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アカデミー#4: 事業作りに学術論文を使って、知の巨人の肩に乗ろう!

2021年5月22日(土)、「にいがたヘルスケアアカデミー・課題追求コース」の第4回講義が開催されました。今回はアカデミー生が『文献検索/学術論文読解』と『インタビュースキル』の2つのテーマのうち1つを選択して受講するスタイルでした。

本記事では文献検索側の講義『事業のための情報検索と学術論文の読解』の様子をお伝えします。講師は清元ありさ氏が担当しました。

アカデミーに興味のある方はもちろんのこと、新潟のヘルスケアをより良くしたい、医療課題に対してアクションを起こしていきたいと思っている方はぜひご覧ください!

『課題追及コース』全体のスケジュール
2021年4月から始まった課題追求コースは、下記スケジュールで進んでいます。

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講義『事業のための情報検索と学術論文の読解』  清元 ありさ 氏

■ 清元ありさ(きよもと・ありさ)氏
京都大学法学部卒、カナダ McGill大学への留学を経て、一橋大学公共経済修士 主席卒業。
学生時代からPMAC コミッションワークメンバーに選ばれ、英語で本を出版。中低所得国をフィールドとした研究経験を経て、2021年夏よりJohns Hopkins Department of International Healthへ進学予定。現在、BSNアイネット ヘルスケアICT立県サブプロジェクトマネージャー 、 WHOコンサルタント 、孫正義育英財団 第二期 Research Fellow。
"留学前に日本で選んだ最後の職場は新潟県でした。国際保健と地域医療を渡り歩いて、これからのヘルスケアを模索しています。"

本講義『事業のための情報検索と学術論文の読解』では、文献検索を中心としたリサーチスキルをレクチャーとワークを通して学びました。

1. 新潟ヘルスケアICT立県実現プロジェクト活動報告

最初にBSNアイネットの宮田亜璃朱氏より、新潟ヘルスケアICT立県実現プロジェクトの活動報告がありました。今回のテーマである情報探索(文献検索+インタビュー)はプロジェクトを進める上で非常に重要なスキルです。実際のプロジェクトでは、学術論文が300本以上活用されており、世界最先端の知見を事業に組み込むノウハウが伝えられました。

また、これまでの講義内容を踏まえ「仮説思考」をベースとしたリサーチの重要性が改めて強調されました。

2. 講義

2.1. 導入-なぜ学術論文が事業に必要なの?

講義は導入・文献検索・クリティカルリーディングの3パート構成でした。

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冒頭に示されたのは上記のスライドー
「せっかく調べるのであれば、熱いマインドセットを持って!」という、日本を飛び出て活躍される清元氏ならではの説得力のある熱い思いから、アカデミー生は「視座を高く持って活躍してほしい」というメッセージを受け取りました。

事業開発プロセスにおいて情報探索の役割は欠かせません。特にヘルスケア領域の事業開発・プロジェクトにおいては、課題発見・先行事例調査・仮説検証の各プロセスにおいて文献検索をはじめとした根拠に基づく情報の探索は避けては通れない道だからです。

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2.2. 文献検索のいろは

「魚の釣り方」に当たる文献検索のノウハウが、具体的なWebサイトやツールの紹介を交えながら伝えられました。
文献検索の基本的な流れは、
(1) 自分が調べたいテーマの全体像や概要を大まかにつかむ
(2) それを基にリサーチを行うポイントとキーワードを決める
(3) 文献を使って自分の仮説を深堀していく
です。これが効率的かつ全体感をもったリサーチにつながります。

無料の文献検索ツールとして、「PubMed」や「Google scholar」を活用したり、「Connected papers」を活用して当該文献が関心領域においてどのような位置づけにるのかを確認することなどがテクニックとして紹介されました。

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その後の個人ワークではPubMedを活用した関心領域に関する文献の検索を一定のルールのもとに行い、受講生は実際に活用することの便利さと難しさを体感しました。


2.3. クリティカルリーディング:Be your own judge!

クリティカルリーディングパートでは講義とグループワークを通して先に学んだ文献検索で釣り上げた魚をきれいに平らげるための「魚の正しい食べ方」=「適切な論文の読み方」を学びました。

清元氏のギアが一段階上がり、学術論文に対する”愛”と学術的であるが故に適切に解釈・活用する必要があるという論文の「諸刃の剣」としての一面について説明がありました。

講義では、まず「批判的思考」の練習として、クイズを通して理解を深めていきました。

突然ですが、読者の皆様は下記のスライドに幾つの反論を思い付きますか?

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………

因果関係に関わる 中間・交絡因子、選択バイアスなどに分けて、7つの反論が解説され、受講生も各々の反論を盛んに発言しました。

このクイズに反論するのと同じように、普段から「批判的思考」をしっかり鍛え、論文はもちろんのこと自分の中の「当たり前」やメディアの発信する情報に対しての受け身の姿勢を見直そうというマインドセットができました。


3. グループワーク 

最後に、このスキルを実践すべく3つのグループに分かれて、各グループごとに指定された論文を読解し、以下の清元氏の「てきとー引用」に対する問題点の指摘をワークとして行いました。

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一つの文献から導かれることの限界を、謙虚に受け止めつつ、
ピースをつなぎ合わせるように、自分の仮説を一つずつ検証していく重要性
を実感しました。

同時に、自分の主張が上記の「てきとー引用」のように、

・主語が大きすぎてどこから突っ込めばいいのかわからない
・話題が文章の中で入れ替わっていることに気づけていない
・課題の具体度が低すぎて、登場人物の思い浮かばないレベルでふんわりとした議論をしてしまっている

などの"てきとーさ"を孕んでいないか、見つめ直す機会となりました。


最後に、清元氏からの take-home messageとして以下の言葉が伝えられ、一連の充実した講義が幕を閉じました。

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次回アカデミー

次回のアカデミーは、6月17日(木)19:30 からオンラインにて開催します。テーマは『定量分析』で、講師はハイズ株式会社コンサルタントの後町陽子氏です。

次回もお楽しみに!


にいがたヘルスケアアカデミー
受講生:新潟のヘルスケアをより良くしたい!と考えている県内外の方々
主催:ヘルスケアICT立県実現プロジェクト
運営:株式会社BSNアイネット・ハイズ株式会社
後援:新潟県
Twitter @niigata_ict
アカデミーの活動や関連情報、新潟のヘルスケア情報や潜在的な課題などを発信しています。

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