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付属資料2 子どもと若者のためのサービス 「私はどうなるの?」両親離別後の家族への支援を見詰め直す

私はどうなるの?
両親別離後の家族への支援を見詰め直す
家族問題解決グループの報告書
(私法作業部会のサブグループ)
2020年11月12日

ジュディス・ティムズ、ヤン・ユーイング、
エリザベス・コー、メアリー・マリン
子どものための勧告事項の要約

中核となる勧告事項

1   UNCRC第12条に準拠した以下の図1のマトリックスに基づき、親が別離している子どもや若者のための情報、相談、支援、代理などの直接支援サービスの枠組みを確立すること。
加えて、以下を勧告した。

2   暴力的な家庭で生活している、または生活していた子どもたちの声を聞き、その子どもの福祉を守るための取決めを緊急に見直すこと。(1.5節)

3   メディエイターや事務弁護士が主導するプロセスを含む、親同士の問題を解決するための全プロセスにおいて、10歳以上の全ての子どもと若者に、彼らの声を直接聞く機会を与えることを前提にすべきである。(2.3節)

4   事務弁護士による交渉、共同法、仲裁などのプロセスを実施する者は、適切なトレーニングを受けた専門家によって、子どもの声を聞くためのプロセスを確実に提供しなければならない(合意された禁忌がある場合を除く)。申し出のあった各事例に関しては、申し出が取り上げられたか否か、取り上げられなかった場合は辞退した理由(判明している場合)を年間統計として維持することを要件にすべきである。(2.4節)

5   メディエイターは、毎年実施される子ども参加型メディエーション(CIM)の件数に関する年間統計を家事メディエーション評議会(FMC)に提出するよう義務付けられるべきである。10歳未満の子どもを含む事件で、メディエイターがCIMは適切でないと判断した場合、メディエイターはその理由を記録すべきである。メディエイターがCIMを提案したが、実行されなかった場合、母親、父親、または子どもが辞退したかどうかを記録するべきである。(2.5節)

6   司法省(MoJ)が「私法事件のレビューにおける子どもと親への危害のリスク評価」(通称、ハーム・レポート)で勧告したように、改正された子どもの取決めプログラムの念入りな作りこみと試験運用の一環として、子どもから意見を聴取し、弁護し、代理を務め、支援するための幅広い選択肢をより十分に探究すること。(2.6節)

7   公的資金を投入した子ども参加型メディエーションのために、適切な新たな資金レベルを提供すべく、資金調達メカニズムを早急に整備すべきである。(2.8節)

8   「別離家庭のハブ」が設立されるまでの間、暫定処置として「共同子育てのハブ」に、若者のための情報と支援を提供する専用の、年齢に応じたスペースを設け、これを促進するために資金を提供することを勧告する。(2.10節)

9   私たちが求める制度改革が現実のものとなるまで、私たちは、ウェールズの若者を支援するのと同等の資金と取決めをするために、専用の資金を割り当て、他部門とは完全に別扱いにすること、両親が別離しているイングランドの全ての若者の支援を監督するためにカフカスの権限を拡大することを勧告する。(2.10節)

10  1989年児童法第10条の申請許可要件は、困窮または危険にさらされている有能な子どもが自らの意思で再審を求めるルートを見出せるよう、見直され緩和されている。(2.15節)

11  2002年養子縁組および児童法第122条に付随する必要な裁判所規則を制定し、1989年児童法第8条に基づく私法上の申請が、必要に応じて子どもを個別に代理できる「特定手続」となるよう、早急に検討すること。(2.17節)

12  政府は、親同士の葛藤が子どもに与える害と、両方の親が互いに尊重し協力する行為が子どもにもたらす利益について、社会における認識を促進することを目的としたキャンペーンに資金を提供している。(3.1節)

13  両親間葛藤の継続は、「子ども時代の有害な経験」として正式に認識されている。(3.1節)

14  親同士の別離の影響を受ける子どもや若者のための法律や政策に関し、普遍的で差別のない「イギリス規格協会の認証を取得した」情報を開発し、オンラインで利用できるようにする。加えて、PSHE(Personal, Social, Health and Economic)教育の一環として学校や、子どもや若者が接するその他の場所(スポーツセンター、青少年センター、ジム、開業医、シネマコンプレックスなど)でこれらのリソースが利用できるようにする協調戦略が必要である。(5.1節)

15  2020年離婚・婚姻解消・別離法(DDSA)の施行に伴う法整備の一環として、両親が離婚または離別した子どもにリソースパックを提供すること。(6.1節)

16  DDSAとともに導入される規則には、離婚申請書に夫婦の子どもの人数と年齢を記録することを要件として含めるべきである。(6.2節)

1 政治的背景

1.1   伝統的に国家は私的な家庭生活に介入することを極端に嫌ってきたため、公法の問題と私法の問題とで子どもの声を聴くというアプローチに大きな違いが生じています。伝統的な福祉保護主義の文化が根付いているため、子どもの意見を聴くことが、子どもにとってよりよい結果をもたらすために重要な役割を果たすという理解が妨げられてきたのです。公法においては、子どもの権利と福祉が保護され、代表されるための非常に明確なプロセスが存在します。対照的に、私法にはこれに相当するプロセスが存在せず、また、使用する必要のある子どもたちが利用可能な、理解しやすい、普遍的な子ども中心の戦略や路線図も存在しません。イングランドとウェールズでは、毎年、私法上の申請の対象となる子どもの数が公法上の申請の2倍以上となっている(2019年は、それぞれ30,333人に対し83,974人)118にも拘らず、私的な事件を裁判所に持ち込む家族については殆ど知られていません。

1.2   この、他の国では認識されていない、二項対立的なアプローチの結果、私法上の手続きにおいては、子どもの保護問題と子どもの声を聴くことの両方について、明確な方針を欠いたままになっています。これは、「別離した親の情報プログラム」や「別居後の別離親」(あるいは、ウェールズでは「子どものために一緒に働く」)のような直接的なサービスは素晴らしい取組みは存在していますが、それは主に大人のためのサービスであり、子どもに確実な(明らかにされていない)利益をもたらすことが期待されていることを意味しています。

