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石川明人『宗教を「信じる」とはどういうことか』ちくまプリマー新書、2022

 まさにタイトルどおり、宗教を「信じる」とはどういうことかをさまざまな観点からわかりやすく論じている。もうこのタイトル以上に何の紹介も要らないくらいだ。信じることや宗教に関することに興味が少しでもある人は、ぜひ読んでおいた方が良い本だ。
 おそらく中学生ならじゅうぶん理解できる平易な言葉遣いで親切に書いてある。使われているたとえも、参考として引き合いに出される人物も大抵多くの人が知っているようなものだし、引用される聖書の言葉も「そんな箇所があるなんて知らなかったよ」と思わせるものではなく、どこかで聞いたことのあるような聖句ばかりが使われている。しかも宗教用語やキリスト教に独特の言い回しも可能な限り避けられている。
 つまり、徹底的に宗教やキリスト教に詳しくない人に向けて書かれているのである。
 しかしながら、その読みやすくわかりやすい言葉遣いのまま著者は、宗教を信じる人の内面はどうなっているのかとか、信じるといっているが本当にそれは信じることになっているのかとか、信じているのになぜ人間はこういうことをするのかなどなど、思いつく限りありとあらゆる方向から「信じる」ということについて掘り下げてゆく。
 気になる小見出しを拾ってみると……「この世には悪があるのに、なぜ神を『信じ』られるのか」、「同じ宗教を『信じ』ていれば、人々は仲良くできるのか」、「神を『信じ』たら、善良な人間になれるのか」、「正しいことは、わざわざ『信じ』なくてもよいのでは?」、「『素直に』という副詞は『疑う』という動詞にこそふさわしい」、「存在しない神に祈る」、「神が支配していない事柄もある」、「不幸の理由を説明するいくつかのパターン」、「生徒に鞭打つ聖職者」、「『多くの宗教がある』という難問」……こんな具合である。知りたい、考えたい疑問が目白押しである。
 この本の平易な言葉遣いに引き寄せられて、大抵の人がこの「信じる」ことへの探究に、どんどんと連れ込まれてゆくこと請け合いである。
 もちろん、既にキリスト教を「信じ」ている人、「信じ」ていると思っているつもりの人も、自分を一度見つめ直すつもりで読むといい。「信じ」ることについての根本的な問題もたくさん論じられているので、たいへん面白く刺激的に感じると思う。
 自分ももう一度最初から読み直したいと思っている。


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