ジャガイモの悪夢

今から10年以上前、今より1階級上のフェザー級で試合をしていた頃の話。青帯の頃までは通常時で68キロあって、特に減量もせずナチュラルフェザーで試合をしていた。

ところが紫帯になり、どんどん練習量が増えると共に体重も急降下。気を抜くと65キロ台になり、当時階級を落としたくなかった僕は毎日必死に飯を食っていた。

通常の食事に加え間食に菓子パンを2個。そして何より辛かったのが、夜練習から帰ってきてから食べるジャガイモのシチュー。ジャガイモが太りやすいと聞いて、毎日の日課として練習から帰ってくるとジャガイモのシチューを食べることを自分に課していた。

毎日同じものを食べるのは飽きるけれど、シチューは作り置き出来るから便利で、仕方なく練習から帰るとノルマとして毎日それを食べていた。これが本当に辛かった。もう毎日毎日ジャガイモばかり。練習を終え、家に帰ってくると、鍋を見るのも嫌だった。

減量がある人でもチートデイといって週に1度は好きな物食べる日があるのはよくある話だけど、当時の僕はその逆。週に一度、ジャガイモから解放される日があった。
そんな貴重な週に一度のノージャガイモデー。

なので、いつもノージャガイモデーの日の夜の練習後はウキウキしながら帰っていた。とはいえ、当時練習終わってから電車で最寄り駅についてもほとんど店はやっていなく、好きな物食べるといってもコンビニでなんか好きな物買って食べる位だけど、それでも凄く嬉しかった。

ある日のノージャガイモデー。練習を終えてコンビニに入った僕はペペロンチーノをチョイス。昔からパスタは好きで良く食べる。その日もレンジでチンして蓋を開けると、香ばしいニンニクの香りがプーンと漂ってくる。

うひょー!こいつはたまらん。このニンニクと唐辛子とベーコン、そしてジャガイモの組み合わせが・・

え、?

何?

ジャ、ジャガイモだと?!


僕は我が目と舌と嗅覚を疑った。なんでペペロンチーノにジャガイモが入ってるんだ!今日は貴重な貴重なノージャガイモデーだぞ!

僕はもう一度コンビニで買ったパスタの蓋をよく見ると、そこにはこう書かれていた。

「絶品ベーコンとジャガイモのペペロンチーノ」

泣いたよ。

練習で疲れていて、ベーコンまでしかチェックしなかったんだな。

その後、茶帯になり階級を落とすことにした僕は、ジャガイモの悪夢からも解き放たれることになる。

それ以来、ほとんどジャガイモは食べていない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?