湖上の小船
いつの間にか僕は小船の中で眠っていたらしい。はっと目を覚ますとお月様と目が合って、僕は会釈をした。
「どうして、船を浮かべているんだい?」
とお月様は言った。
「今日はあなたがとてもよく見える日だったから」
と僕は言った。
「それはそれは」
と言ってにんまりとお月様は微笑んだ。
眠っている間に、船は湖の真ん中まで流れ着いていたようだ。周り一面がとても暗く、星とお月様だけが明るい。
「一人は寂しくないかい?」
とお月様は言った。
「一人だから、楽しめることもあるんですよ」
と僕は言った。
言ってすぐに、僕は少し強がったかもしれない、と思った。けれど、そんなことないかもしれない、とも思った。よくわからなくなった。自分の気持ちも自分でよくわからないなんて不思議だ。
「僕たち、似た者同士かもしれないねぇ」
とお月様は言った。その言葉で僕の胸がすっと軽くなるのを感じた。
「そうですねぇ」
と僕は微笑んだ。
微かな風の音と船を打つ穏やかな波の音だけが聞こえていた。その中で僕は、ねむくなるまでお月様とおしゃべりをした。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?