「医道の日本」プレイバック! 第9回 倉島宗二「針灸臨床55年の経験から」(1987年)
創刊より80年以上、通巻922号を数える中から、特に読者の議論を呼び起こした企画、時代を映し出した企画を振り返ります。
倉島宗二「針灸臨床55年の経験から」(1987年)
昭和の名鍼灸師、倉島宗二(1911‐1995)。
鍼灸に関する多彩な執筆と、聴くものを魅了する講演で鍼灸界にファンが多かった倉島だが、代田文誌門下の俊英で、1977年には代田賞創設にもかかわったことからも、そのベースが日々の臨床にあることはよくわかる。
その臨床経験は55年以上であり、患者の延人数は53万人以上、疾病の種類は650を超えているというから驚きだ。
そんな倉島が自らの治療経験を振り返り、各疾病における鍼灸の適応・不適応をExcellent(著効)、Good(有効)、Fair(効・無効不定)、Poor(乏しい・貧弱)の4段階に分類したのが、「針灸臨床55年の経験から」(1987年7月号掲載)である。
倉島はこの中で、
「もとより常識的に針灸不適応と考えられるような疾患でも、針灸施術によって、意外な好成績を収める症例もあるが、反対に治癒確実の見込みで治療して、結果が面白くないという症例もある。治療して見なければ判らないということが多い」
と述べ、657病種中、93種をExcellent、 180種をGood 、189種をFair、 195種をPoorとしている。たとえば小児疾患では喘息はExcellent、疳の虫はGood、アデノイドはFair、アトピー性皮膚炎はPoorと いった具合だ。
これらは現在、全日本鍼灸学会等で発表されている適応・不適応の考え方と異なるかもしれない。もちろん倉島本人も「個人の経験」と断っている。
しかし、鍼灸は経験医学的な側面があり、先人の症例や治験に学ぶべきことは多いはずだ。倉島は本稿の中で次のように記している。
「針灸治療には奇策もなく、奇道もなく、したがって奇跡もない。
(中略)ほんの少し、自然治癒力を亢進させるだけでも、それを続けるならば、結果は霄壌(天と地)の差となる。生と死の差が生じる。
針灸治療とは、本質的には、そういうものであろうと理解している」
現在は鍼灸治療のガイドラインが求められている時代である。ぜひ、倉島のことばを参考にしていただきたい。
※本記事は、医道の日本社のWebサイトで2012年9月10日に公開されたものを元に作成しております。
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