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何もない街から見えてきたもの。山田卓哉が演出する、名古屋という地域。

「変わった人が多い」と評判の、IDENTITY名古屋のインターン生。もちろん、社会人メンバーも例外ではない。
私は、物心ついた頃から名古屋の文化に触れて、遊び場にしていた。それなりに名古屋周辺のことはよくわかっているつもりでいた。
社会人メンバーの1人である山田卓哉(ヤマダ タクヤ)のフィルターを通して、名古屋という地域を感じるまでは。

「ヤマタク」という愛称で親しまれ、穏やかな笑顔で仕事をこなす彼も、どこか只者ではない雰囲気を感じた。

インタビュー前からあれこれと想像を膨らませて、今回のインタビューに望んだ。

profileー山田卓哉(やまだ たくや)
1990年生まれ、北海道紋別郡遠軽町出身。弘前大学卒業後、大手企業に就職。異動の関係で居住を名古屋に移す。現在はフリーランスで様々なイベントの企画・運営・代行に携わる傍ら、NPO法人大ナゴヤ大学学長を務める。最近では、蒲郡で行われた野外音楽フェス「森道市場」で会場を運営するボランティアスタッフの取りまとめや「OASIS」を企画・運営。IDENTITY名古屋では、イベントの企画や運営に携わり、「ヤマタク」という愛称で親しまれている。

ー今回は初めての社会人インタビューとなるのですが、基本リモートなのででお会いする機会がなく、楽しみにしておりました!よろしくお願いします。まず、簡単にヤマタクさんの自己紹介をお願いします。

山田卓哉(以下:山田):はい。出身は北海道の遠軽町です。大学は青森県弘前大学で、国際協力を研究していました。社会人になって、東京の企業に就職した後に、名古屋に異動になりました。名古屋で友達作りをしようと思って、いろんな活動をして2017年フリーランスになりました。

ーなるほど。ヤマタクさんは色々な活動をされているイメージがあるのですが、していることを一言で表すと?

山田:わかりやすく言うならイベント屋さん(笑)。本当は発信する側になりたかったけど、文章を書くのが苦手なので、「場作り」というかたちで伝えたい物事をダイレクトに人に伝えていくということをしたかった。それをできる手段が「イベント」で。

イベントやってるっていうと大学生のサークルみたいだけど(笑)。

青森という地域で見つけた、今の原点

大学時代、友達づくりのために様々な活動をする。その一つがフリーペーパーだった

ー大学時代からやりたいことっていうのはあったんですか?
山田:実はあんまりやりたいことはなくて。本当は理系で進学しようと思っていたくらい、化学と物理がめちゃくちゃ得意だったんです。文系進学なのに、センターで力試しのために2つ受験したくらい。

でも、「大学は好きなことを勉強する場所だよ」と高校の先生が言ってくれて、好きなことについて考えると、今まで部活と勉強しかしてこなかったことがわかる。いろいろ考えた結果、「でかいことを勉強したい」と思って、世界のことに興味を持ったので、国際系の学部に進学しました。

ー実際、やりたいことが見つかったのはいつだったんですか?

山田:いまだに何がやりたいことかはわかってないんだけど、今の方向性になったのは大学2年生、19歳の年。フリーペーパーを作ったり、ビジコンを見に行ったり、学生団体の活動に飛び込んでいったりとか、いろんなことをするうちに、今までしていた国際の研究と、自分が活動している一番身近な地域のことが似ていることに気づいて。

みんなが世界に行く中で、自分はお金ないし地方でいいかなあって思って、気づいたら地域のことをやる人になってた。

その延長線で、19歳のときにやり始めたことが、やっと仕事になってきているかなあ。

ーそれは青森の地域で培ったコミュニティのおかげなんですね。

山田:高校生までは芸術とかに興味なかったけど、青森は奈良美智(※1)の出身地だったり、太宰治の出身地だったりして、芸術に触れる機会が多かった。あと弘前市って意外とフランス語を街で見かける機会があって 、リーズナブルにフレンチが食べれたりとか。喫茶店も町の規模の割りに多い。

文化的なことに触れて、じぶんの今までの社会の構図と違ったこととか、知らなかったことに触れていった先に、フリーペーパー作りをしてみたいと思った。

(※1)奈良美智 青森県弘前市出身の画家。愛知県立大学美術学部卒。

ーなるほど、フリーペーパーではどんな活動をしていたんですか?

