守ることではありませんか?
 
両親が離婚して切実に困った経験のある人や、離婚しそうな両親に悩んでいる子どもと一緒に議論するのが、子どもの権利を守ることではありませんか?
 
親としての権利ばかり主張し、子どもの権利に関心がない親は多いです。
たとえば、子どもを虐待している親ほど、虐待かどうかの判別基準を知りません。
 
ちなみに、児童相談所や家庭裁判所では、親権の濫用があったかどうかが虐待であるかどうかの判別基準です。
 
では、親権とは具体的に何ですか?
これを即答できる大人は、ほとんどいないでしょう。
日本には子どもの尊厳と命を守る文化が歴史的になく、今もないので、多くの親は自分が親権を濫用していても、絶対に認めたがらないんです。
 
親権は、親から虐待されている子どもにとって、恐怖の奴隷制度です。
あなたが子どもで、両親に虐待されていると想像してみてください。
 
親権者には子どもの居場所を決める「居所指定権」があるため、あなたには危険な家から自主避難する権利はありません。家出すれば、虞犯少年と呼ばれ、非行少年として扱われます。
パパの家にも、ママの家にも、危険で帰れないんです。
都内周辺の子なら、歌舞伎町のトー横キッズになるしかありませんよね。
 
また、家から出るための自立資金を作ろうと、アルバイトをしたくても、親権者には「職業許可権」がありますから、どんな合法の仕事でも親の許可なしには働けません。

たとえ働けて所得を得ても、あるいは相続金を受け取れたとしても、親権者には「財産管理権」があるため、子どもの金を巻き上げても罪になりません。
 
両親に虐待されている子どもにとって、どれだけ親権が恐ろしいのか、ピンときたでしょうか?

現在はまだ離婚後に単独親権になりますが、これが共同親権になってしまえば、たとえば父親が「大学なんて行くな!」と子どもの右手を引っ張り、母親が「絶対に大学に行きなさい!」と左手を引っ張ることになり、子どもの心と体が引き裂かれてしまいます。
 
子どもが親権者に支配されてしまうという制度自体が人権蹂躙なんです。
だから、離婚後まで2人の親権者のままになる共同親権は、子どもの人権を守る点で、絶対にダメなんです。
 
僕は、離婚後の共同親権の賛同者にも話を聞いていますが、彼らは「可愛いさかりに会いたい」なんて言うんです。
それは、子どもの会いたくない権利を先に守ろうとしない親のエゴにすぎません。
 
離婚前に、子どもから信頼されるような振る舞いをしてきたなら、元の配偶者も快く「子どもに会わせたい」と思えるはずです。

しかし、現実には面会交流で別居親に殺される子どももいることから、子どもを守るには、親のエゴだけを言い出す人は信用できないんですね。
 
それに、子どもが18歳になって成人したら、一緒に住んでなかった親に会いたいと思えば会いに行けます。
つまり、子どもが会いたくなるような人間に成長すればいいわけです。
 
今日では、ネットに文章や映像を公開し、信頼を得ることもできますし、子どもの権利を守れるような取り組みや虐待防止アクション、養育費をもらえずに貧困化している家庭を支援するなど、子どもを守る活動を長く続けていれば、一緒に住んでいなかった子どもから信頼を得られるチャンスはいくらでもあります。
 
子どもに会いたいなら、会いたくなるような魅力的な人間に変わろうとしましょう。
それすらやらずに、「俺を信頼しろ。俺にはおまえに会う権利がある」なんて言ってる別居親は、子どもから見れば軽蔑の対象でしかありません。
 
さらに言うなら、離婚後の共同親権に関する議論は、子どもに関わることなので、こども家庭庁の担当大臣である加藤鮎子・大臣がストップをかける責任があります。
こどもの問題について他の省庁に対する勧告権を持っているのが、こども家庭庁ですから、今すぐストップをかけてほしいです。
 
もしこのまま議論が進むようなら、せめて面会交流の際は、未成年後見人を必ず同席させ、子どもに危害が及ばないようにするという担保ぐらい、つけてほしいです。

拙著『子ども虐待は、なくせる 当事者の声で変えていこう』(日本評論社)も読んでください

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