高山が作家として更に飛躍することを願い創作活動を支援したい!~エッセイ「ガーターベルトの女」の作品化を目指して【336】
妄想家・夢想家無名居士の夢物語の記録です
無名作家高山のエッセイ「ガーターベルトの女」の
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【 随筆 】5.9 吉村大阪府知事の不味さとマスメディア
高山の作品から
随筆「Yとの嬉しい再会 11」
2018/01/02
Yのシリーズも後一つか二つのエピソード書いて、現在のYを書きたいなと思います。
Yと仕事を再びしてると色々思い出してまだ、分かりませんけどね。
トンネルや建設関係には、その人がどういうポジションに居るかを表す為に、ヘルメットに線を入れます。
これは、きちんと決まってないけど、大体は普通の作業員には線は入りません。
班長や会社の職員等に一本の線が入りますが、会社の職員でもある程度出きるようになると、二本の線を入れたりします。
昔は、この二本線に憧れましたね。
今は、線は要らないやって感じです。
今は僕は、二本線ですね。
中には、社長等は三本も四本も入れるのも居ましたが、今はそうでもないですね。
元請けも、所長は二本線で同じ感じですよ。
Yと初めて会った現場の会社は、何故か班長も二本線でした。
元々、トンネルを主にして立ち上げた会社でなかったからかもですね。
Yは僕が掘削班、コンクリート班の班長になって二本線を巻くようになると、良いなあと羨ましがりました。
しかし、じゃあ、お前が被ると言うと、自分自身はそんな柄じゃないと嫌がりましたね。
単純に子供が、カッコいい物を見て良いなあって感じですよ。
しかし、二本線とか一本線とか線がないとかは、今は関係ないなと思います。
勿論、分かりやすいようにしなくてはいけないから、するのに反対ではないですよ。
関係ないと言うのは、炊事や事務員全てが関わって現場が成り立つって事です。
二本線が現場を作ってるって訳ではない、って意味ですね。
昔、有る元請けの所長は二本線を巻かなくて無線なんで聞いたら、住民から苦情が来やすくて、その時に直ぐ発見されるから二本線にしないと言いました。
これには笑いましたけどね。
結局、若い奴、歳を重ねた人、それぞれの役割が有るんですよね。
そして、良い習慣は受け継がれて行くべきだと思います。
Yと初めて会った現場で、最後はコンクリート班の班長でした。
掘削班は、一つになっててコンクリート班と掘削班の二チームでしたね。
勿論、それを支える雑工は居ましたよ。
Yは、その雑工でした。
掘削班が掘った後を、本格的にコンクリートを巻いて行きます。
しかし、あるところ位からどうしても地盤が高くなっていきました。
掘削班がいい加減に地盤を計ってたからでしょうが、良く有るんです。
前に前に進めばお金になるから、ついついその辺りがいい加減になるんですね。
地盤が高くなると、コンクリート班が削るんです。
そうしないとコンクリートを巻く時に合わせにくくなるし、おかしなコンクリが出来ます。
最終的に検査で、地盤を削るように言われますからね。
この場合の地盤とは、地面ですね。
コンクリート班で、パワーショベルの免許持ってるの僕でした。
それもコンクリート班には、小さいパワーショベルしか無くて必死に削って土をダンプで出すんですが、その間も色々指示をしないといけないから、もう、うんざりしましたね。
時々掘削班から大きいパワーショベルを借りて削りましたが、ダンプに乗れるのも僕だけなんですよ。
自分自身で削って、自分自身でダンプを運転して土を出す。
その間にコンクリート班に指示を出すとなると、一人では足らないんですよね。
皆、身体を使う作業は出来たけど、機械の作業は免許が無いのと乗るのが下手でしたね。
身体を使って、動くのはとても動いてくれましたけどね。
Yが空いてる時は手伝って貰ったけど、彼は彼で雑工が大変なんですね。
それに、彼は手抜きしないから、更に大変だったと思います。
Yは、掘削班には火薬の免許持って無かったから入れなかったけど、雑工としては若いのにオールマイティーでした。
