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義務教育学校に【個性】がない理由

こんにちは!いちろう@アラサー教師です。

先週は以下のような記事を書かせていただきました。

保護者のニーズは家庭の数だけ存在するため、全員のニーズを満たすことは事実上不可能だという話をしました。

さて、記事の最後に

私立中高一貫校は教育ビジョンが明確ですから、家庭のニーズを満たす学校を選ぶということも一つではないかと思います。そういう意味では、公立学校(特に義務教育学校)は地域の子どもが自動的に入学してきますから、保護者ニーズの矛盾も発生しやすいと考えることができるかもしれません。公立学校も、教育ビジョンを提示し、生徒が学校を選べるようにすることもこれからは必要になるかもしれません。

と書いたのですが、これがなかなか簡単なことではないのではないと気づきました。

今日は、「公立学校が独自の特色を出すことのジレンマ」について考えてみたいと思います。



学校の「市場化」


現在、義務教育学校では、地区の学校に自動的に入学するということが一般的です。家庭には学校の選択の余地はなく、学校には地域の子どもがランダムに集まってくるため、学校とミスマッチを起こす生徒や家庭がどうしても出てきてしまいます。

この問題の解決策として、「学校が独自の特色」を出し、家庭が進学する学校を選択できるようにする。ということが一つ挙げられます。

いわゆる「学校教育」の市場化です。

これにより、家庭が学校を選べるので、ミスマッチはなくなると言えますし、また学校側も戦略的に学校経営ができるようになります。学校のビジョンに従って、資源の投資にメリハリをつけることができるからです。

例えば、A校が「学力向上」を前面に出す学校であれば、教員は授業のための教材研究や放課後の質問対応に大きくエネルギーを注げばよいことになります。放課後の部活動などにエネルギーを取られることはなく、学校運営にメリハリをつけることができるといった感じです。

学校ごとに教育活動にメリハリがつくため、特色とする分野において教育の「質」の向上が見られるはずです。

以上のように、学校教育の「市場化」を進めることで、家庭は望んだ教育を受けることができ、また、学校は経営にメリハリをつけることで、結果「質」を向上させることができます。



「市場化」のデメリットと、「ジレンマ」


前節では、学校教育の「市場化」のメリットについて、

・ メリハリのある学校教育の提供

・ 資源の集中による「質」の向上

が考えられると書きました。


しかし、問題点もいくつか出てきます。

① (任意の物差しについて)学校の序列化が起こる

当たり前ですが、市場では序列が形成されます。つまり自治体内で、勉強ができる学校・できない学校や、部活が強い学校・弱い学校が生じます。これは、出身校の違いによる「偏見」や、国民の「階層化」を生むもとになってしまいます。

② 集まる生徒が似たり寄ったりになる

その学校には、価値観が似た生徒が集まるので、同質の集団となってしまいます。すると、異なる価値観の同級生と関わる経験が無くなってしまいます。このことから、国内で「価値観の分断」が起こる可能性が考えられます。

③ 学校生活が人それぞれで大きく異なる

学校によって、学びや生活が全く異なるので、「学校生活とは(大まかに)こういうもの」という共通の経験が失われてしまいます。


以上は、国内での「社会的差別」や「偏見」、「階層化」を生み出す可能性を孕んでいます。


義務教育学校の「特色化」を進めることは、メリットもありますが、単純ではないデメリットも確実にあるということが言えます。

つまり、現状の義務教育学校の「同質化」はその逆のメリット・デメリットを持っています。

これが、「ジレンマ」です。


以上のジレンマを踏まえると、「義務教育を終えてから、さらに学びたい人は自分が選んだ高校・大学に進学する」という今の制度は、ある意味ベターな解なのかも知れません。

「義務教育の年代からどうしても・・・」という家庭のニーズがあれば、オプションで「私立」という選択肢もありますし。



(まとめ)「ジレンマ」を乗り越えるために


さて、今日は「公立学校が独自の特色を出すことのジレンマ」について考えてみました。

「教育」は、決して単なる行政サービスではありません。

憲法で保障された権利であり、義務なのです。

学校の仕組みについては、現状で立ちいかない部分もあれば、全く逆に変革すれば全てが解決するとも言えない「ジレンマ」があります。

学校教育の側には、今よりもベターな解があるかもしれませんが、全てを補完する完璧なシステムの提供は難しいと言えます。

つまり、国民全体が「教育」をいい方向に進めていくためには、「学校」と「家庭」(時に「地域」)が互いを尊重しつつ、足りないところを補い合うことが大切なのではないでしょうか。


もちろん、公教育システムが、マクロな視点から時代に応じて柔軟に変化し、常にベターを求めてアップデートすることも必要ですが・・・。


今回も、最後まで読んでいただきありがとうございました!

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