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新型コロナウイルスに負けない!中国鍼灸学会は「COVID-19のための鍼灸介入ガイドライン(第2版)」を作成

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中国鍼灸学会「COVID-19のための鍼灸介入ガイドライン(第2版)」(編集部訳)

3月2日、新型コロナウイルスとの戦いにおいて、中国鍼灸学会は「COVID-19のための鍼灸介入ガイドライン(第2版)」を作成し、世界鍼灸連合会(WFAS)を通じて発表した。編集部の訳を掲載する。

※新型コロナウイルス流行先行国である中国の治療の参照が目的であり、使用を推奨するものではありません。中国での実際の治療は、感染防御・対策されたうえで行われていることをご留意ください。

[原文]
http://en.wfas.org.cn/news/detail.html?nid=5403&cid=25

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COVID-19のための鍼灸介入ガイドライン(第2版)


新型コロナウイルス(COVID-19)は急性呼吸器感染症であり、感染力が強く、広く感染しやすく、人々の生命と健康に重大な脅威をもたらす。「中華人民共和国伝染病防治法」に規定される乙類の感染症に含まれており、甲類の感染症に準じた措置を講じられている。

COVID-19は、中医学における「疫病」のカテゴリーに属する。何千年もの間、中医学は、疫病と闘う医療の実践において、長期にわたり豊富な経験を蓄積している。中医学の重要な部分として、鍼灸は独自の特徴と利点を持っており、中国の疫病対策の歴史の中で重要な貢献をしている。

中医学の古典には、疫病予防と治療のための鍼灸の関連記録がある。例えば、唐代の医師である孫思邈は、その著書『備急千金要方』の中で、「およそ呉や蜀の土地に赴任する役人は、常に体の2・3箇所に灸をして、灸痕が消えないようにすべきである。そうすれば瘴癘・温瘧・毒気などに感染することはない」と記している。明代の医師である李時珍は、著書『本草綱目』の中で、「艾葉……灸をすれば、多くの経脈が通じ、さまざまな病邪を治し、長患いの人を健康することができ、その効果には大きいものがある」と述べている。これら2冊の本はどちらも鍼灸が伝染病を予防し、治療できることを記録している。

現代の臨床研究や実験研究では、鍼灸がヒトの免疫機能を調整し、抗炎症作用や抗感染作用を発揮することが示されている。鍼灸は伝染病の予防と治療に積極的な役割を果たしている。中国の鍼灸治療は突然現われたCOVID-19に直面して、予防とコントロールに積極的に参加し、良好な結果を得ている。

COVID-19に対する理解を深め、鍼灸治療による臨床経験を蓄積してきたことから、国家衛生健康委員会弁公庁と国家中医薬管理局弁公室が発行した「COVID-19の診療方案(試行第6版)」と「COVID-19の回復期における中医学的リハビリテーションの提案(試行版)」に従い、我々は、鍼灸の実施と在宅患者への指導に携わる医療従事者向けに「COVID-19のための鍼灸介入ガイドライン(第2版)」を作成した。

Ⅰ.鍼灸介入の原理

ⅰ.疫病の流行中、鍼灸介入は、全体の状況にあわせて、あらゆるレベルの医療機関の指導の下、組織的に実施する。鍼灸治療期間においては、隔離・消毒の要件を厳格に遵守した上で施術する。確定例と回復例の鍼灸治療では、複数の患者を同室で治療することができるが、疑い例では個室で治療する。呼吸補助による酸素療法中は、安全が保障される状況下において灸法を使用する。

ⅱ.COVID-19に対する中医学の臨床診断、病期分類、分類、症候群の鑑別は、国家衛生健康委員会弁公庁と国家中医薬管理局弁公室が発行したCOVID-19の診療方案に従う。同時に、鍼灸の特徴を十分に考慮して、鍼灸の介入をより適切なものとする。COVID-19は「五疫」の1つであり、広く感染しやすい。「(五疫は)みな感染しやすく、年齢に関係なく、症状も似ている」(訳注:『黄帝内経素問』遺篇・刺法論)。疫病は口や鼻から人体に入り、その多くはまず肺、次に脾、胃、大腸に侵入する。病変は比較的軽度であるが、ごく一部は心包、肝、腎に逆伝して重症化する。疾患は急速に変化し、明確な核心となる病態と症候群の進展がある。「経脈は、内は臓腑に、外はツボに連絡する」ルートによって、鍼灸は身体のツボを刺激し、経絡を通じて病所を直接攻め、臓腑の経気を刺激強化して、侵入する疫病の邪気を潰滅して分離・駆除し、正常に戻す。同時に鍼灸治療は気を刺激して、内臓の自己防衛を改善し、疫病によって引き起こされる臓腑の損傷を軽減する。

