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人のこと言うてられへんで、あんた

先日、私の仲のいい友人がとても天然だということを書いた。
ですが実は斯く言う私もだいぶ抜けているところがある。あれだけ友人の結構強烈なエピソードを晒しておきながら、自分のことは書かないと言うのは何だか許されないので、しっかり自分のこともここに記しておこうと思う。

直近で起こった天然エピソードといえば旅先でのこと。
長年繋がっている後輩と少し前に二人で旅行に行った。もうかれこれ8年は繋がっている自分のことをよく知ってくれている数少ない後輩なのだが、実は一緒に旅行に行くというのは初めてだったので楽しみな反面、ずっと行動を共にするという点においては満足させてあげられるか不安に思うところもあって。
というのも、その後輩は旅行直前まで様々事情があって忙しかったため旅の行程や宿泊先は全て自分が取り決めていたため、まずそこに対して彼にストレスが溜まったりしないか心配だったのだ。

まあそんな不安も彼が旅行のはじめに放った言葉で若干和らいだ。
「宮城ってわんこそばのとこやと思ってたわ。めっちゃ食べる気でおった。笑」
「おいおい」と思う反面、宮城と言われてもパッと何も浮かばないほどには無知な状態で完全に身を預けに来ていた彼に少しばかりホッとした。
そんなわけで後輩の天然エピソードを先に披露してしまったわけだが、別に話をすり替えようとしている訳ではない。きちんと私のエピソードも書くのでご安心を・・・。

その日は共通の友人と会ってお昼ご飯に牛タンを食べたりその子の家でのんびりと話したり仙台城址近辺を散歩するというコースだったので、久々のトークに花を咲かせていたわけなのだが、気を引き締めるのはそこから。

夕方、秋保温泉街のホテルの方へ向かっていきチェックインをして夕ご飯を食べる所に行き着くまではなかなかに気が抜けない。
なんてったって行程を担っているのは自分。何か手違いが起きないように穴のあくほどホームページを何度も見て、降りるバス停を間違えないように行き先や料金もチェックしてきた。
そんな事には頭が回るのに考え事でいっぱいだった私は、そもそもバスに乗るときに整理券を取るのを忘れかけるというミスを早速犯してしまう。
異郷で危うく運転手さんにご面倒をかけるところだった。できる後輩がいてくれてつくづく良かったと思います。

なんとかホテルも無事にチェックインして予定通り段取りを済ませる事ができ、思っていた以上にホテルの部屋も広くて料理も美味しく温泉も気持ちよくて1日の疲れはしっかり取れたわけなのだが、問題は次の日。

翌日は6時半に起きて温泉に行く準備をしていた。というのもそのホテルには露天風呂が二つあって前日の夜に入った方は洗い場があったのだが、もう一方の方はそのまま直接入る温泉だったため朝に入ろうという事にしていたのだ。
浴衣を着てマスクをつけて部屋を出て露天風呂に向かう。幸い人も他に一人しかいなくてほぼ貸切状態で入ることができそうだ。
入る準備をして手ぬぐいを持って掛け湯をしてから湯に入っていく。外がひんやりして寒いぐらいだったのでお湯の温度もちょうどいい。ゆっくり浸かろうとしていたその直後。横にいた後輩がまじまじと私の顔を見つめて言い放った。


「え、マスクしたまんまやで」


(世にも奇妙な物語のテーマが流れる)
お分りいただけただろうか。私はマスクをしたまま平然と風呂に入るという奇妙奇天烈極まりないことをしたのだ。
「うわ、ほんまや」と慌ててマスクを外したものの改めて昔から治らないこういう抜けた部分に赤面してしまった。裸にマスクてあんた、冷静に考えたらやばい絵面やん、一歩間違ったら変態やで、と自分に突っ込んだ。

後輩も普段の真面目すぎるくらいな私を知っているので、これはボケているのかはたまた天然なのかと考えさせてしまったほどだ・・・。


思えばテストでいくら勉強してもしょうもない所で凡ミスをして高得点を逃すことは学生時代に何度もあったなと思う。小学2年生のときに漢字の小テストで毎回100点を取って成績を競っていた唯一の子に凡ミスで負けたことを今でも覚えているし。
そんなわけで基本的に勉強や論理立てて考えることが出来ないわけではないし、普段はむしろ気が向きすぎる事があるくらいなので「よく気が回るね」と言ってもらえるくらいなのだが、その分完全に意識が逸れてしまう部分が出てくるので私の不器用さが余計際立つ。

で、話を戻そう。温泉に入った後は朝食を食べに行くために、その日の旅行の予定やチェックアウトのことを考えながら浴衣のまま扉まで行って部屋の外に出ていく。少し歩いてエレベーターのところまで行ってその時、足元の違和感に気づいたのだ。


「あ、スニーカー履いてきてもうた」
後輩「え、なんでなん」

(世にも奇妙な物語のテーマが流れる)
え、なんでなん。それはこっちが聞きたいぐらい。浴衣にスニーカーというミスマッチ。異種格闘技でしょうか。むしろ新手のファッションになりません?否、なりません。
スリッパはきちんと扉の前に揃えてあったのになぜ私はわざわざそっちを履いたのだろうか。ねえ教えて、自分。

でもそれ以降は無事に何事もなくご飯も食べる事が出来、チェックアウトをして温泉街を散歩しながら朝の清々しい空気の中、有名なおはぎのある店へ向かっていく。

ちなみに「さいち」というスーパーに売っているのだが、開店前から行列ができるほどの人気ぶり。めちゃくちゃ餡子たっぷりだけれど甘さはしつこくなくて、和菓子好きな私は大満足。
きなこや胡麻といったオーソドックスなおはぎに加えて、納豆という気になるものもあったので秋保温泉に訪れた際はぜひチェックしてみてほしい。

と、宣伝しつつそのあとはバスに乗って仙台駅へ向かい先日紹介したAさんとその彼氏さんと共に観光をしたのだが、そこでもやらかす。

はじめに訪れた定食屋さんで注文した直後にメニューの冊子を立てかけるとき、冊子の角が呼び出しボタンにどストライクで直撃し、「ピンポーン」と呑気な音が店内に響き渡る。
「あー、すいませーーん!!違います!申し訳ないですー!」と平謝りすると「あ、よかったでーす」と店員さんも笑って返してくれた。
田舎のアットホームなお店でよかった・・・。
後輩もその姿に「やると思った」と半ば呆れている感じで。なら早く止めてくれや・・・な感じだったが、観光自体はとても楽しく終える事が出来た。


東京へ帰って最寄駅に着いたとき、あまりの疲れからICカードのタッチパネルに家の鍵をずっと押し付けていたのは絶対に知人以外に口外できないと思ったけど、この際書いちゃおう。

そんなこんなで天然エピソードが普段から絶えない私だが、その不器用さ込みで私と仲良くしてくださる温かい皆様には本当に頭が上がらない。
こんなくだらぬエピソードを最後まで読んでくださる方にも感謝。ありがとうございます。

改めて失敗やうっかりあってこそ人間らしいなと思える瞬間が幾度もあるし、私はそんな人たちのことがとても愛おしい。
だからこそ自分もそういう部分は隠そうとせずに「これが私やねん」と胸を張れるくらい自信を持ってこれからも生きていきたいなと思う。

読んでくださりありがとうございます。 少しでも心にゆとりが生まれていたのなら嬉しいです。 より一層表現や創作に励んでいけたらと思っております。