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島の本屋と、カツカレー

もうすぐ島に来て1ヶ月が経つ。
島と私の、1ヶ月記念日だ。
島に到着した日は、右も左もわからず、翌日から働くだなんて信じられなかった。
でも今は、すぐ側の海も、様々な人が出入りする足湯も、ちょっと頑張ればすぐに登れる展望台も、美味しいご飯屋さんも、素敵なカフェも、湧水スポットも、食品が安く買えるお店も、知っている。
仕事にも慣れて、1日を通して自分なりの過ごし方を見つけた。
ああ、人は案外知らない場所でも何とかやっていけるものなんだ、と身をもって実感した。

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昨日の夕方、特にすることもなくて時間を持て余していた時、近所にある本屋にまだ行ったことがないことを思い出した。
パンパンのスーツケースでここにやってきた私は、できる限り島で荷物を増やしたくなかった。
けれど、帰る時には消耗品が減った分、少しはスペースが空く。
本1冊増えるくらいどうってことないだろう。
そう思い、私は島で初めて本を買いに行くことにした。
その本屋は、開いているのか閉まっているのかよく分からなかった。
思い切って入ってみると、「いらっしゃいませ」という声と共に、奥から犬を抱っこしたおじさんが現れた。
穏やかそうなおじさんは、ワンコにあやすような声をかけながら、すぐにバックヤードへと戻っていった。
私は店内をゆっくり見て回ることにした。
大きな窓の側に本棚があるから、本が日焼けして色褪せてしまっている。
それも相まって、本屋というより、古本屋みたいな雰囲気だった。

しかし、よく見てみると、ちゃんと新しい本も並んでいた。
最近出たばかりであろう小説、週刊誌、漫画はもちろん、10月号の北海道観光の雑誌もあった。
決して品揃えが良いとは言えないのであるが、なんだか味があって良い。
隣町にも1店舗本屋があり、島にはここと合わせて本屋は2店舗しかない。
少ない本屋、ネットショッピングをするにもかなり送料がかかってしまう、この2つの理由から、島で読書を習慣としている人は少ないのではないかと予想する。
私は本が無い人生など考えられないので、島にももちろん本を持ってきた。
スーツケースの隙間に入る分を、厳選して。

お気に入りの小説2冊と、島で読む用に買った2冊。
そして、完全自殺マニュアルを持ってきたけれど、今のところ島で死ぬ気は無いのでご安心を。
青森でじっくり読む暇がなかったので、島に連れてきただけである。
この本がご夫婦に見つかりでもしたら、「山に湧水を飲みに…」「ちょっとそこの海まで…」「あそこの崖に登ってきます…」などなど全ての言葉が怪しく思われてしまい、火曜サスペンス劇場が始まってしまいそうだ。
そして昨日、島の本屋で新たに1冊お迎えした。

まさかの、大好きな山本文緒さんのエッセイを、それも読んだことのないものを本棚で発見したのだ。
これは…!と思い、買うことを決断。
レジでオーナーらしきおじさんに、この本に出会えた嬉しさを伝えた。
するとおじさんは、「本は出会いですからねえ!どこでどんな本に出会えるかはわからない。それが面白いですよねえ。」とにこやかに語った。
嬉しかった。島に来て初めて、本の話ができた。
長い間このお店の本棚に入っていたであろうこの本は、なんとなく入店した私の目に留まり、私の部屋のカラーボックスの中へと引っ越した。
まさに、出会い。
大好きな作家さんのエッセイをお迎えし、良い休暇を過ごすことが出来そうだ。

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今日の昼は、港にある食堂へカツカレーを食べに行った。
どうしてもカツカレーが食べたかった。
数日前、ふとそう思ったら頭から消えることはなくて、仕事が休みの今日、念願叶って食べることができた。
大盛りの白い米、揚げたてサクサク、そして柔らかいカツ、旨みがぎゅっと詰まったカレー。
それらをスプーンに乗せ、口に運ぶ。
まさに、至福の時であった。
私の他はほとんど観光客らしい人たちで、皆んな島で採れた海鮮を使ったラーメンを頼んでいた。
ラーメンばかりが運ばれていく中、私はカツカレー。
やっぱり私は、麺より米なのだ。

デザートは、セイコーマートで調達した。
青森に、というか東北には無いセイコーマートでの買い物は、来るたびになんだかワクワクしてしまう。
もうすぐ島ともおさらばだと思うと、購買意欲もマシマシになり、2連休だし!という気持ちの緩みもあってかたくさん買ってしまった。

翌日が休みということで、迷わずサッポロクラシックを購入した。
割と久しぶりのお酒だ。
気になっていたサンドイッチやパン、アイスも合わせて購入し、今にもスキップしそうな気持ちで帰宅する。
ああ、島で友達が出来たなら、一緒に乾杯したかったなあと思う。
けれど、1ヶ月ちょっとという短期間なのだし、観光シーズンの終わりで私のような若い派遣も少ないので、仕方ない。
1人でも充分の幸せを感じつつ、ご飯の時間を満喫した。

相変わらず別腹の域を超えた量であるが、今日のためになるべく食事に気をつけてきたのと、明日からはまた健康的な食生活を送る予定なので、どうか神さま、お許しを。
それにしても、セイコーマートのアイスは美味しい。
中でもソフトクリーム型のアイスはひと味違う。
濃厚でミルク感たっぷりで、とても美味しい。
セイコーマートさん、幸せな時間をありがとう。

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私のnoteの島暮らし編をいつも読んでくださっている皆さま、この記事を読んでみようと開いてくれた皆さまに、改めて感謝したい。
今のところ身体も心も健やかに過ごせている。
それがどれだけ幸せなことかと、海を見ていると、時々ハッとする。
私と皆さまの明日が、より良いものとなりますように。

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