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<論文>行動経済学で高齢者の糖尿病管理を"賢く"する

Implementation of a Behavioral Economics Electronic Health Record (BE-EHR) Module to Reduce Overtreatment of Diabetes in Older Adults
J Gen Intern Med. 2020 Sep 3.
doi: 10.1007/s11606-020-06119-z.

背景
集中的な血糖コントロールは有用性が不明瞭であり、高齢の糖尿病患者にとってはリスクが高い。米国老年医学会(AGS)のChoosing Wisely(CW)ガイドラインでは、2型糖尿病の高齢者に対して、より積極的でない血糖値目標と薬物療法の減量を推奨している。一方、行動経済学(BE)アプローチは、変化しにくい行動に影響を与えることが期待されており、これまでの研究では、ガイドラインのアドヒアランスを促進するために電子カルテ(EHR)技術を使用することの利点が示されている。

目的
本研究は、高齢者の適切な糖尿病管理を促進するために、電子カルテ技術を用いた行動経済学を活用した介入を開発し、パイロットテストを行うことを目的とした。

研究計画
2018年7月12日から2019年10月31日までの間、ニューヨーク大学ランゴーンヘルス(NYULH)の5つのクリニックで行動経済学に発想を得たナッジを様々なタイミングで配信するための、NYULHの電子カルテとEpicシステム内のパイロット研究。

参加者
NYULHシステム内の5つの診療所の臨床医で、患者は2型糖尿病の高齢者(76歳以上)であった。

介入
6つのナッジからなるBE-EHRモジュールは、一連のデザインワークショップ、インタビュー、ユーザーテストセッション、診療所訪問を経て開発された。ナッジで利用されたBEの原則には、フレーミング、社会的規範化、説明責任のある正当化、デフォルト、アファメーション、ゲーミフィケーションなどがあった。

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主な測定項目
患者レベルのChoosing Wiselyのコンプライアンス。

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主な結果
CWコンプライアンスは、ベースライン時の16週間隔から介入後の16週間隔で5.1%増加した。2018年2月14日から6月5日まで(ヴァンガードクリニックでの最初のナッジのローンチ前)1278人の患者のCWコンプライアンスは平均値(95%CI)16.1%(14.1-18.1)であった。2019年7月3日から10月22日まで(5つのクリニックすべてでのBE-EHRモジュールのローンチ後)680人の患者のCWコンプライアンスは21.2%(18.1-24.3)であった。

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結論
BE-EHRモジュールは、AGS CWガイドラインを推進し、高齢者の糖尿病管理を改善するための有望性を示している。無作為化比較試験では、66のNYULH診療所での介入の有効性を検証する予定である。


<感想>
最近流行りの行動経済学を取り入れた研究ですね。Choosing Wiselyのコンプライアンスを測定項目としたところにもセンスを感じます。パイロット研究のようなので,正式な結果がどうなるのか楽しみです。



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