GIGAスクールが始まって気づくあれこれ(その2)

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その1では,子供達とタブレット端末を出合わせるときの気づきについてや,ツールとアプリの話を書いた。

 今回は,ツールとそのルールについてもう少し掘り下げてみる。

されどツール 毎日使うのだ!

 大人だって仕事ではワードやエクセルを使うだろうから,いわゆるこれがツール。小学生がそれを毎日使うかということを考えたら,それはどうだろう。大人がこれらのツールを使い始めたとき,一体どんな順番だったかを改めて考えてみよう。
 結論は簡単である。何も表すモノがない,あるいは書くことがない,計算することがないというような状態で,ワードやエクセルを習ったところで,おそらく便利とは思わない。むしろ,何かを書きたい,印刷したい,計算したい・・など,やりたいことがそこにあるはずである。当たり前だが,やりたいことがあることが先なのである。
 だから,子供達にGIGA端末を使って,ツールの利用法ばかりを説明するような事はあまりやってほしくない。やりたいこと,やらせたいことと合わせて,ツールの利用法を伝えると,あとは子供達が自分で工夫しながらやっていくものである。また,発見した使い方を,口コミで友達に伝えていくものである。

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 そのときに,「まだ教えてないのに勝手にそんなことをして」ということのないようにしないといけない。これは二つの考え方がある。
 一つは,勝手にいろいろななことをして,動かなくなったり,次に行う教材が消えたりした場合。
 もう一つは,教師のカリキュラムとして,こういう順番に指導していきたいと考えていたところを,子供達の一部に先を越されてしまったという場合。
 後者は,教師が子供達よりももっと詳しく知っていて,それを小出しにするといった,先生がクラスの中で最も「もの知り」という権威主義的な発想だから,もうそれは通用しない。子どもたち自身が発見したこと,先生より知っていることを,どんどん友達に伝えていっていいんだよという雰囲気を作ることが,学び合いの雰囲気を作るのだと思う。
 前者の場合は,指導の順番が必要である。まずは,してはいけないことや,変更してはいけないところを,最初にきちんと指導しておくことと,それを守らなければ,自己責任だというルールを決めることである。ただし,誰しもミスはあるのだから,意図せずさわってしまったこともあるから,そのときは,元に戻せるというような安心感を持たせる。

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 絶対だめなことは,意図的に,他人のデータや,他人が書き込むべき場所へのいたずらであり,そういうことが,デジタル社会を形づくる公共のルール(デジタルシティズンシップ)の逸脱であるということを意識した指導にする必要がある。
 そして,元に戻せるとか,致命的な部分にはさわれなくするといった保険のような仕組みをGIGA端末には,用意しないといけない。これが,教育用たる所以である。特に,極端に失敗を恐れる子供達も現に存在する。自分が失敗することが許せないという子供にとっては,失敗を恐れるが故に,思い切った操作を行わず,発展的な発想につながりにくい。これはプログラミングでも同様の状況が起こる。失敗しても,元に戻るというのもデジタルの特性である。

まさにトレードオフとはこのこと

 こういった仕組みは,どういう形で子供達に用意すべきか,これが一番頭をひねる部分である。より安全な仕組みに使用とすればするほど,端末でできる事は減ってくる。できる事が減ってくると,スキルの高い子にとっては,「何もできないから,面白くない。」となり,裏技探しか,ちょっとしたいたずらに走るかもしれない。
 スキルの高さと,制限をかけることはシーソーのようなもので,安全策としての制限は必要かも知れないが,設定変更やアクセスできるサイトの制限は,スキルが高くなった子供達にとっては,邪魔な存在となる。

 そこで,一律の制限を子供達に加えることをやめ,利用者本人のスキルに合わせて,制限を段階的に外していくといった取り組みを行っている学校が埼玉県のさとえ学園小学校である。簡単に言うと,操作スキルのレベルによって,できる事が増えてくるといったものである。いわば,世の中の資格制度に似た制度である。古くはアマチュア無線技士の級に応じて,発信出力が大きくできたり,船舶免許の級によって,陸から遠く離れた海を航海できたりすることと同じである。 
 ※さとえ学園の実践については,ICT教育ニュースでも取り上げられています。 
 
 具体的にはスキルレベルが低い場合は,指定されたアプリしか使えない,ホワイトリストのインターネットにしかアクセスできないなどからはじまる。その後,レベルが上がってくると,アプリの種類が増えたり,自分でインストールできたりする。また,ブラウザのフィルタリングも緩くなり,表示されている内容を自分で判断して,見ないようにするなどの,モラル的行動がとれることも求められる。
 そして,レベルが高いにもかかわらず,モラル的に下がってきたことが明らかになってくると,レベルを下げるというようにしているのだ。

 これらの仕組みは,各端末の機能制限の管理の仕組みと,校内での各レベルの設定と絡めて行うため,当初の設計が重要となる。各OSのMDMには,これらの仕組みを統括して設定できる仕組みがあると思われるので,それらの運用を各校のOSによって,利用可能かどうかの確認が必要である。

その3につづく

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