山田:知り合いを通じて紹介してもらったいいバーとか、カフェを知って。僕の周りの大学生はあまり知らないところを知ってもらえたら面白いかなあ、と思ってフリーペーパーを作った。

あと、すごい田舎から出てきたから、友達づくりのためにいろんな活動をしてた。スナップ写真をとったり、コミュニケーションをとる言い訳をつくっていろんなことをしてた。

東京を目指した、就職活動

就職活動に’’ハマって’’のめり込む。しかし、第一志望の会社は内定をもらえなかった

ー就職は東京に行きたいと思ってたんですよね?

山田:うん。3年生の後半で就活をはじめたんだけど、いろんな活動をして就活しなかったからゼミの先生に怒られて。でも就活は楽しかった。だんだん「何をしゃべったら面接官にウケるか」みたいなことに重点をおいて就活にのめりこんでいった。就活フリークみたいな(笑)。

就活は東京でシェアハウスをしながら、3ヶ月ぐらい、美術館にいったり、みんなでワインをあけながらエントリーシートや履歴書をかいたり、楽しくしてましたね。

ー結局就職は何を決め手に?

山田:すごく入りたかったところに落ちちゃって。最終面接で「落ちたな」と思い、「何がダメなんですか?」って面接官に聞いたら、「山田君はまだ社会のことをわかってない」と言われた。その会社はソーシャルベンチャーって分類だったと思うんですけど、落ちたことでベンチャーは向いてないのかなあって思った。

とりあえず大手の会社も受けて、合いそうなところを選んで「働く」っていうことを学んでいくことになったかな。

山田卓哉と、名古屋との出会い

最初は、名古屋が嫌いだった

ー実際働いてみてどうでしたか?

山田:あんまり働くっていうことはよくわかんなかった(笑)。社会人なりたてって、やりたいことにあふれているんだけど、だんだん日常の忙しさにみんな疲弊していく。そうだよなー会社員になるってそういうことだよなーと感じた。

ーそのときはもう名古屋にいたんですよね。そのときの名古屋の印象はどうでしたか?

山田:来てすぐのときは、めっちゃ都会だと思った。街は仙台や札幌、東京しか知らなかったから。営業だったんだけど、いろんな企業を訪問して気づいたことは、東京だと合理的に価格とかサービス内容で「使ってみようか」ってなるんだけど、名古屋は「長い付き合いがあるんで!」と断られ、なんでだろう!?って思った(笑)。

最初は名古屋の方言もいやな言葉に聞こえて、名古屋は嫌いだったかな(笑)。いじわるなひとしかいないと思って。

ー名古屋が嫌いだったんですか!?なんだか意外な気がします。

山田:社会人1年目が終わるころに、大ナゴヤ大学に遊びに行くようになる。そこにいってから結構見え方が変わって、名古屋の人って何度かあってコミュニケーションさえすればすごくオープンになるんだよね。突然ファミリーみたいな。

あれ?名古屋の人ってとっても良い人たちなのでは?と180度印象が変わった。

ー退職してからも名古屋にとどまろうと思った理由は?

東京の中の1人になるよりも、名古屋の中の1人になったほうが自分に価値があると思ったから。

ー名古屋はヤマタクさんが輝ける場所になっていったんですね。ヤマタクさんにとっての名古屋の魅力は、なんだと思いますか?