1.3   両親が別離する場合、現在の政府の政策は、子育ての取決めが常に子の最善の利益になるという前提に基づき、第一の政策目標として子育ての取決めの達成に大きく依存しています。家族の崩壊の悪影響を経験するあらゆる形態の子どもを保護するための政府の主な対応は、親が裁判所に申請するときに法定MIAMを導入することであり、これは、裁判から意見の不一致や争点を遠ざけることにつながることを期待してのことです。そのため、メディエーションサービスを拡大し、意見の相違や争点を裁判から遠ざけることに投資してきました。これは、私法上の紛争の大部分から法律扶助が撤回されたことを背景に起きています119。最近の司法省(MoJ)報告書「私法上の子どもの事件における子どもと親への危害のリスク評価、最終報告書」(MoJのハーム・レポート)の調査結果を踏まえると、現在の取決めは特に懸念されています。この報告書では、私法上の子どもの取決めやコンタクト事件の標本における家庭内暴力の申し立てや発見は49%から62%であり、私法上の事件における家庭内暴力の発生率と影響は一貫して危険なほど低く見積もられてきたことがわかりました120。メディエイターは、多様な職業的背景を持っていて、子どもと直接関わる資格や経験、リスクアセスメントを行った経験がない場合もあります。

1.4   例えば、家庭内虐待や家庭内暴力の結果として生じるかもしれない、子どもへの重大な被害や危険の特定に関し、特に懸念があります。家庭内虐待や暴力には、2002年養子縁組および児童法の第120条が示している「家庭内で暴力を目撃する」危害を含みます。同法では1989年児童法の第31条における危害の意味を改正し、「他人の虐待を見聞きすることによって被る障害」を含むようにしました。ウーマンズ・エイドの調査によると、2013年度から2014年度に家庭内暴力サービスは74,500人の女性と13,701人の子どもを支援していました121。このような子どもにとって、直接的サービスは驚くほど少なく、UNCRC第12条(訳者注:意見表明権)の意味での協議や代表を受ける機会も殆ど、あるいは全くありません。

1.5   2002年養子縁組および児童法第120条の改正にも拘らず、家族の司法専門家の間では、私法上の手続きにおいて危険にさらされている可能性のある子どもを特定するために、この法改正の可能性を探求する意欲は殆どなく、あるいは、恐らく探究する余力もなかったように思われます。改正され1989年児童法の意味するところでは、困窮している、または危険にさらされている全ての子どもが裁判手続きの対象となるわけではありません。最近の推定では、裁判所に申請する別居親の数は、およそ3分の1である122。裁判を起こさない約3分の2の親の子どもの多くが危険にさらされている可能性があるが、この「隠れた」集団のリスクは定量化が難しく、両方の親との相当程度の接触を前提とする制度的な強調によって悪化している可能性もある。私たちは、子どもの声を聴き、暴力的な家庭で生活している、あるいは生活していた子どもの福祉を守るための取決めを、緊急かつ具体的に見直すことを勧告します。

1.6   理論的には子どもの福祉が法律上最も重要ですが、実際には、元家族部部長のジェームズ・マンビー卿が指摘するように、裁判所は何が起こっているのかわざわざ考えて、殆どの場合は考えずに、真実、そして、何が子の最善の利益であるかに関する適切な評価が、両親間の敵対的なプロセスから何らかの不思議な方法で現れるという軽率な仮定で進んでいく」のです123。

1.7   親や子どもが受ける人的コストとは随分別の話になりますが、家庭崩壊が財政に与えるコストは膨大であり、納税者の負担額は年間510億ポンドと推定され、国防予算全体よりも多くなっています。この数字は10年前の370億ポンドから上昇し、税金、給付金、住宅、医療、社会保障、民事司法と刑事司法、教育などの分野にわたり、家族の分裂が納税者にもたらすコストを考慮しています124。

1.8   親が別離している若者を支援するための政策決定は、時間の経過とともに変化する家族のあり方の激変を考慮する必要があります。家族のメンバーや構成が変化し、親が新しい関係に移行するのに合わせて、子どもも適応しなければならないことが増えます。同棲カップルは、過去10年間で最も成長した家族形態です。2009年から2019年にかけて、扶養児童を持つ既婚または同性婚の数が4.8%増加したのに対し、扶養児童を持つ同棲カップルの数は4分の1以上増加しています。2019年、扶養家族のいる家庭のうち、既婚者と同性婚夫婦の家庭が61.4%を占め、次いでひとり親家庭(22.3%)、同棲カップル(16.3%)となっています125。2018年、生児出生の48.4%が婚姻外でした126。同棲の親関係の破綻率は、既婚の親関係の破綻率よりかなり高い数字です127。

1.9   両親の別離によって影響を受ける子どもの数を正確に評価することは困難です。イギリスでは毎年、扶養児童のいる家族の約2%が別離していると推定されています128。2017年には、1400万人の扶養児童が家族で生活していました129。子どもの数が家族に均等に分散していると仮定すると、イギリスでは毎年約28万人の子どもの親が別離していることになります130。親の別離の影響を受ける若者の数に関して、公式統計は殆ど存在しません。2014年子どもおよび家族法で導入された変更により、離婚するカップルは、離婚手続きの一環として子どもに関する情報を提供する必要がなくなりました。関係が破綻した扶養家族のいる同棲カップルの数は、追跡するのが難しいことで有名です。分かっていることは、以下の通りです。
  ➢子どもがいる夫婦の離婚件数に関するデータが収集された最後の年である2013年には、離婚の約半数(48%)に16歳未満の子どもが含まれていました131。その年に離婚した16歳未満の子どもの親は94,864人でした132。仮に1組あたりの子どもの数(0.83人)が時系列で変わらなかった場合、2018年に親が離婚した16歳未満の子どもの数は75,422人となります133。
  ➢2013~14年度において、16歳以下の子ども全体の29%が、実の両親の両方と暮らしていません134。
  ➢子どもが生まれたときに結婚していたカップルの12%、子どもが生まれたときに同棲していたカップルの32%が、子どもが7歳になるまでに別離期間を経験しています135。
  ➢2014年のミレニアム・コホート調査の証拠によると、14歳までに37%の子どもが父親と同じ世帯で暮らしていないことが判明しています136。

1.10  イギリスは、家庭崩壊の問題、特に子どもへの影響に関する取り組みにおいて、他の司法管轄区に遅れをとっています。歴史的に、イングランドでもウェールズでも、私法上の問題において子どもの声を聴くことに明確な公共政策の焦点が当てられてきませんでした(ウェールズにおける状況は現在いくらか改善されていますが-下記1.11節参照)。これは、公法における子どもの状況とは著しく対照的です。2011年に報告された「家族司法レビュー」では、「子どもに優しい」「子どもを包み込む」アプローチの重要性が支持されました。また、子どもの声を確実に届けるために、子どもに明確に焦点を当て、専門家への研修をより充実させることを要求しました。レビューはまた、子どもや若者は、事件のできるだけ早い段階で、彼らが望むなら彼らの見解を知らせることができる方法を用意した選択肢のメニューを提供されるべきだと提案しました137。しかし、残念ながら、その後の進展は殆どありません。