ⅲ.鍼灸介入は、病態の進展に応じて、医学観察期、臨床治療期、回復期の3つの病期に分けて行う。治療は、臓腑と経脈の弁証による鑑別を通じ、主穴を中心に、臨床症状に応じて適切に穴を増減し、「取穴は少なく精選するのがよい」の原則を尊重して行う。鍼灸施術は、便利、単純、安全、有効の原則に基づき、特定の条件に応じて適切なものを選ぶ。適切な条件を作成し、すべての臨床病期で鍼灸の役割を果たすように努める。鍼灸は、臨床治療期において生薬と併用して、相乗効果的役割を果たすことができる。回復している患者の治療は、鍼灸に最大限の中心的役割が与えられるべきである。我々は、COVID-19に対して、鍼灸を主体としたリハビリテーションクリニックを新たに設立することを推奨した。

ⅳ.鍼灸のツボと方法の選択は、古典や現代の臨床・基礎研究のエビデンスに基づき、神経性調節による肺機能の改善、自然免疫の制御、抗炎症・炎症促進性の要素、コリン作動性抗炎症経路の活性化、呼吸器系の制御、肺炎による損傷の克服に関する鍼灸の先行研究で示された研究成果を統合している。

ⅴ.鍼灸師の指導の下、患者はインターネット、携帯端末及び関連アプリ、WeChatなどを利用して、灸、(訳注:薬物の)ツボへの塗布(療法)、ツボマッサージ等を患者自身あるいは器具を用いて行うことで、補助的疾患治療を成し遂げ、心身のリハビリテーションを促進することを推奨される。医師と患者のコミュニケーション、経過観察、および診断・治療データのタイムリーかつ完全な収集による総合的な分析に注意を払う。

Ⅱ.鍼灸介入の方法

ⅰ.医学観察期の鍼灸介入(疑い例)
【目的】
正気および肺と脾の機能を刺激し、疫病の邪気を打ちのめして分離し、取り除き、臓器の邪気に対する抵抗力を増強する。
【主穴】
(1) 風門(BL12)、肺兪(BL13)、脾兪(BL20)
(2) 合谷(LI4)、曲池(LI11)、尺沢(LU5)、魚際(LU10)
(3) 気海(CV6)、足三里(ST36)、三陰交(SP6)
 治療ごとに、各群の中から1~2穴を選択する。
【配穴】
●発熱、喉の乾き、乾性咳が組み合わさった症状は、大椎(GV14)、天突(CV22)、孔最(LU6)。
●悪心嘔吐、軟便、舌の胖大と膩苔、濡脈が組み合わさった症状は、中脘(CV12)、天枢(ST25)、豊隆(ST40)。
●疲労感、脱力感、食欲不振が組み合わさった症状は、中脘(CV12)、臍の周りの4穴(臍から上下左右に1寸離れた場所)、脾兪(BL20)。
●透明な鼻水、肩と背部の痛み、淡舌と白苔、緩脈が組み合わさった症状は、天柱(BL10)、風門(BL12)、大椎(GV14)。

ⅱ.臨床治療期の鍼灸介入(確定例)
【目的】

肺と脾の正気を刺激し、臓器を保護し、損傷を減らし、病原の邪気を駆除し、「土を培い、金を生む(訳注:脾と肺を補益する)」。疾患の勢いを停め、気分を軽くし、病邪に打ち勝つ確信を強くする。
【主穴】
(1) 合谷(LI4)、太衝(LR3)、天突(CV22)、尺沢(LU5)、孔最(LU6)、足三里(ST36)、三陰交(SP6)
(2) 大杼(BL11)、風門(BL12)、肺兪(BL13)、心兪(BL15)、膈兪(BL17)
(3) 中府(LU1)、膻中(CV17)、気海(CV6)、関元(CV4)、中脘(CV12)
 軽症例と一般症例の治療には、その都度、(1)と(2)の群から2~3の主穴を選択し、重症例の治療には(3)の群から2~3の主穴を選択する。
【配穴】
●長時間の発熱を伴う症状は、大椎(GV14)、曲池(LI11)、または(訳注:奇穴の)十宣(訳注:Ex-UE11)と耳尖(訳注:Ex-HN6)からの瀉血。
●胸部絞扼感、息切れを伴う症状は、内関(PC6)、列欠(LU7)、または巨闕(CV14)、期門(LR14)、照海(KI6)。
●痰を伴う咳の症状は、列欠(LU7)、豊隆(ST40)、定喘(Ex-B1)。
●下痢、軟便を伴う症状は、天枢(ST25)、上巨虚(ST37)。
●粘り気のある痰や黄色の痰、便秘を伴う咳の症状は、天突(CV22)、支溝(TE6)、天枢(ST25)、豊隆(ST40)。
●微熱、気づかない熱、または平熱、嘔吐、軟便、紅舌または淡紅舌、白苔または白膩苔が組み合わさった症状は、肺兪(BL13)、天枢(ST25)、腹結(SP14)、内関(PC6)。

ⅲ.回復期の鍼灸介入
【目的】

残留ウイルスを除去し、生命力を回復し、臓器の修復を促進し、肺と脾の機能を回復させる。
【主穴】
内関(PC6)、足三里(ST36)、中脘(CV12)、天枢(ST25)、気海(CV6)。