山田:名古屋は誰にも見られてない未開の地だと思っていて。東京はみんな行きたがるし、関西は第2の都市としてみんな開発したがる。名古屋は名古屋飛ばしと言われてみんな残念がっているけど、そこにチャンスがあるのでは?と思ってる。

ー観光スポットはそんなにないですもんね。

山田:そうだね。派手な観光スポットはないけど、街をぶらっと歩いているときにフラっと入るにはとても居心地がいいところが多い。森道市場にかかわったり、大ナゴヤ大学っていう地域のことを発信する組織に属していて、気づいた部分。面白いネタはあるのに誰も気づいてない。そんなところに「堀りがい」があると思った。

いい人やいい場所、いいストーリーっていうのは名古屋に限らずいっぱいあるんだけど、その伝え手はなかなかいない。すっごい田舎だと誰かがやってくれるんだけど。名古屋ぐらいの規模になると、ある程度潤っているからなかなかいない。でもそれは価値があるから仕事になっているし、かゆいとこに手が届いてるサービスになっているのかな、という感じ。見られてない「いいこと・いいもの」を伝えていきたいかな。

山田卓哉とIDENTITY

ーIDENTITY名古屋と出会ったきっかけは?
山田:ジュンヤさん(弊社共同代表)をずっとtwitterでチェックしていて、3年前くらいに名古屋でお世話になっている方を通じて、碇さん(弊社共同代表)と出会いました。フリーランスになったタイミングで、「暇だったらこれやってよ」みたいな感じで仕事をもらったのが、1年前。

ーIDENTITYが出来たばかりの頃から知ってらっしゃるんですね。IDENTITY名古屋にどんな印象を持ちましたか?

山田:地域の人のためのウェブメディアがある街っていい街だと思っていて。IDENTITYは広く興味のある人たちに受け入れられて、地域の人が欲しい情報を載せてるいいメディアだと思った。

ーIDENTITYのインターンズの印象は?

山田:めちゃくちゃ優秀。大人顔負けに仕事していると感じてます。

ーもしヤマタクさんがIDENTITYのインターンだったら何をしているとおもいますか?

山田:ライターを頑張ってみたかったかな。最初に仕事をもらった時、ライターも少しやって見たけど、時間がすごくかかるし、向いてないと思った。逆に書くことによって小山さん(弊社編集者)の仕事が増えちゃう(笑)。

ーもしインターンだったら、ライターとして活躍する世界線のヤマタクさんが見れたかもしれないですね!インターンに期待することはありますか?

山田:実験的な試みをたくさんやっていきたいよね。「こんな企画したい」って思ったらすぐにできる環境だから、どんどんやって欲しい。IDENTITYで遊んで欲しい。こんなこと言ったら碇さんになんて言われるかな(笑)

ー今後やっていきたいことがあれば教えてください。

山田:日常の楽しみ方を提供し続けたい。名古屋にない視点や文化を作っていくこともしたい。そうすることでいろんな人の可能性も開けると思う。

表舞台に立つ人を増やしたいかな。元々はすごい田舎の出身だから、そこを飛び出していろんな人に出会って、なんでもできるようになった気がして「謎の万能感」を感じたりもする。その万能感は気のせいなんだけどね。その「気のせい」をもっと周りの人に与えたい。

ーこれから入って来るインターン生にメッセージをお願いします!それか、どんな人にきて欲しい、みたいなものでも。

山田:え、逆にどんな人にきて欲しい?(笑)

ー私はエモい女子大生がいいです。(ゆいにしおインタビュー参照)

山田:確かに(笑)。でも、IDENTITYをうまく使える人だったら、インターンとしてきた価値があるんじゃないかな。今自分がやっていることを掛け合わせるのもいいし。「何かやってます!」「何かやりたいです!」って人はぜひきてください!


今回のインタビューは、名古屋は伏見のLAMP LIGHT BOOKS HOTELカフェスペースで行いました!

出身の遠軽町は、「何もなかった」と彼は語る。「何もなかった」場所から「何かはあるけど未開発」な名古屋を、彼は盛り上げ続けている。

表舞台に立つというよりは、場を提供して盛り上げる裏方のような仕事をする彼を、私は演出家のように感じた。彼の演出する名古屋は、これからどうなっていくのだろう。

名古屋の良さを、あらゆる方向で、時には思いがけない視点から発掘し、そうして新しい形の名古屋が生まれていく。新しい名古屋をクリエイトする山田卓哉に、今後も目が離せない。

文:ゆいにしお

【お知らせ】株式会社IDENTITYは、メディアの運営に携わりたいインターン生を募集しています。少しでも興味のあるかたは、こちらからお問い合わせください。ご応募お待ちしています!