1.11  連立政府の司法および市民の自由担当閣外大臣サイモン・ヒューズ下院議員(大臣)は2014年に、私法上の手続きを含むあらゆる種類の家事事件において、10歳の子どもに発言権を与えること、そして、「子どもや若者の声が家事メディエーションのプロセスでも中心的な役割を果たすようにするにはどうしたらいいか、家事メディエーションの専門家とすぐに対話を始めること」を公約に掲げました138。2015年、「子どもの声」紛争解決諮問グループの最終報告書は、10歳以上の全ての子どもと若者が希望すれば、メディエーションを含む紛争解決過程において、彼らに直接声を聴く機会を提供すべきであるという、非法的な推定の採用を勧告しました139。更に、「公的資金を投入している子ども参加型メディエーションに適切な新たな資金水準を提供するため、資金調達メカニズムを早急に整備すべきである」と勧告しています140。2015年3月18日、大臣はこの勧告を受け入れ、こども参加型メディエーション(CIM)への資金提供に関しては確約できないものの、同年末に司法扶助庁の契約が検討される際にこの問題を検討するよう要請することを示しました141。決定的なのは、CIMには司法扶助の資金が投入されていないままであり、政府側には戦略的な発展計画がないことです。地元のメディエーションサービスは、CIMを提供するという任務を任されており、多くの場合、サービスに経済的損失をもたらしています。

私たちは上述した報告書の2つの勧告を支持します。

1.12  2004年、ウェールズ政府は、子どもや若者に関する政策立案の基礎としてUNCRCを正式に採用しました。ウェールズでは現在、政府の閣僚にUNCRCを十分に考慮するよう法律で義務づけており、遵守を確認するのは保健および社会福祉担当大臣の責任になっています。イングランドでは、「子どもの権利影響評価」が政府全体で導入されていますが、UNCRCを国内法に組み込むための法案導入を求める子どもの慈善団体142や児童委員143からの要請は、今のところ抵抗にあったままです。2015年に政府が表明した見解は、既存の法律と政策は「条約を遵守するのに十分な効力を持っている」というものでした144。

2 子どもの声を聴く

2.1   子どもの声を聴くための現在の取決めを見て、どれほど多くの子どもが両親の別離を経験し、その一方で、どれほど僅かしか子ども向けのサービスが存在していないのかという印象を最も強く受けました。この分野におけるサービス提供に進展がないこと説明するのに、サービスには歴代政府が取り組みたがらないほどの非常に多くの資源を必要とし、関係者の数が膨大であるということが、幾らか役立つかもしれません。その結果、中核として関わるべき子どもや若者の殆どが、相談される機会も、自らの生活に関する決定に関与する機会も与えられていないのです。明確に特定できる政策の枠組みがないため、一連の散発的な取り組みが行われてきました。

2.2   家庭崩壊に対する国家の介入の主要な目的の一つは、子どもへの付随的なダメージを可能な限り抑えることです。しかし、関係する子どもに対する一般的な介入の効果については、これまで限られた分析しかなされてきませんでした。子どもの希望に反して、また虐待が疑われるような状況で、接触を行うべきと判断され、危険にさらされる子どももいるでしょう145。また、友人や親戚、そして恐らくは兄弟姉妹といった、子どもにとって重要な存在であった人々との接触を失うことで、非常に不幸になる人々もいるでしょう。実際には、子どもの権利と福祉が、大人主導の間接的な課題の一部として、本人不在でも保護され得るという考え方は、根本的に間違っています。美辞麗句を並べる時代は終わりました。1989年児童法とUNCRC第12条は共に、相談される子どもの権利を尊重する一方で、意思決定を下す責任と、誤りを犯した場合の結果の両方から子どもを保護する、統合された権利と福祉の枠組みを提供しています。

2.3   私たちは、メディエーションや弁護士主導のプロセスを含む、親同士の問題を解決するための全てのプロセスにおいて、10歳以上の全ての子どもや若者に、自分の声を直接聞いてもらう機会を提供することを前提とすべきであると勧告します。私たちは、この推定の遵守を確保するために、この推定を法律で定めるべきか否かを検討するレビューを求めます。私たちは、法律で定めるべきだと考えています。

2.4   この法的推定が遵守されるようにするために、私たちは、弁護士による交渉、共同法、仲裁などのプロセスを実施する者は、適切な訓練を受けた専門家によって、子どもの声を聴くためのプロセスが子どもに提供されることを保証しなければならないことを勧告する(同意された禁忌がある場合を除く)。申し出が提供された各事件について、申し出が取り上げられたかどうか、取り上げられなかった場合はその理由(判明している場合)についての年間統計を維持することが要件とされるべきです。

2.5   年間にメディエイターに相談する若者の数のより正確に把握するために、私たちは、メディエイターが、毎年、相談に招いた子どもの数および実施したCIMの数に関する年次統計をFMCに提出することを義務付けるよう勧告します。10歳以上の子どもの事件では、メディエイターがCIMは適切でないと判断した場合、メディエイターはその理由を記録せねばなりません。メディエイターがCIMを提案したにも拘らず、実行に移されなかった場合、母親、父親、子どものいずれかが辞退したかどうかを記録せねばなりません。

2.6   MoJ「危害のリスク」レポートのパネルは、「UNCRC第12条に従い、これらの(私法上の)手続きにおいて子どもの意見を聞く機会を与えるために、より多くのことをすべきである。・・・パネルは、推奨する『子どもの取決めプログラム』の再定義は、・・・私法上の手続きにおける子どもの声を高めるための重要な枠組みを提供すると考えている。パネルは、再定義された『子どもの取決めプログラム』の精緻化と試験運用の一環として、子どもの意見聴取、擁護、代理、支援のための幅広い選択肢をより十分に検討するよう勧告する」という見解を示しました146。私たちは、この勧告を支持します。虐待が申し立てられている場合、重大な危害をうけた事件の個別の代理人を含む、若者のための個々の発言が不可欠です。フィオナ・モリソンと同僚が最近力強く主張しているように、「私たちは、子どもの擁護システムを必要としています。そのシステムは、独立した助言、継続的な支援、信頼関係、そして子どもが繰り返し研究者にその必要性を訴えている支援を保証します」147。