コンクリートも練れるし、溶接やガスも使えるし器用でしたね。
知らない事も教えたら、覚えるの早かったです。
僕もYに、ダンプのタイヤ交換を教えて貰いましたからね。
皆が重宝してたから、あちこちで呼ばれてました。
そして、それを嫌がらずにむしろ喜んで引き受けてたから、更に仕事は増えてましたね。
一万八千円貰ってたけど、Yには少し上積みしても良いのではと、あちこちから話しが出た位です。
給料の件は、Y自身が周りと差が付くのは悪いから、といってましたけどね。
僕は、そういう状態がずっと続いたから、掘削班の班長に文句を言いましたよ。
この班長は、何度も出るけど他人のフィリピン人妻を寝取ってかつては逃げた人で、僕は子供の頃から知ってる人でした。
現場に最初から居たから、実質的に現場を回してるのはこの人でした。
評価の別れる人ですが、僕にはとても良くしてくれたし、少なくともこの現場では良かったですよ。
未だに寝取られた方は探してて、会ったら殺すと言ってますけどね。
当時、四十代後半に入るか位だったと思います。
その後、一緒に仕事してないからどうなったかまるで分かりませんし、年齢も何歳だったかは記憶だけです。
掘削班は、何十メートルも先を行ってるからこの調子である程度計ると、ずっと地盤が高いんですよ。
仕事終わって班長の部屋に行って、余りに地盤が高くてこっちはやってられないから、何とか出来ないかと言いました。
部屋には良く行ってましたね。
掘削班の班長してても、仕事の悩みとか教えて貰ったり色々して貰いました。
相部屋に居た人は四十代に入ったばかり位ですが、この人も昔から知ってる人でしたから班長は、お酒を飲まなかったけど、その人が、まあ、●●ビールでも飲めと出してくれてました。
この二人にとっては、僕は父の会社が潰れて来た苦労してる若者でしたね。
班長はゴムでトレーニングしながら高い声で、分かった日曜日に俺とお前とYで一気に削ろうと言いました。
ゴムでトレーニングは日課で若いのにまだまだ、負けらないが口癖でした。
無給での出勤になるのは、気にして無かったですね。
Yにも言っておけ、で話しは終わりです。
僕は、まさか日曜日に出てくれる、と思わずほっとしました。
それに、班長自ら出るって事は削るのやってくれるんだなと思うと、良かったでしたね。
班長は、腕が良かったですからこの人が出れば、日曜日だけで何とかなるなです。
しばらく雑談して、ありがとうございますと言って部屋を出ようとすると、何時でもお前が言うならなるべく相談に乗るからと言われました。
自分の部屋に戻ると、相部屋のYがテレビを観てたから、日曜日無給だけど手伝ってくれないかと言いました。
Yは何をするのかだけ聞くと、いいよと答えました。
Yなら、無給でもOKと言うだろうと思ってましたね。
Yもほとんど最初からのメンバーで、この班長には相当世話になってたし、僕とは仲良かったですからね。
日曜日に班長が、作業着に着替えて僕らの部屋に来ました。
僕らも作業着に着替えてたけど、先に来られるとは思いませんでした。
そしてかなりの量になるけど、一日で仕上げるぞと言いました。
出来たら三時位には目処を付けたいな、とも言いましたね。
現場に行く車の中で班長は、Yにダンプに乗れと言いました。
ここのダンプは二十トンダンプで大きかったから、ダンプ二台は要らないからお前は削った所を計るのと、どの程度削るかを指示しろと言いました。
僕は、てっきり自分自身もダンプに乗ると思ってたから、計るのは皆でやればと言うと、あのダンプは二台も要らないしどの程度削るかを見るのと、削った後をきちんと見ろよでした。
それからが、まあ戦争のようでした。
班長は、一番大きいパワーショベルに乗ると削る。
僕は、大体どの程度削るかを指示を出す。
Yは、ダンプで土を運ぶです。
班長の作業が早すぎて僕は、土まみれになりながら計りましたね。
一流の坑夫が急いで仕事をするとこうだ、と言う見本のようでした。
昼ご飯を、Yが車で近くのコンビニに買いに行って、三人で食べました。
八時に始めて、ほとんど休み無く三人で働きましたね。
昼には、最後の仕上げに地面をならすだけでした。
休憩所で、三人でコンビニの弁当を食べながらゆっくりしました。
