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ファースター・ザン・リリィ!

 端的に、そして結論から言ってしまうと、人類は百合のせいで滅亡した。
 そしてそのせいで、横浜フェアリス女学院二年一組出席番号12番永流水有理<とながみ・ゆうり>は今、銀河系中央、射手座A*近傍の第90526ワームホールジャンクションでヒッチハイクをしている。

 始まりはY染色体消失による男性の絶滅だった。
 男性消失社会は、IPS細胞等の技術の発達もあって子孫を残すことに支障はなかった。
 唯一最大の問題、それは生殖から切り離された恋愛感情。当初は大多数だった異性愛者はやがて過半数程度になり、比率が逆転し、最終的には人類総同性愛者になった。
 大百合時代の幕開けである。
 二度の世界大戦を含む議論の末、「国際百合憲章」が制定され人類は〝正しき〟百合の道を歩むこととなった。
 シンギュラリティは――或いはカタストロフは、それからわずか20年後に訪れた。清い百合から抽出される『リリウム粒子』の発見である。膨大なエネルギーを秘めたリリウム粒子は、特に10代の少女達から質の良い物が採取され、学校は発電所へと様変わりを果たした。義姉妹の契りを結んだ女生徒がタイの曲がりを直すだけで国家備蓄分の石油エネルギーを代替可能なのだ。
 ありとあらゆる分野を目まぐるしく進展させたリリウム粒子による百合技術の伸長は、殊に宇宙開発分野で顕著だった。
 そう、今もはっきりと覚えている。NASAの発表に全世界が興奮したあの夏の夜。
 リリウムエンジンによる外宇宙跳躍機関の発明。人類は超光速〈FTL〉航法を手に入れたのである。
 そしてその発表の僅か二時間後、地球はアケルナル人を名乗る異星人艦隊の攻撃を受け木端微塵に吹き飛んだ。

『地球跡地まで』
 銀河汎用語と主要1800ヶ国語でそう書かれたプレートに寄りかかり、有理は――人類最後の生き残りは、皮肉な笑いを浮かべる。
 ――まさか百合じゃない私が生き残るなんてね。

【続く】

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居石信吾

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ニンジャヘッズ。現在逆噴射小説大賞 投稿作「ポスト・ポストカリプスの配達員」の続きを連載中。