2.7   毎年個別の代理人を与えられる非常に少数の子どもは、2010年家事手続きに関する規則第16.4項によって提供される二次的な法律に依存しています。

2.8   労働年金省(DWP)が資金提供した「心のメディエーション」パイロット版の最近の評価では、子どもが相談を受けることの利点が確認されました148。接触や住居の取決めについて相談を受けたり、その取決めに影響を与えたりした子どもは、その取決めに対してより高い満足度を示しています。子どもに発言権を与えることは、より永続的な合意、親同士の協力関係の改善、より良い親子関係、より協力的な子育てにつながる可能性があります。メディエイターやカウンセラーに話を聞いてもらえたと感じることで、若者は力を得て、親同士の関係の崩壊にうまく対処できるようになります。適切な場合にCIMの普及を促進するために、公的資金によるCIMを提供するための資金調達メカニズムを早急に整備することを私たちは勧告します。

2.9   家庭崩壊を経験した子どもは、大まかに4つのグループ、もしくはコホートに分けられます(下図1参照)。
コホート1:国のサービスや介入を受けずに養育の取り決めに合意した両親の子ども。
コホート2:メディエーションサービスを利用する親の子ども、メディエーションプロセスの一部として相談を受けている親の子ども(子ども参加型メディエーション)。弁護士による交渉(子どもを個別に代理している可能性は極めて低い)、共同法、仲裁など、他のプロセスで相談を受ける子どもの数は不明ですが、その数は非常に少ないと思われます。
コホート3:1989年児童法第8条に基づく「法廷内紛争解決」サービスや申請に関わる親の子ども、または1989年児童法第10条⑴149に基づく申請を行うための裁判所の許可が与えられたごく少数の若者。
コホート4:2010年家事手続きに関する規則第16.4項により、訴訟手続の当事者となる可能性があるごく一部の子ども(約1%)。このような子どもは、公法上の手続きを同時に行う代理人を持つ子どもと同じように、子どもの弁護士と子どもの保護者の両方が別々に代理人を務めます。

2.10  ほぼ全てのリソースがコホート3、コホート4の比較的少数の子どもに集中しているため、親が裁判所以外の場所でどのように取決めているかについては殆どわかっていません。コホート2の子どものCIMを支援する公的資金はありません。コホート1の子どもには、情報や支援の普遍的な提供はありません。カフカス/カフカス・カムリの役割は、子どもの福祉を保護、促進することに限定されており、子どもとその家族が家族訴訟に巻き込まれた場合にのみ、情報、アドバイス、その他のサポートを提供します150。コホート1と2の子どもに対する情報、アドバイス、サポートが急務です。公的な業務における手続き前の業務へのカフカスの関与は、試験的に実施されています151。私たちは、カフカスの正式名称に含まれる支援のための「S」が、私法上の事件の事前手続きにまで及ぶべきだと考えていますが、現在カフカスとカフカス・カムリの両方が業務遂行能力の限界を超えており、資金なしにこの追加役割を引き受けることが現実的にできないことを認識しています。このことは、イギリスとウェールズの両政府が、両親が別離している全ての子どものニーズを認識し、そのニーズに対応するための協調的な政策と資金を導入する必要性に帰結します。「別離家族のハブ」が設立されるまでの間、暫定的に、「共同子育てのハブ」には、若者のための情報とサポートを提供する専用の、年齢に応じたスペースを設け、これを促進するための資金を提供することを勧告します。私たちが求める体系的な変化が現実のものとなるまで、両親と別離しているイングランドのすべての若者の支援を監督するためにカフカスの権限を拡大し、ウェールズが若者を支援するために行っているのと同等の資金と取決めを備えた、他部門とは別扱いとする専用の資金配分について検討をすることを私たちは勧告します。

2.11  この手の早期の予防的活動は、若者が両親の別離の経験から生じる気持ちを変える可能性があることとはかなり別の話になりますが、この活動が適切なケースでは裁判を回避するという政策目的の達成に役立つ可能性があります。

2.12  コホート1とコホート2の子どもの情報と支援のニーズを満たすことで、裁判に発展する事件の金銭的そして人的コストを削減することができます。本稿では、コホート1とコホート2の子どもに対する裁判外の支援とサービスを取り上げます。しかし、UNCRCの第12条に準じるサービスの枠組みを考える上で、コホート1とコホート2の子どもの幾人かは、子育ての取決め命令を見直すための裁判を受ける必要がないと考えるのは間違いであり、見直しをしないことが子どもを危険にさらしている可能性があります。1989年児童法第37条は、コホート33、コホート4の子どもに公法上の手続きと私法上の手続きの間の橋渡しをしますが、それは既存の私法上の手続きを通じてのみ利用できるルートです。

2.13  コホート1、コホート2の子どももコホート3、コホート4の子どもと同様、いったん両親が取決めに合意すると、子どもは事実上その取決めに縛られ、非常に危険な状況であることを内部告発する法的ルートを持っていません。

2.14  しかし、滅多に使われていない、あるいは停止されていると思われる2つの既存の立法措置があり、これが機能すれば、子どもの取決め命令の合意中と合意後の両方で問題を経験する可能性がある全ての子どもにとって、かなりの潜在的利益をもたらすでしょう。1つ目になりますが、理論的には、1989年児童法第10条に基づき、子どもは第8条に基づく子育ての取決め命令の変更を自ら申請する許可を得ることができます。実際には、このようなケースは非常に稀にしかなく、司法省は数字を把握していません。その理由の一つは、許可されるためのハードルが非常に高く設定されていて、申請する子どもの能力の評価だけでなく、その評価を実施する子どもの代理人弁護士の能力の評価も必要とされるからです。

2.15  私たちは、1989年児童法第10条の申請要件を見直し緩和することによって、困窮し危険に晒されている有能な子どもが、自らの意思で裁判所に再審を求めるルートを見出すことができるようにすることを勧告します。これは、子どもや若者の変化を起こす働きが欠落していることを認め、それに対処し、1989年児童法第8条子どもの取決め命令の変更を可能にする安全なルートを提供するものです。

2.16  2つ目になりますが、国会は2度にわたって、相当数の裏付けとなる証拠に目を通し、より多くの子どもに私法上の別個の代理権を与えるための法案を議論に議論を重ねて可決しました。1つは25年以上前の1996年家族法第11部第64条で、その後棚上げされました。もう1つは2002年養子縁組および児童法第122条で、1989年児童法第41条(6A)に権限を挿入し、第8条命令を、子どもをいつも当事者として、子どもの後見人と事務弁護士の両方によって代理できる特定の手続きのリストに追加したものです。法律としては施行されていますが、この規定を有効にするために必要な裁判所規則が未だ存在せず、子どもたちは依然として、2010年家事手続に関する規則第16.4項に含まれる効力の弱い副次的な法律に依存しています。

