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帰るところはどこ?

またまた知らぬうちに月日が経ってしまい8月もいつの間にか終わってしまった。1ヶ月ぶりの更新。
あんなに暑かったのに東京は急に肌寒くなって、季節は気まぐれだなあと思いながらも私は秋が好きなので、園庭や帰り道に黄色い落ち葉が多くなったことやセミの鳴き声がパタリと止んだこと、道ゆく人の服装がほんの少し変わったことでほんのり感じられる秋の予感を楽しんでいたりする。

なんだかんだで夏は怒涛のように色んな事をこなしていたので、あまり長かった感覚はない。
普段のイラスト制作やダンスレッスン、読書やピアノの練習という日課に加えて、ダンスのイベントに出たりギャラリーへのイラストの出展が決まったりとイレギュラーなことも多くあったので個人的には充実した夏を過ごせた。

とは言え、相変わらず日常生活の仕方はさほど変わっていない。去年あんなに恐る恐る帰省していたのが嘘みたいに感じるほど感染者は増えてしまっているし、堪えきれずに羽目を外してしまう人も街中で見かけるようになって。
だから余計にそれを感知するアンテナも敏感になって、必要でないこと以外は家で過ごせるような暮らし方をさらに習慣づけるようになった。

今年は夏はおろかお正月以来一度も帰省できていない。
まあこのご時世、なかなか思い切って帰省をしようという気にもなれないし。でも不思議とさみしいとも思わなくなった。

この前ゲリラ豪雨が降って嵐のような雨が去って行った後に子供たちと窓の外の雲を眺めていた時のこと。風が強くて早送りしているみたいな速度で流されていく雲を見てある子が「雲っておうちどこにあるんだろうねー」と言ってきた。
「雲のお家」という発想が面白いなあと思いながら私も「どこかなー?雲さん急いでるから遠くにあるんじゃない?」などと返しながら一緒にその様子をしばらく眺めていた。
すると話題は「お家」の話に移って「先生のお家はどこー?一人で帰るの?パパとママはいないのー?」と聞いてきた。大人だけの社会では絶対交わされる事のないこういった子供の質問が私は大好きである。

まだ2、3歳の子たち。私たちのことも仕事じゃなくて保育園に遊びにきていると思っているので「先生はお仕事行かないのー?」と聞いてきたりする。可愛らしい。

だからこそこういった質問をされた時に自分はふと立ち返ったりする。
その時もその子の素朴な質問がずっと頭から離れなくて「私の帰る場所ってどこだろうなー」と帰り道に考えていた。

「迷子の迷子のお兄さん、あなたのおうちはどこですか?」と頭の中の私が替え歌を歌い始めた。呑気ね。


家族という点で言えば間違いなく私の実家は大阪にあるけれど、私は実家に帰っても自分の部屋にいるばかりであまり家族と深くは関わらない。むしろ一人暮らしをしている今の東京の一角にある安くて古くて狭いアパートにいる方が家族と電話して深い話を交わしている。じゃあそこが本当の家なのかと言われてもいずれはその家を私は出ていくわけだし、本当のお家ってどこなんだろうと思っても私は明確に答えられる自信がない。

でも結局のところそれでいいのかなと思っている。居場所を一つに絞ったり決め切ってしまうから、人は居づらさを感じた時に心も窮屈になっていくわけで、むしろ帰るべきところなんて寛げる場所であったらいくらでも存在していいと思う。

今年の年始に大阪の私の母校の小学校に帰った。恩師の先生に卒業以来自分の言葉で感謝を伝えられていないのが心残りで訪ねたのだが、先生は温かく迎えてくれ「重く捉える必要ないんやから、いつでも帰ってきいや」と声をかけてくれた。私はそれを言われた時にとても心が軽くなったのを覚えている。
それと大学卒業時、教職課程を担当していた先生に「家は大事だから自分が寛げる場所にしたほうがいいよ」と言っていたことも、これを書きながら思い出した。

それは広さとか清潔さというところの話ではなくて心の快適さとして得られる寛ぎなのだなということも、社会人4年目にして身に染みて実感する。

そう思うと私には帰る場所がいっぱいあるなと思う。保育園だって頼れる先生方と素直な子どもたちと過ごせる時間の充実を思うと仕事だけれど家のようにも感じるし、学生時代を思い返せば音楽室や保健室みたいに勝手に家と思っていた場所が沢山あったなあと。

なかなか思うように色んな場所へ行けない日々が続くけれど、心の拠り所になる場所や人の存在があればある程度は日々ネガティブな気持ちを抱いても、気にせず生きていけるんだなと感じたこの頃である。


私はそうしてこれからも特定の家を持たずに、心置きなく帰る事のできる場所を増やしていくのだろうなと思う。


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