見出し画像

第6章 家庭裁判所との接点 「私はどうなるの?」両親離別後の家族への支援を見詰め直す

「私はどうなるの?」
両親別離後の家族への支援を見詰め直す
家族問題解決グループの報告書
(私法作業部会のサブグループ)
2020年11月12日

A.法定メディエーション情報および評価会議(MIAM)

307.  昨年夏に発表された最初の子どもへの暴力防止プログラム(CAP)レビューでは、法定MIAM制度が意図したとおりに機能していないことを認識し、その活性化を提案しました。これには賛否両論、多くの相談が寄せられました。全体として、MIAMに対する十分な支持が得られたので、この提案は維持されることになりました。会議そのもの(役に立つと考えられている)と、会議が運営されるシステム(欠陥があると広く理解されている)の間には、区別がありました。幾つかの問題点が指摘されましたが、主なものは次の3つです。
   ・コスト
   ・被申立人の関与不足
   ・多くの裁判所が、法令や家事手続規則(FPR)に規定されたMIAMの要件を執行していないこと。

308.  早期の「情報および評価会議」への出席が望ましいルートとして勧告されていますが(上記177~203節)、私たちは、裁判所への申請を考えている親に対しては、法定MIAMを維持することを勧告します。

309.  付属資料8には、法定MIAMに関する詳細な論説を添付していますが、この論説では、まず上記の3つの問題について検討した後、私法作業部会(PrLWG)から依頼された追加的なポイントを以下のように定めています。
   ・MIAM実施の実務と手続きに関する基準
   ・メディエーションに従事する能力
   ・MIAMを実施できるメディエイターの人数
   ・MIAMに関するC100申請フォームのセクションを書き直すべきかどうか
   ・裁判所とのやりとり
   ・MIAM提供者のアイデンティティに変更を加えるべきかどうか

310.  法定のMIAMは、事件を捕えて、「正念場」としてメディエーションや他の手続きに振り向けることができます。私たちは、IAMに参加することで、より早い段階から家族が支援を受けることを勧告します。しかし、家庭裁判所への申し立てを希望する場合、法定のMIAMは重要な役割を担っています。両方の親が確実に出席できるようにMIAMが作動する制度が改善されたなら、問題が法廷から離れて一緒に解決される可能性は、現在の割合よりもはるかに高くなります。2019年12月に実施した家事メディエーション評議会(FMC)の調査では、両親ともにMIAMに出席した場合にメディエーションに移行した割合は73%でした。

B.法廷外プロセスの採用を改善するための他の提案

311.  親が家庭裁判所を離れて問題を解決するためのプロセスを利用しやすくなるよう改善するため、幾つかの提案があります。以下の点に関する私たちの見解と勧告の概要を付属資料10に記載します。
   ・法廷での法定MIAMと法廷でのメディエーション
   ・子育て取決めの法的拘束力の実現
   ・第3部家庭手続規則と新たに提案された第3部議定書

C.アイコンタクトの閾値

312.  前述のとおり、法的介入が必要な場合もあります。安全上の理由から家庭裁判所を必要としない場合、家庭裁判所へのアクセスは、家庭裁判所が支持しようとしているまさに福祉の原則を損なう可能性があります。子どもの福祉は、法律上、理論的には最も重要であるが、実際には制度上、これが困難です。前家族部部長のジェームス・マンビー卿が思い起こさせたように、子どもの最善の利益についての適切な評価が、敵対的プロセスから出てきそうにないのは不思議なことではありません116。敵対的なプロセスが終了すると、それは家族の将来にどのような影響を与えますか?

313.  家庭裁判所は、協力的な子育てに適したケースにおいて、より明確な福祉の閾値を設けることが有効かもしれません。安全に実施できる場合には、私たちは、協力的な子育てが上手くいっていることを確認する検査として、子どもの引き渡し時に両親が互いに積極的なアイコンタクトを取ることを閾値に採用することを勧告します117。上記の101節で概説したように、安全上の問題がない場合、この協力的な子育ては離れて暮らす両親の間で文化的に期待される行動基準である可能性があります。「黙殺」や相手の親を無視することは、親同士の葛藤の表れであり、それが続くと子どもに危害が及ぶ危険性が高まります。

314.  こうして、全ての家族専門家は、自分の仕事を終えて事件簿を閉じるときに、次のように考えることができます。「私たちは、親同士の関係をどんな状態にしたのだろうか?子どもを引渡す際に、親同士で積極的にアイコンタクトをとることができるだろうか?」。アイコンタクトができるようなら、子どもの結婚式やその他の重要な家族のイベントに何年にもわたって参加でき、やがては協力的な祖父母になる可能性が高くなります。私たちが提案する方法で、両親が別離する際の家族支援を再構築すれば、このような目標をなお一層達成しやすくなるはずです。

D.家庭裁判所との接点~勧告事項の要約

中核をなす勧告
早期の「情報および評価会議」への出席が望ましいルートですが、私たちは、裁判所への申請を考えている親に対しては、法定MIAMを維持することを勧告します(308節)

315.  MIAM制度が意図したとおりに機能するためには、現在のコスト阻害要因を解決する必要があります(付属資料8)。

316.  事務弁護士、裁判所職員、裁判官は、両方の親がMIAMに出席することが期待されていることを理解する必要があります(付属資料8及び付属資料7のトレーニング要件)。

317.  家庭裁判所は、法令と家事手続規則(FPR)に定められたMIAMの要件を執行しなければならない(付属資料8及び付属資料7のトレーニング要件)。

318.  私たちは全ての金銭と子どもの事件に使用する自立したMIAMフォームを推奨します(付属資料8および付属資料9)。

319.  私たちは、両親が望むのであれば、子育てに取決めはオープンにすることができ、またそうするべきだと考えています。この点で、私たちは以下の内容を勧告します。
   ・FMCは、メディエイターが使用する標準的な文言を提供する
   ・状況の変化がない限り、あるいは子供の福祉に反する取決めが合意されるようなことがない限り、メディエーションで成立した子育ての取決めを支持するという効力に対する、この点についての部長指導、あるいは規則改正が求められる(付属資料10)。

320.  私たちは、親責任の取決めの登録に類似する子育ての取決めの登録を提案し、これが実現可能かどうかを検討するよう司法省に求めます(付属資料10)。

321.  私たちは、子育ての取決めに関する様々な問題を検討するために、小規模な学際的作業部会を設置することを勧告します(付属資料10)。

322.  家庭裁判所が、法廷外紛争解決が適切か否か検討する責任を果たすことを支援するために、提案した議定書第3部を試験的に実施することを私たちは勧告します(付属資料10)。

323.  安全な場合、親同士が上手くいっていることを測る検査して、子どもの引渡しの際に親同士が互いに積極的なアイコンタクトを行うことを閾値に採用することを勧告します(101節、313節)。

(了)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?