2.17  MoJのハーム・レポートが提唱する包括的な変更の一環として、私たちは、2002年養子縁組および児童法第122条に付随する必要な裁判所規則を制定し、1989年児童法8条に基づく私法上の申請を、必要に応じて子どもを個別に代理できる「特定手続」とすることを早急に検討するよう勧告します。これにより、これに該当する子どもは、必要に応じて、子どものパネル事務弁護士と子どもの後見人の両方による同時代理が可能となります。

図1は、UNCRC第12条を中心に策定された、普遍的で、差別的でなく、方針を明示した情報と相談、必要あれば代理人を提供するサービスのマトリクスを示しています152。このサービスは、子どもに対する倫理的実践の現代的基準を満たす国連条約に準拠しています。同時に、両親の別離や裁判の時だけでなく、その後専門家の関心が薄れ、子どもが自分に関して合意された人生を送ることになった時に利用する必要がある、子どもや若者に対する直接的支援サービスの一貫した枠組みを開発するのに有効でしょう。私たちは、図1(上図)のUNCRC第12条に準拠したマトリックスを、両親が離婚または別居している子どもや若者のためのサービス開発の枠組みとして採用することを強く勧告します。

2.18  国連委員会は、イギリスがUNCRCの実施に断片的なアプローチをとっていること、特に私法上の手続きに巻き込まれた子どもに関することを一貫して批判してきました。2009年7月、国連子どもの権利委員会は、締約国に対し、子どもの人生に関する決定をする際には、子どもが正確に情報を受取り、協議し、必要であれば代理権を所有することを保証するよう求める国連規約第12条に関する一般的意見を採択しました。一般的意見12号は更に、子どもの声を聴くことの重要性を強調し、意見を聴かれる権利のパラメータを概説しています。
  ➢国は、子どもの意見表明の能力を制限したり、子どもの意見を十分に考慮しない形だけのアプローチを避けなければならない。
  ➢子どもの参加が効果的で意味のあるものであるためには、一過性のイベントではなく、プロセスとして理解されなければならない。
  ➢プロセスは、透明性があり、情報を提供し、尊重し、関連性があり、子どもに優しく、包括的で、安全でリスクに敏感で、説明責任があるべきである。
  ➢大人は、子どもを巻き込むためのスキルとサポートを与えられるべきである。
  ➢子どもが意見を形成できると判断されたら、裁判官と直接話をする選択肢を持つべきである。

2.19  一般的意見12号はまた、子どもの意見を聴く権利を実現するための前提条件を定めています。これには、子どもに影響を与える全ての問題において、子どもが十分な情報を得た上で意思決定できるような条件と情報のもとで、自由に意見を表明する権利が含まれます。
  ➢「自由に」とは、子どもが人から操作されたり、不当な影響や圧力を受けたりすることなく、自分の意見を表明できることを意味する。そして、
  ➢他人の意見ではなく、自分自身の見解を述べることができる。

2.20  一般的意見12号は、「子どもに影響を与える行政手続」において自分の意見を表明することのできる子どもの権利が、メディエーションなどの代替的紛争解決メカニズムを包含することを確認しています153。

2.21  家事司法青年委員会から私法作業部会へのフィードバックには、以下のような変革案が含まれています。
  ➢家族に対してより強力で首尾一貫した支援サービスを行う。
  ➢裁判によらない紛争解決には、定常的に子どもを参加させるべきである。
  ➢子どもの声が届くような、子ども参加型のメディエーションを行う。
  ➢子どもが利用できる、裁判所の手続きから独立しているアドボケイターがいること。これは、地域のその場しのぎのサービスに依存するのではなく、全国的に利用可能であるべきである。
  ➢子どもが望んでいない、あるいは必要としていない場合もあるので、両方の親に会わなければならないというプレッシャーは余りないほうが良い。子どもは、親に会う頻度や期間について選択肢を持ち、それらの選択肢を作ることに関与すべきである。
  ➢私法事件の重大度の「閾値」を設け、それを下回る場合は、法廷手続きを許可しない可能性がある。これは、何を裁判にかけ、何をかけないのかについて、(家族部部長による)国家的な指針が必要であることを強調する。(現在、裁判の指標は、子どもに招く結果の深刻性よりも、両親間葛藤の深刻性に基礎が置かれている)。
  ➢若者たちは、裁判が子どもに与える影響を親が分かるよう、カフカス/カフカス・カムリ「子どもへの影響声明」が法廷で利用できるようにすることが重要であることを強調した。

3 親同士の関係が子どもと若者に与える影響

3.1   サセックス大学のゴードン・ハロルド教授の研究によると、親同士の関係の質、特に両親がどのようにコミュニケーションをとり、互いに関わり合っているかは、効果的な子育ての実践や子どもの長期的な精神的健康、将来の人生のチャンスに大きく影響すると認識されつつあることがわかりました。私たちは、親同士の葛藤が子どもに与える危害と、親が互いに敬意を払って振る舞い、協力的に行動することの利点について、社会の認識を促進することを目的としたキャンペーンに政府が資金を提供することを勧告しました。最低限、大人は礼儀正しく、少なくとも日常的な引継ぎの際にはアイコンタクトをとるべきであると提案しています154。安全性に問題がない場合、このような態度は離れて暮らす両親の間で文化的に期待される行動基準であるべきである。更に、私たちは、親同士の葛藤が続くことは、「子ども時代の悪い経験」として正式に認識するよう勧告します。

3.2   NYAS(全国青年アドボカシーサービス)が2010年のFRP(家事手続に関する規則)第16.4項において子どもの代理人を務めた経験は、ひどく敵対する両親間の一連の激しい法廷闘争によって、子ども時代が長期に渡って蝕まれることを示しています。両親の別離は、子どもにとって常に人生の危機として経験するものですが、それ自体が永続的な心の傷の原因となることはありません。両親の別離が子どもに与える影響に敏感になり、子の最善の利益のために協力する覚悟を持つ両親の意思と能力によって、多くのことが定まります。

