しがない編集者ですが、、、
私は小さな出版社で長年、いわゆる「ビジネス書」と言われるジャンルの書籍を編集してきました。
「ビジネス書」というのは実は不思議な呼び方で、いわゆる「ビジネス実務書」とは違うのですね。
実務に役立つテーマももちろん扱いますが、それでも、手帳の使い方とか、話し方とか、時間の使い方とか、思考法とか、ノウハウ、いわばTipsのようなテーマが多いわけです。
この流れはいまもあって、「ビジネス書ランキング」などでは、こうしたジャンルの書籍が手を変え品を変え出版されていることがわかります。
また、ランキングを見ていて気付くのは、書籍のジャンルとしては実にさまざまな本が入っているということです。
つまり、テーマジャンルとしてビジネス書というのがあるのではなくて「ビジネスパーソンが読む本がすなわちビジネス書」だといえると思います。
さて、小説などのフィクションとは異なり、実用書をはじめ、ノウハウ本、そしてビジネス書では昔から多いのが、ゴーストライター(ライター)さんの存在です。「ゴースト」の呼称を嫌うライターさんも多いのですが、それはともかく。
ビジネス書などのジャンルで、ゴーストさんが重宝されるのは無理もないのです。このジャンルでは、いわゆる著者の方は文章の専門家ではありません。たとえご本人が「自分で書きます」とおっしゃっても、そのクオリティは未知数です。
であれば、最初からライターさんにお任せして、何回かの著者インタビューをもとにまとめてもらったほうが、クオリティも一応安心できるし、時間も速い、となります。
それはそれで悪いことではないと思います。けれど、とくにこの20年くらいでしょうか、あまりにもそういう企画モノが増えました。
出版業界が不況だというのは、いまや一般常識のようになっていますが、私が思うところ、あまりに著者のキャラクターに寄り掛かった、ネームバリュー頼みの企画モノが増えすぎたと思います。
いまや読者の方だって、ダレソレ著のベストセラーを本人が書いているとは思っていないでしょう。底が割れてしまっているんです。しかも、ひとつ当たると、柳の下の二匹目、三匹目のどじょうを狙って乱立する、結果、自分の首を絞めるというわけで。
ちょっと話がずれました。
本人直筆であれ、ライターさんの原稿であれ、私が原稿に最初に向かって心がけるのは、よく言われていることですが「編集者が最初の読者である」ということです。
そういう意味で、原稿が出来あがるまでの企画の段階から打ち合わせのアレコレはひとまずおいておいて、白紙で原稿と向き合います。
ですから「私に理解できない文章は、ほぼ100%読者には理解できないだろう」というスタンスでダメ出し、赤入れをします。
もう一つは「熱量」です。文章からどれだけの熱量が感じられるか。ビジネス書では、ましてやライターさんの原稿に熱量を求めるのは難しいんじゃない? という疑問はもっともです。
でも、小説に求めるように感動を求めているのではありません。「ココを知ってほしい!」「ココを伝えたい!」という思いは文章に表れます。これがなくてのっぺりと平板な文章(内容)になっているとうことは、文章術以前に、伝えるべき内容がない、あるいは、本人も気づかないうちにポイントがずれている可能性があります。
こうした編集者のフィルターを通して、何度か修正のやりとりをして、原稿は完成へ向かいますが、修正のつど「うん、良くなった」という手ごたえが感じられれば、正しい方向に向かっていると言えます。
このような著者の方とのやりとりはスリリングで、まさに編集者の仕事の醍醐味と言えます。ときに激しいやりとりになることもあります。けれど、前述のように、それは原稿の完成度を高めるための必要なプロセスなのです。
noteで文章を発表していらっしゃる方で、「いずれは出版を」と考えていらっしゃる方も多いと思います。すでに実現していらっしゃる方もいます。
もし、私のような者でよいのであれば、ご希望があれば、出版や原稿についてアドバイスさせていただくような機会をつくることができればと考えています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?