班長は、どろどろに汚れた僕を見て笑ってましたけどね。
昼は、ゆっくりしてましたね。
僕が、昼からは僕がダンプに乗ろうかと言うと班長が、お前が計れば良いからと言い、それからYには計るのは難しいかもとも言いました。
Yは計れると言い返しましたが、そこから班長が話し出しました。
Y、お前は、こいつに付いていく事になると思うよ、と僕を指しました。
お前は火薬の免許取ったら、そのうちこいつの下に付くようになるよとも言いました。
僕は、何が言いたいのかいまいち分かりませんでしたね。
Yもそうだったと思います。
班長はYに、お前が耳が悪いからとかでなくて、こいつはリーダーになるし、お前はその下でせっせと働く事になると思う。だけど、それはお前にとって悪い事じゃないし、俺も若かったらこいつに使われるようになってたと思う、と言いました。
結局、作業員には役割が有るんだよ。お前は、一生作業員だよ。
俺みたいにな、と言いました。
僕は、俺はそんなに偉くならないです、と言い返しました。
そしたら、それじゃその若さで、腕がまだそれほどある訳じゃ無いのに掘削班の班長やって、今はコンクリート班の班長やってるのは何故だと思うか?それに、偉くなるとかでは無いんだとも付け加えました。
それと、俺がお前が掘削班の班長してる時に良い坑夫が少ないから、俺の右腕とも言える●●を貸しただろう。
あいつが言ってたぞ。良く働くけど、一番驚いたのは人を使うのが上手いってな。
僕が掘削班の班長をしてた時に、メンバーが班長のよりも弱いからと、良い三十代後半の坑夫を貸してくれたんです。
普通ならあり得ない事です。
普通なら班が反対だとライバルですからね。憎み合う事も有るのが普通です。
班長は続けました。
結局、向き不向きって有るし、リーダーになる人間には、そういう気質が備わってるんだよ。
だから、歳上でも皆お前の言うこと聞くし、お前を助けようと思う。
そういうのは、ここに来てしばらく見てたら、あー!やっぱり、お前は親父さんの息子だなと思ったぞ、と続けました。
僕が、そうですかねと言うと、更に続けましたね。
そうだよ。腕は、まあまあ位にしかならないかも知れない。
だけど、人の輪を作っていく上手さに、俺はこいつはリーダー気質だなと思ったし、何かしら起これば責任取るし、激しく怒るの見てたら面白かったよ、と言いました。
Yは、俺は出世しないのかなと、笑いながら聞きました。
まるで、出世しなくても良いような口振りでしたね。
本当に、Yにとっては出世等は、昔も今も興味ないですね。
班長は、坑夫にとって出世って何かを考えてみたら、お前が負けてこいつが勝つって事じゃないんだな。
それぞれの持ち場が有るって事だよ。
お前は、こいつになれないし、こいつはお前になれない。
しかし、お互いがトンネルを掘るって目的で頑張る。
そこに、当然将来は多少の上下関係が出来てもそれが、重要じゃないだろう。
こいつの親父は、社長になってもとにかく坑夫を大事にしたぞ。
こいつが社長になるかは分からないけど、リーダーになるだろうな。
そしたら坑夫を大事にするよ。
Y、見てたら分からないか?こいつは、使える人間とはとても仲良が良いけど、使えない人間、或いは働かない人間はかなり早めに相手にしなくなる。
そして、使える人間を本能的に上手く使いこなす。
使えないと言えば、二十代の沖縄から来てた男の子を、三日目位でコンクリート班から外したのこいつだぞ。
余りに使えないのと、サボるから帰れ!と怒鳴って、帰らせたんだぞ。
ありゃこいつのおじさんが、つまり所長が連れて来てた奴なのに、そんなのこいつに関係ないんだよ。
普通は、おじさんが連れて来てるなら気を使うのにな。
おじさんも俺とは気が合わないけど、こいつの判断に任せたのは偉いよ。
おじさんが居るからここで班長になれたんじゃなくて、皆が押し上げたんだよ。
それに、こいつのおじさんは、実はリーダー向きより職人だよ。
おじさんは、とにかく今はこいつが、リーダーになってもなれなくても、坑夫として通用するように鍛えてるんだよ。
Y、お前も歳上に好かれて年下に恐れられる。