3.3   私たちは、親同士の別離プロセスにおける早い段階、つまり裁判手続きに入る前に、「子どもへの影響」声明を作成すべきかどうかを検討しました。親と、親を支援する役割を担う専門家に対し、親同士の関係や下される決定が子どもに与える影響について考えるように促すのであれば、どんなことでも歓迎すべきです。しかし、殆どのプロセスが子どもの意見を直接求めていないため、両親を通して影響を評価することになってしまい、その評価が、子どもが対処する方法として最善の判断であるとは限りません。独立した専門家(カフカス/カフカス・カムリなど)の関与がない場合、誰が子どもへの影響に関する声明を作成するのかという疑問が生じます。このような理由から、私たちは、裁判所が決定していない事件に「子どもへの影響声明」を勧告しないことにしました。

4 コホート1(法廷外):国から介入やサービスを受けず、両親が子育ての取決めに合意する子ども

4.1   年間約288万人の子どもが両親の離別というプロセスを経ていると推定されています155。殆どの場合、両親はメディエイターや弁護士、裁判所などの外部の力を借りることなく、子どもの将来の生活の取決めについて合意することになります。「家族司法への道を位置付ける」によると、1996年から2011年の間に離婚または別居した夫婦の47%もの夫婦が、自分たちの状況について法的助言を求めず、この期間に直接メディエーションに進んだのは1%以下でした156。これらの数字と過去20年間の経験の両方から、メディエーションに全ての希望を賭けることは、家庭崩壊とそれに伴う子どもや若者の問題に対するアプローチとしては不十分であることは明らかです。

4.2   コホート1に属する大半の子どもには、UNCRC第12条が要請しているような、自分の将来のケアに関する大人の話し合いや交渉の場で情報を得たり、相談を受けたり、必要であれば代理人を立てたりする機会はありません。意思決定の時点で、あるいはその後、子どもにとって上手くいかないことがあっても、その結果として困難を経験する子どもへの直接的な支援サービスは殆どありません。調査によると、いったん両親の間で取決めがなされると、子どもはそれを変更するために何ができるかを知らず、多くの場合、取決められたとおりの生活を送ることになります。意思決定に影響を与え、子どもの安全を守り、子どもの将来の成果を改善する上で、子どもの意見が中心的な役割を果たすことを認識する上で、私法は公法に遅れをとってきました157。

4.3   私たちは、親が別離している全ての若者の経験は、より良い情報と適切な支援への指針によって改善されると考えています。第5節と第6節では、これらの改善をどのように達成できるかを概説し、第7節と第8節ではCIMに関する特別な考察を行い、第9節で幾つかのパイロット版に関する提案をして締めくくります。

5 情報提供と指針提示サービス

5.1   様々な組織が制作したウェブサイトは数多くありますが、それらがどの程度利用されているか、アクセスした子どもにとってどの程度有用であるかについて、体系的な評価は殆ど行われていません。私たちは、親との別離の影響を受けた子どもや若者のための法律や政策について、普遍的で、差別のない、「イギリス規格協会の認証」を受けたような情報を開発し、オンラインで利用できるようにすることを勧告します。加えて、これらのリソースがPSHE(人格的社会的健康教育)の一部として学校で利用できるようにするための組織的な戦略、および子どもや若者が接触するその他の接点、スポーツセンター、青少年センター、ジム、一般開業医の診療所、シネマコンプレックスなどが必要です。これには、イングランドとウェールズ間の地域差や提供のばらつきの必要性を考慮し、オンラインとオフラインで既に利用可能なものを系統的に見直し、評価し、調整することが必要です。その目的は、車輪の再発明ではなく、既存のイニシアティブや試行錯誤を経たサービスを、合意された包括的な国家的枠組みにまとめることにあります。この枠組みは、明確に識別でき、全ての子どもや若者がアクセスできるものでなければなりません。モデルとしては、「チャイルドライン」やBBCのオンラインサイト「バイトサイズ」などがあり、いずれも若者から信頼され、試されています。

5.2   一つの選択肢は、全国的に組織化された年齢相応の情報発信戦略の一環として、イギリスに313件あるコンタクトセンターのネットワークであるNACCC(全国子どもコンタクトセンター協会)を利用することです。また、イングランドにある既存の家族のハブのネットワークをより活用するという選択肢もあります。ウェールズでは枠組みが異なるかもしれません。2016年7月、子どものための超党派議員連盟(APPG)は、家族関係の強化に焦点を当てた報告書を作成しました158。この報告書では、地域のサービスや家族支援のハブとして、チルドレンズ・センターが果たす可能性のある役割が強調されています。残念ながら、チルドレンズ・センターは大幅に縮小されましたが、幾つかのコンタクトセンターは、イングランドとウェールズ全土をカバーしているため、家族のハブや別離親支援同盟の開発を支援するためのインフラを提供することができるかもしれません。これらのセンターは、子どもとのコンタクトだけでなく、ワンストップ・ショップとして利用することができました。利用できるサービスには、メディエーションやCIM、SPIP(別離した親の情報プログラム)コース、DV加害者プログラム、子どもグループ、女性グループ、法的助言、人間関係の支援は勿論のこと、情報、カウンセリング、アドボカシーを包含する、子どもや若者への直接的なサービスが含まれる必要があります。重要なのは、家族のハブが、現在あまりにも不足している、子どもに対する他の様々な直接的支援サービスへの指針提示と玄関口を提供できることである。玄関口を提供できることです。毎年、推定2万人の子どもが、子ども時代に2度目、3度目の親との別離を経験しています。このような子どもたちは、直接的な支援サービスの優先対象として考えるべきです。

5.3   教師、開業医、若者支援カウンセラーも、子どものための12条サービスに関する情報と訓練を受けるべきであり、親と関わる全ての家族専門家は、子どもが12条サービスを受けられるように情報を提供できるようにすべきです。これには、特定した組織的戦略が必要です。子どもの生活に関わる大人は、一般的に何が利用できるかを知らず、しばしば子どものためのサービスへのアクセスを支配する門番のような役割を担っています。両親が別離している子どもは、家族司法青年委員会(FJYPB)が勧告するように、子どものアドボケイターと話すことが許されるべきです。

6 リソースパックとデータ収集

6.1   2020年6月25日に王室の同意を得た「2020年離婚・婚姻解消・別離法」は、親が離婚を申請している子どもに、年齢に応じた情報の提供を義務付ける良い機会となり得ます。これは、毎年両親が離婚する75,000人以上の、その多くが何も情報を与えられていないであろう子どもを支援するリソースパックのような形にすることができるでしょう。このパックには、子どもの擁護とCIM制度に関する情報が、第12条に準拠した情報サービスへの指針と、地方、地域、および国のサービスへのルートマップとの協議とともに含まれる可能性があります。これにより、困窮し、危険にさらされている子どもに、何らかの「セーフティネット」を提供することができるでしょう。従って、私たちは、新しい法律上の取決めの一環として、親が離婚した子どもにリソースパックを提供することを勧告します。

