ストレス

ストレスとは元来、圧迫とか緊張の意味ですが、メンタルヘルスに関連して言う場合は、動物が周囲から危機、脅威、嫌悪として受ける刺激のことをいいます。外敵、寒さ、騒音、ビタミン不足、人間関係、試験、仕事のノルマなどさまざまなものがストレスの原因になり得ますが、いずれにせよ危機であると判断された (ストレス) は動物に緊張を強い、一定の生理的反応をおこします。つまりストレスを受けると体内では大脳を介してがアドレナリンなどのホルモンの分泌を促し、これらのホルモンは体内にエネルギー消費量、心臓拍動数、呼吸数、胃酸、血糖値などを増加させ、それによって体内では血圧が上がり、十分な酸素が取り込まれ、筋肉収縮のための血糖が体の筋肉に十分行きわたり、動物が外敵への攻撃あるいは外敵からの逃走に都合の良いような体制を整えます。この反応は動物の防衛反応として下等動物から高等動物に到るまで同じように体内に仕組まれています。このようにこの反応自体は生命維持に必要で正常なものであり、危機を脱すると体は元の状態に戻ります。さて現代人の場合では、ストレスの問題は直接生命にかかわらない対人関係、仕事、生活など、自己の社会的安全保障が主なテーマとなってきました。それでそれからの緊張、不安、怒り、不満などは直接行動に出てじかに解消、発散はできません。高度に社会化された人間世界では許されません。しかし肉体のほうは正直にこれらのストレスに対する反応を示すので、上がった血圧や血糖値は空振りに終わり、この状態が長期間、慢性的に続き蓄積して体に変化(病変)をおこすことになります。このようなことが、高血圧や糖尿病などの心身症を起こすメカニズムです。ストレスはこの他に心の病気 (ノイローゼ、うつ病など) やわれわれの行動にも関わってきます。ストレスは長期間にわたってふりかかり、我々を痛めつけることに大きな問題があります。

ところで、ストレスは心身症などを起こすというマイナスの忌まわしい影響ばかりではなく、皆さんも日頃体験していますように、ストレスを受けることによってわれわれは今までの自分を見なおし生活をふり返って生き方の軌道を修正したり、新たなファイトを燃やすなどプラスの影響も大いにあります。そういうわけで現代のストレスフルな時代を生きるためには、いかにストレスを制して自分に有利なものにするかが問われます。

ここで、ストレスを受ける個人の条件とその結果を図解しますと、次頁の図のようになると思います。パーソナリティーではその人の責任感、感受性、価値観などが関係するでしょう。状況 (事情) とは、例えばその仕事に自分の昇進が係っているなど、その人の事情によってもストレスのかかり方が違ってきます。体の条件には体質 (遺伝的なものも含めて) や年齢などがあります。ライフスタイルには、例えばいつも仕事を家に持ち込むとか、昼休みには午睡を欠かさないなど、その人の習慣、生き方などがあります。解消手段にはホビー、スポーツ、適度な飲酒、自律訓練、ヨガなどのリラクセーション法、カウンセリング、よき話し相手などいろいろありましょう。この五つの条件の中で、ライフスタイルと解消手段の二つが、われわれの意思で改善しうる余地の大きい条件で、ストレス対策とはまずこの二つのことを念頭におくべきでしょう。現代ではストレスがあたかも空気のようにわれわれの周囲に四六時中あります。到底これからは逃れられません。現代を快適に生きるためにはいかにストレスをコントロールするかが最重要の課題と言えます。


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