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サマー/タイム/クライシス ~冬の少年~

 サマータイム導入に失敗し、日本は永遠の夏に閉じ込められた。時間がループしているのか、それとも夏以外の時間を消してしまったのかは未だに議論されているが、ともあれ今日も私達は寝苦しさと戦っている。

「あっついね~」
 みっちゃんが制服のスカートをパタパタとさせながらぼやいた。口にアイスを咥えながら器用なものだ。
「生まれた時から夏なんだからいい加減体が勝手に慣れてくれればいいのにね」
 隣の私も真似をしてスカートを扇ぐ。
 学校の帰り道にある砂浜は石だらけで海水浴には向いてないのでこうして私達がずっと居座っていられる。空は青黒く、恐ろしい程高く、水平線には入道雲が立ち上がる。
 昨日、そして明日も続く時間が止まったような風景だなという柄にもない思考は、みっちゃんの叫び声で掻き消された。
「ねえ! あれ人じゃない!?」
 汀に、確かに人が倒れていた。
「でもあれ……」
 私は口篭る。
 その人は、コートとマフラーを着ていた。

【続く】



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