1.肺脾気虚
●息切れ、疲労感、食欲不振、嘔吐、胃膨満、排便する力の不足、残余感のある軟便、淡胖舌と白膩苔の症状。胸部絞扼感、息切れなどの明らかな肺の症状がある患者には、膻中(CV17)、肺兪(BL13)、中府(LU1)。
●食欲不振や下痢などの明らかな脾と胃の症状を持つ患者には、上脘(CV13)、陰陵泉(SP9)。

2.気陰両虚(訳注:気虚と陰虚が同時に見られる)
●衰弱、口腔内の乾燥、喉の乾き=口渇、動悸、多汗、食欲減退、低熱または熱が無い、少しの痰を伴う乾いた咳、少ない唾液と乾舌、細脈または虚脈の症状。明らかな衰弱と息切れのある患者には、膻中(CV17)、神闕(CV8)。
●口腔内の乾燥と喉の渇きが明らかな患者には、太渓(KI3)、陽池(TE4)。
●明らかに動悸がある人は、心兪(BL15)、厥陰兪(BL14)。
●多汗の患者には、合谷(LI4)、復溜(KI7)、足三里(ST36)。
●不眠症の患者には、神門(HT7)、印堂(GV29)、安眠(Ex)、湧泉(KI1)。

3.肺気脾気の不足、経絡を遮断する痰の停滞
●胸部絞扼感、息切れ、会話の嫌気、疲労感、動くときの発汗、痰を伴う咳、痰が詰まる、鱗状の乾燥肌、精神的疲労感、食欲不振などの症状は、肺兪(BL13)、脾兪(BL20)、心兪(BL15)、膈兪(BL17)、腎兪(BL23)、中府(LU1)、膻中(CV17)。
●痰が詰まっている患者には、豊隆(ST40)、定喘(Ex-B1)。

鍼灸の施術
実施環境や管理要件に応じて、適宜選択する。

上記3つの病期において、鍼のみを使用するか、灸のみを使用するか、あるいは両方を組み合わせて使用するか、あるいはツボへの(薬物の)塗布、耳鍼、ツボ注射、かっさ、小児マッサージ、指圧などと組み合わせるかは、状況に応じた選択が推奨される。鍼は平補平瀉法で操作する。鍼は各ツボに20~30分置鍼、灸は各ツボに10~15分施術する。治療は1日1回とする。具体的な操作方法については、国が定めた「鍼灸技術操作規範」の基準や臨床経験を参考にする。

Ⅲ.医師の指導の下に行う在宅の鍼灸介入
COVID-19の流行を予防・制御するために、外出を減らし、交差感染を回避し、感染源を遮断し、安全性を確保するとともに、自宅隔離の患者や退院した患者には、専門家の指導の下、オンライン診療・指導、科学の普及・教育により鍼灸介入を行うことができる。

灸治療

足三里(ST36)、内関(PC6)、合谷(LI4)、気海(CV6)、関元(CV4)、三陰交(SP6)への患者自らの灸。1穴の灸の所要時間は約10分。

塗布治療
灸熱貼(温感の灸ペースト)や代温灸膏(温感の灸クリーム)を足三里(ST36)、内関(PC6)、気海(CV6)、関元(CV4)、肺兪(BL13)、風門(BL12)、脾兪(BL20)、大椎(GV14)などのツボに塗る。

経絡マッサージ
上肢の肺経と心経、膝下の脾経と胃経のツボに対して、点法(指圧)・揉法・按法(圧迫)あるいは揉按法・拍打法・叩打法を用いる。1回の施術時間は15~20分。施術部位に腫れぼったい感覚があるのが適切となる。

伝統的気功法
自分の回復状況に応じて、易筋経、太極拳、八段錦、五禽戯などの適切な伝統的気功法を選択する。1日1回、1回15~30分程度の練習を行う。

精神的健康
自分の感情を調整する。耳ツボ、灸、マッサージ、薬膳、ハーブティー、薬湯、音楽などを併用して、心身をリラックスしたり、不安を解消したり、睡眠を助けたりすることができる。

足湯
風邪や熱邪を払う働きのある漢方薬を選び、邪気を排除する。荊芥、艾葉、薄荷、魚腥草、大青葉、佩蘭、石菖蒲、辣蓼草、鬱金、丁香をそれぞれ15g、さらに氷片(竜脳・ボルネオール)3gを加えて煎じ薬を作る。煎じ薬を足湯に注ぎ、ぬるま湯を加え、38~45℃くらいまで冷めるまで待ち、30分ほど浸す。

このガイドラインは、中国鍼灸学会の専門家グループによって策定されたものである。

顧   問:石学敏、仝小林、孫国傑
専家組組長:劉保延、王華
専家組成員:喩暁春、呉煥淦、高樹中、王麟鵬、方剣橋、余曙光、梁繁栄、冀来喜、景向紅、周仲瑜、馬駿、常小栄、章薇、楊駿、陳日新、趙吉平、趙宏、趙百孝、王富春、梁鳳霞、李暁東、楊毅、劉煒宏、文碧玲


[監訳:荒川緑氏(学校法人 素霊学園 東洋鍼灸専門学校 図書館長)]
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