6.2   両親の別居や離婚に巻き込まれた子どもの数に関する正確な統計の入手が困難であることを考慮し、私たちは同法とともに導入される規則には、離婚申請書に夫婦の子どもの数、年齢、双方の子どもであるかどうかを記録することを義務付けることができるよう勧告します。

7 コホート2(法廷外):親がメディエーションに参加した子ども(子ども参加型メディエーションを含む)

7.1   家庭崩壊は極めて高い個人的、経済的コストもたらします。政府は、できるだけ多くのケースを家庭裁判所からメディエーションサービスによって促進される裁判外の和解に振り向けたいと考えています。現在、親がメディエーションに同意し、メディエイターがCIMを提供する子どもだけが、裁判外で相談する機会を持つことができます。

7.2   2012年法律扶助,量刑及び犯罪処罰に関する法律(LASPO2012)により、私法上の子どもの事件の大半が法律扶助の対象から外されたことは、夫婦が裁判外の和解に至る強力な動機を与えることを意図したものでした。しかし、LASPOの施行(2013年4月)後、メディエーション情報および評価会議(MIAM)に参加する成人の数は47%激減し、改善はしているもののLASPO以前のレベルにはまだ回復していません。

7.3   メディエーションに対する公的支出が着実に増加する代わりに、支出が年間800万ポンドから600万ポンド以下に急減しています159。強制的MIAMを導入した2014年子どもおよび家族法の第10条の施行(2014年4月)を受けて、数は徐々に回復しています。強制的MIAMは、紛争解決を目的として裁判所に助けを求めるために法的支援を受ける上での前提条件であり、また、私法上の子どもの訴訟や経済的救済のための訴訟において裁判所が申請を出す前の要件でもあります(免責事項に該当する場合を除きます)。しかし、2014年にメディエーションに行った夫婦は、別離中の夫婦の僅か8~10%であると推定されました。比較すべき目標値は30%でした160。

7.4   2019年7~9月の法律扶助庁統計によると、前四半期のMIAMは前年比20%増で、LASPO前の3分の1強の水準になりました。開始は20%増加し、22%増加する成果を納めましたが、現在はLASPO以前のレベルの半分強に留まっています。正しい方向に進んでいるとはいえ、メディエーションの開始は、未だにLASPO以前の水準の数分の一に過ぎません。CIMの利用拡大は、より一般的なメディエーション利用拡大策との関連で検討されなければなりません。

7.5   メディエーション・タスクフォースの報告書は、イングランドとウェールズ、そして世界中で、子どもや若者が無力感を感じ、意見を聞いてもらう機会や、様々な方法で話し合いや交渉に参加する機会を求めているという動かぬ証拠があることを指摘しました162。1980年代以降、子どもをメディエーションに参加させるメディエイターもいますが163、子どもの参加は依然として「少数派の活動」です164。コンタクトの取決めや居所の取決めについて相談を受けたり、影響を与えたりしたことを報告した子どもは、取決めに対する満足度が高いという証拠があるにも拘らず、このような状況です165。子どもに発言権を与えることで、より永続的な合意につながり、親同士の連携が向上し、より良い父子関係、より協力的な共同子育てに繋がります166。

7.6   家事メディエーション・タスクフォースは2014年に、家事メディエーション評議会に登録されている約396人のメディエイターが、子どもとの直接相談を行うための訓練を受けていると報告しました。しかし、直接子どもと相談を行っている人は殆どいないという指摘がありました。このように子どもとの相談が進まない理由として、以下のようなことが挙げられています。
  ➢トレーニングや監督、リソースが不十分
  ➢子どもを対象とした法律扶助を利用できるか否か不明
  ➢標準やプロトコルが時代遅れ
  ➢子どもの声を聴くための一貫した枠組みが欠如
  ➢守秘義務や職業上の特権の問題への懸念
  ➢大人の問題に子どもを参加させることの有効性や目的に関する対立する意見
  ➢子どもの権利ではなく、大人(親や実務者)が、子どもの将来に影響を与える手続きに対する子どもの参加可否を決定167

7.7   2015年、「子どもの声」紛争解決諮問グループの最終報告書は、子どもを巻き込んだ非法廷DRプロセスを断固として実践要件にすべきであると強く勧告しました。これを受けて、FMCは、報告書の勧告における行動計画を立案すべくCIM作業部会を設置し、CIMの義務、原則、要件、新しい能力、研修要件、および以下の内容を含む継続的専門能力開発(CPD)を包含するFMC基準フレームワークに大きな変更を加えるに至りました。
  ・要件として全メディエイターは認定前に「意識と行動」研修に参加せねばならない
  ・CIMに関する研修の改善と強化
  ・CIM研修コースは、FMCの承認を受けなければならない
  ・継続的なCIMのCPDと実践が要件になっている

7.8   2020年1月、家事メディエーション評議会家庭メディエーション協議会は、「家事メディエーション調査2019」に回答したメディエイターが過去6カ月間に実施した事件のうち、33%はまだ家に住んでいる10歳以上の子どもが関与していたと報告しました168。そのうち26%の事件で子どもが相談を受けており、2017年の調査の14%から増加しています169。少なくとも部分的には、基準フレームワークの変更によってもたらされたCIMへの注目によるものと考えられます。しかし、2019年の調査には122名のメディエイターしか回答していません。FMC認定メディエイターは1050人なので、12%の回答率になります。FMCは年次の数字を保持していないため、毎年実施される子どもを含むメディエーション数の正確な件数は分らず、従って進捗を評価する材料もありません(それゆえ、上記2.7で私たちが勧告しています)しかし、最近の推定では、その数はおよそ3,200件とされています。

8 コホート2:法廷外-情報提供と相談サービス

8.1   両親が別離している子どもは、CIMの訓練を受けたメディエイターか、FJYPBが提案しているように、裁判手続きから独立した子どものアドボケイターのどちらかが支援することができるでしょう。強制的な協議制度は、第12条の子どもが独立して協議に加わる権利が事実上両親の同意に依存している現在のケースよりも、裁判の前の段階でより多くの子どもに手を差し伸べることができます。パイロット版では、メディエイターまたはアドボケイターのいずれかを代理人にする子どもの相対的なアウトカムを比較することができるでしょう。その目的は、子どもの声の力を利用して、非常に早い段階で親が子どもの福祉に注目するよう促すことで、裁判手続きから事件を遠ざけることにあります。会議の後、親にSPIPに参加するよう奨励/要求することもあります。

