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乳幼児に学ぶプロダクトデザイン

以下の乳幼児向けおもちゃと絵本はすごすぎるのでプロダクトデザインの観点で迫ることにする!!

人の原始的な本能に訴えるプロダクトという意味では、乳幼児向けのおもちゃや絵本は非常によくできている。どこまで計算して設計されているかわからないが、優れたおもちゃや絵本は、まだ身体を十分に動かすこともできない赤ん坊を強烈に惹きつける。乳幼児向けのおもちゃや絵本からプロダクトデザインの観点で学ぶものは非常に多く、特にペルソナ設計は多いに勉強になった。

自己紹介
ナカミチと申します。広島でシステムエンジニアをしております。
2021年の3月末に双子の男の子が生まれました。
4ヶ月の育児休暇を経て復職し、相変わらずシステムに関わる業務をしております。JBUG広島というコミュニティを運営してたりします。


乳幼児と過ごす中で、人には本能的に楽しさを感じる体験が存在することに気が付きました。

それは心地よい音であり、鮮やかな色彩であり、体になじむ形であったりします。

優れた乳幼児向けのプロダクト (以降”グッド赤ちゃんプロダクト”) はそんな本能をビリビリ刺激しています。
本記事では、僕が0歳児の双子と過ごす中で出会ったグッド赤ちゃんプロダクトについて、なぜうちの双子を強烈に惹きつけるのか考えた内容を書きます。

まあなんか仰々しい書き出しをしてしまいましたが、うちの双子の食いつきの良かったおもちゃと絵本の紹介をします。そしてついでに各プロダクトの特筆すべき点を挙げます。

普段システムを作っているものからしたら、人の本能を刺激するグッド赤ちゃんプロダクトから学ぶものがあるように思えてならないのです。
個人の主観による内容であり、サンプルもうちの双子のみと統計的な裏付けもないので、気軽におすすめの育児グッズ紹介記事として読んでいただければ幸いです。

優れた赤ちゃんプロダクトとそれらを構成する要素

システムを作る中で、画面の色やボタンの配置など、それらがユーザに与える体験について迷うことが多々あります。絶対的な正解はないのかもしれないが、デザインの基本を知ることで使う人にやさしい作りにすることはできますよね。
例えば、認識しやすいようにコンテンツを Z の流れで配置するとか、色弱の方に配慮して緑とオレンジは組み合わせて使わないなど。

しかし、グッド赤ちゃんプロダクトは全てのものに初めて触れる乳幼児を対象しているため、コンテンツを Z の流れで読む等の後天的に獲得するであろう社会の常識とは異なるアプローチをとっている!…気がするのです。

グッド赤ちゃんプロダクトだけでなく、人が触れるオブジェクトには最低でも3つの要素が存在します。

形、色、音です。
触覚、視覚、聴覚を刺激します。
これらが複合的に作用することで「楽しい」や「心地よい」を生み出しています。

当記事で挙げるグッド赤ちゃんプロダクトについて、特筆すべきこれらの要素について深掘りします。

もいもい

義母がお祝いにくれた絵本です。
「もいもい~」の本文に合わせて、目玉のお化け?みたいなキャラクター (もいもい) が伸びたり小さくなったりする絵本です。まあ、意味は全く分かりません。
変わった絵本だなーと思っていたのですが、この絵本への食いつきは半端ないです!

特筆すべきポイントは「色」

  • 赤、青、黄主体の原色バリバリのパキッとした色使い

  • もいもいが浮かび上がるように背景はコントラストの効いた単色

はっきりくっきりとした、もいもい達が印象的です。

僕が双子を見ていて、顕著に感じた最初の発達は視覚です。
ある時期から僕の顔や吊るしたモビールを目で追うようになりました。

目の発達について引用します。

新生児の目の焦点距離は顔から16~24cm、認識する色は黒、白、グレーだけです。生後10~12週間すると、赤ちゃんは動くものを目で追い、特にはっきりとした幾何学模様のおもちゃやモビールなどを認識し始めます。色覚が発達を始めると、赤ちゃんはまず赤を認識します。生後3か月になるまでには、あらゆる色を認識するようになります。


ここからは想像なのですが、今までぼんやりとしていた世界が徐々に見えるようになるって感覚は、乳幼児にとって非常に面白いことなんじゃないかと思います。
白黒のモビールを吊るしていたのですが、何十分も凝視して最終的には疲れたのか大泣きするということが度々ありました。

もいもいは、乳幼児が「見ることができる」って体験を与える絵本だと感じています。

これって当たり前のことではなくて。
初めてできた!って体験は、乳幼児にとっても大人であっても感動と興奮に満ちています。
世界が広がった乳幼児にとって、色と形を認識できるってことがどれだけ楽しいことか。想像するだけでワクワクします。


もいもいからはペルソナ設計と緻密な研究の重要性を学びました。

もいもいが取り入れた乳幼児の特徴を挙げます。

  • 人の顔や目のようなデザインをよく見る傾向がある

  • 赤や黒等のはっきりとした原色を認識しやすい

  • 繰り返し音を好む

実はこの絵本、東京大学の教授が5000人以上の赤ちゃんを対象に調査を行い作成された絵本だとかなんだとか。調べてびっくりしました。

もいもいのペルソナ設計は見事です。
大人も子どもも楽しめる、ではなく生後3~12ヵ月の乳幼児に特化しています。
他の絵本では反応が薄かったうちの双子も、もいもいだけは食い入るように見つめます。ある時期を過ぎたらこの絵本意味わかんねーって笑うかもしれません。
でも特定の人を幸せにするプロダクトって、こういうものなんじゃないかと思うようになりました。