しかし、お前の場合は時間がかかったし無意識の計算が無いけど、こいつには無意識の計算があるよ。
だから、こうやって俺もこいつが言うならってんで、日曜日に無給で出てる。
今はまだまだ、若いから助けてやらないとな、という気にさせる。
そのうち俺くらいの歳になったら、お前がこいつに使われてると俺は思うよ。
だけど、それは、それぞれの役割なんだよ。
トンネルを掘るってのは、それぞれの役割を一生懸命こなすって事だよ。
どっちが上とか下とか、本当はないんだよ。
それにしても、こいつには親父の血が濃く流れてる。
かと言って、親父の威光をどうこうってのもまるでないけどな。
そう言うと笑った。
Yはそこで、「それなら俺は、ずっと子分で良いよ!!」
と言ったから、班長と笑った。
しかし、Yにはそう言う純粋さがあった。
それを、単純だとか馬鹿だと言う人も居るかも知れないけど、僕達は思わなかったです。
そう言う純粋さは、僕には薄かったと思う。
班長の言う通り、使える人間、或は一生懸命やる人間を大事にしたが、使えない、一生懸命やらない人間は、無意識で大事にしなかった。
班長は、二人とも仕事での度胸も有るし、お互いが尊重しあって立場が変わっても仲良くだなあ、と最後に言った。
結局、昼休みが終わって地盤の整地は、一時間程で終わった。
流石に、班長が出てくると早かった。
班長は、ここの現場が貫通して後は雑工が多くなると、台湾行っての仕事を色々な人に声を掛けた。
僕もYも声を掛けられたが、次の短いがトンネルに行く予定だったので断った。
特にYは何度も誘われたが、僕はYに辞めておけと言った。
台湾には行ったことが有るし、この班長は何度も行っていたが、果たして、この班長がここのようにYを扱うかは、僕には不安があったからだ。
現場が変わったり立場が変わると、この班長は人も変わると言われていたからだ。
ある時、班長が怒って部屋に来て、Yを引き留めてるのはお前かと言った。
僕は立ち上がって、Yは俺の子分ですからと言った。
二人の間に少しだけ緊張が走った後に、班長は笑いながらやっぱりお前には負けるな、と言って出て行った。
しかし、班長が言うように立場は変わっても、誰が上で誰が下とかは無いんですね。
一つの目標に向かって、それぞれが協力する事です。
Yは、最近この話しを思い出して、俺は子分だからを何かと言えば言うようになった。
僕はその度に、こんな出来の悪い子分は知らんと笑う。
Yは、今回はたまたま僕に引き上げられたが、きちんとした観察眼のある人間なら、Yを欲しがるだろうと思う。
僕の中では、周りの僕と同じ立場の人間がYを放っておいたのは損をしたし、馬鹿だなと思う。
一生懸命やって出来る坑夫を探すのは、とても難しいからです。
Yが、耳が悪いと言うのに偏見を勝手に持ってしまった連中は、馬鹿だとはっきり思いますね。
同じ事を元請けの所長も言うし、他の作業員も言いますよ。
Yは、耳の事が有ったからこそ、一種の逸材になれたのかもとも思いますね。
そこにたどり着くまで、彼がどれだけ苦労したかは、想像するしか出来ないですけどね。
結果的に、あの時班長が言ったことに近い形にはなったけど、これは僕が偉いとかでは無くて、役割です。
それぞれの役割が有るんですよ。
僕個人の気持ちは、坑夫で居たかったってのも有ります。
皆で仕事してそれが、上手く行った時にどろどろになりながらも、終わってトンネルを出るのは最高の気持ちですからね。
これを一度でも味わうと辞められませんって位、気分の良い物です。
どちらにせよ、トンネルは特にチームだと言うことです。
それを忘れてはいけないですね。
おわり
高山の作品紹介
次回は随筆「Yとの嬉しい再会 12」
「ガーターベルトの女」~映画化のために
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「ガーターベルトの女 外伝」(フィクション編) 1
「新・ガーターベルトの女 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
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