8.2   子どもには、上記で推奨した情報リソースパックを渡すとよいでしょう。これから、子どものパネル事務弁護士の探し方に関する情報や、1989年児童法第10条に基づき、1989年児童法第8条に基づく命令の自由申請を行う許可を求める権利に関する情報を含む、直接利用できる支援サービスに関する年齢に応じた情報を入手できるでしょう170。子どもが、接触の結果、暴力や虐待を受けた場合に内部告発することや、両親の別離によって失われた兄弟姉妹、祖父母、他の重要な親族との接触を維持または再確立するために裁判所に申請することができるようにすべきです。現在、子ども自身が自立して申請することは非常に稀で、司法省はその数を記録していません。

8.3   「子どもの声」諮問グループの最終報告書にあるCIMへの資金提供に関する勧告は実施されるべきであり、子どもが子どものアドボケイターの支援を受けるための資金提供もその中に含まれるべきです。

8.4   MIAMの活性化に関する私法作業部会(PrLWG)の勧告(勧告9)「MIAMの品質と提供をより厳密にモニターし、一貫して維持すべきである」と結び付けるために、メディエイターが親と一緒にCIMについて話し合ったか否か確認することを要求することができます。このことを確認するために、メディエイターが記入する必要のあるボックスをC100申請フォームに設ける可能性があります。

9 子どもの情報、相談、代理人ニーズへの対応を目的としたパイロット版スキーム

9.1   情報、相談、代理人に対する子どもの権利第12条が保護され尊重されることを保証するために必要な文化の変化を達成するためには、時間と金銭の両面において、かなりの資源を投入する必要があります。従って、私たちは、労働年金省または同様の基金が、子どもの第12条の権利を確実に保護することを目的とした幾つかのプロジェクトを試験的に実施することを提案します。

9.2   私たちは、両親の別離に伴う情報や相談のニーズに加え、子どもが多大な支援を必要としている可能性があり、こうしたニーズに対応するための体系的な国家戦略が存在しないことを認識しています。遺児を支援するための十分に開発され確立された制度はありますが、両親の関係の崩壊を悲しんでいる子どものための制度は殆どありません。

9.3   別離している両親のための全体的サービスや、CIMと並行して行われる子どものためのカウンセリングの、より広い役割のための試験的な提案を概説します。

9.4   労働年金省の「両親間葛藤低減チャレンジ基金」の資金提供を受けた「心のメディエーション」構想は、トリアージと方針提示、カウンセリング、メディエイターとの対話セッション、裁判手続きに関する情報提供が、特定の不利な条件(片親が失業している、アルコールや薬物の乱用があるなど)を持つ親が、家庭裁判所に問題を進めるよりもメディエーション解決することを支援、奨励するか否かに関し、学習することを目的としています。この構想の評価で報告された有望な結果を考慮すると171、この革新的で総合的な支援パッケージを、より広いコホートの別離している親に試験的に提供すべきであり、対象者は規定された不利な立場にある親に限定されません。

9.5   「心のメディエーション」の一環として、CIMに加え、別離中の両親を持つ子どもに、研修を受けたカウンセラーによる1対1のサポートを提供しました。カウンセリングは両親の関係の崩壊に若者がうまく対処するのに役立ち、コホート1と2の子どもに提供すべき強力なツールであることがわかりました172。

9.6   両親別離の影響を受けた子どもや若者のためのリソースパック開発に関する試験的提案を概説します。

9.7   家庭崩壊を経験した子どもや若者のためのリソースパックとアプリを開発するための12ヶ月のパイロットを設立します。リソースパックはプロジェクトの第1段階(1ヶ月目から6ヶ月目)で開発する予定です。NACCCとカフカスのネットワークを使って代表的なグループにアクセスし、若者によって若者のために開発されるでしょう。プロジェクトの第2段階(7ヶ月目から12ヶ月目)では、離婚の申立て、メディエーションへの出席、コンタクトセンターの利用、私法による家庭裁判所の申請を行う全ての親の子どもにリソースパックを送付し、リソースパックのロードテストが行われる予定です。若者にフィードバックを求め、リソースパックを評価します。

9.8   家事メディエイターと子どものアドボケイターを使用した学際的なパイロットプロジェクトの試験的提案を概要します。

9.9   メディエイターと子どものアドボケイター/ケースワーカーは、両親別離の過程において、必要とされたり危険にさらされたりしている子どもを早期に特定することを目的として、子どもに関する取決めがなされる際に、子どもの声が親の意思決定に与える影響を検討するために、互いに協力し合うことになります。

9.10  パイロット研究では、手に負えないほど敵対的で、長引き繰り返される裁判に子どもを晒す可能性が高い両親の子どもの事件を特定し、早期に介入することを目的としています。この研究では、メディエーションで若者の声を聴くことと、子どものアドボケイターが若者を支援することで、親が別離した後の子どもや若者のニーズを特定し、それを満足する支援を行い、それによって裁判所を回避するのにどのような影響を与えるのか調査する予定です。

9.11  調査と経験から、2010年家事手続きに関する規則第16.4項により、子どもの意見と立場を別々に代弁することは、費用がかかり苦痛を伴う訴訟手続きを終わらせる生産的で費用効果の高い方法であることが、実証されています。子どもの声が増幅されることで、固着した親同士の敵対的な関係を断ち切る触媒的な効果が期待できます。さらに、元パートナーとの敵対的な戦いに負けたからではなく、子どもの立場やニーズを理解したからこそ、どちらの親も譲歩し、親として良い思いをすることができるようになるのです。子ども中心で子どもを含む焦点は、別れた後の前向きな共同子育ての基礎を提供することができるのです。

9.12   パイロットは、両親の感情があまり固着していないであろう、より初期のプロセスでこの子ども心の行動を再現することを目指します。これにより、裁判所は繰り返される訴訟のコストを節約し、子どもへの感情的なダメージが抑えられ、自分たちが激しい論争の対象であることを知ることによる慢性的な苦痛から免れることができます。

9.13   パイロットの提案は、FMAの研修を受けたメディエイターとNYASの子どものアドボケイターの既存のスキルや定評のある地理的に分散したネットワークを活用し、人材と資金の両面で費用対効果の高い利用を可能にします。

(了)

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