ちなみにもいもいという言葉自体にも、素敵な含蓄があります。

「もいもい」という言葉は、赤ちゃんの好む「繰り返し音」、「声に出しやすい、まみむめもの音」という理由から、私が選びました。これはフィンランド語の挨拶でもありますし、響きが可愛かったのでロジカルな理由は実は無いんです。

丹念な研究の末に作られた、形、色、音すべての要素を満たす絵本です。


Oボールラトル

定番のおもちゃですが、見事な造形に驚きました。

もいもいは視覚に訴えるプロダクトでしたが、Oボールは触覚です。乳幼児が触れるにあたって見事な形をしています。

特筆すべきポイントは「形」

  • 乳幼児のか細い指に絡まる穴の大きさ

  • 両手に丁度収まるサイズ

リンゴくらいの大きさのボールに10円硬貨程の穴が沢山開いています。


ハンドリガードという行為があります。
自身の手をジーッと見つめることです。そして、口に含み、体の一部であることを認識します。
うちの双子も3か月を過ぎたあたりから手を認識するようになりました。

視覚と同様に、触覚の発達は乳幼児にとって急激に世界が広がったように見えました。

手を動かすだけで楽しい。物体に触れることが楽しい。
きっと物体を掴むことは革命的でしょう。
そんな触れる楽しさを引き出す形をしています。

乳幼児向けのおもちゃは多々ありますが、手が動かせるようになったばかりの子では掴むこと自体が難しいみたいでした。
触れることはできるけど掴めない、親としてももどかしさを感じていました。

Oボールラトルは輪が接する部分が非常に細く作られており、おぼつかない手でも握ることが出来る。握れなくても穴だらけなので指に引っかかけて遊ぶことが出来る。
多分うちの双子が初めて遊ぶことが出来たおもちゃだったと記憶しています。

シンプルなデザインですが、ユーザが最も求めているもの、物体を握る体験を提供してくれます。

認識しやすいパキッとした色彩。穴の開いていない部分にはビーズが入っており、振ればシャカシャカと音を立てます。

可愛いキャラクターや凝ったギミックがなくとも価値を生み出す。
MVP (minimum viable product) とはこういうものなのかなって。いや価値は最大限なのでシンプルイズベストというべきか。

一見何の変哲もないボールですが、本当に提供したい価値を定め、価値提供のために不要なものを削ぎ落とす重要性を教えてくれました。


絵本「ごろごろにゃーん」

タイトルの「ごろごろにゃーん」という擬音とともに、様々な景色の中を猫たちを乗せた飛行機が飛んでいく絵本。
本文は最初と最後のページを除いて全てのページが「ごろごろにゃーんごろごろにゃーんと、ひこうきはとんでいきます」という驚きの内容です。

出てくる色は、黒、緑、水色、黄色のみ。
全体的に乳幼児に見やすいはっきりとした色や形は出てきません。

しかし、うちの双子はこの絵本が好きみたいで、ニコニコと笑ってくれます。
先に挙げたもいもいは「じっと見る絵本」、ごろごろにゃーんは「笑う絵本」です。

特筆すべきポイントは「音」

多分、ひたすら繰り返される「ごろごろにゃーん」という響きがいいんだと思います。不思議な絵の雰囲気と「ごろごろにゃーん」の響きが相まって、とても面白く感じるのかもしれません。

試しに、もいもいを見せながら「ごろごろにゃーん」と読んでも笑ったので、やっぱり音の響きが面白いだけなのかもしれません。

正直なところ、何故この絵本及びごろごろにゃーんの響きがここまでうちの双子を引き付けるのかわかりません。。。
決して記事を書くことに疲れたので適当に終わりにしようというわけではなく、本当によくわからないのです。

長 新太さんの絵本がうちの双子の感性にぴったりなのかと考え、図書館で大量に借りたりしたのですが、ほかの本では随分とあっさりした反応でした。キャベツくんシリーズは不気味なのか泣くこともありました。

なにはともあれ、ごろごろにゃーんは、絵本における言葉の響きの大切さを教えてくれました。

なぜかわからないが、乳幼児が本能的に好きな音がある。ってことなんだと思うんですよ。
きっとそれは大人の中にも眠っていて、バッハの音楽が人々に敬虔の念を呼び覚ますように、きっと根源的な正解に近い音の響きってのがプロダクトに実装可能なはずなんじゃないのかなと。

プロダクトデザインにおいて音の要素をないがしろにしてはいけないなと。


まとめ

僕がグッド赤ちゃんプロダクトから学んだものは以下の通りです。

  • 根源的な欲求に応える

  • 緻密にペルソナを設計し、検証を行う

  • シンプルで高価値のものを提供する

長くなりましたが、ここで紹介したおもちゃや絵本はとてもおすすめなので、どうか試してみてください。

お付き合いいただきありがとうございました。

この記事は、子育てエンジニア Advent Calendar 2021 12/14 の記事として執筆しました。


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