見出し画像

無表情



 表情というものは素敵だ。

 私はあまりおしゃべりが上手な方ではないので、文章にするとついつい気持ちが溢れすぎて長ったらしくなってしまうし、まとめるのが苦手だ。だから、絵や音楽やダンスといった非言語表現の方が好きなのだと思う。
 「じゃあお前は今何で書いてんねん」と思われただろうが、苦手だからこそ毎日言葉にすることを敢えて自分に課したのだ。

 まあそれはさておき、私は非言語な表現の中でもダンスや芝居は極めて好きだ。
 その人しか持ち得ない表情をきちんと見る事ができるから。絵は動かないし、音楽は見えないのに対して、身体表現はきちんとその人自身が魅せている。だから観ているのが楽しい。

 楽しい、嬉しい、哀しい、悔しい、様々な感情を体や顔で表現できる人は素敵だと思う。その目の向き、眉毛の動き方、呼吸の深さ、同じ動きでも顔の造形が違うだけで、全く違う雰囲気が出る。
 だからこそ見ていて心地いい。

 私は表情の中でもとりわけ無表情が好きだ。
 無表情というが、私はあれを立派な表情だと思う。無表情は時に、いけないもののように扱われるけれど、私はとっても魅力ある表情だと思う。

 表情豊かな人はもちろん素敵だ。でも無表情は何かをこちら側に考えさせる魔力のようなものがあるから好きなのだ。「真顔」ではない。「無表情」だから好きなのだ。

 だから街中へ出るとついつい一人でいる人のことを観察してしまう癖がある。(悪趣味なのかもしれないが、決して馬鹿にする材料にするわけではない。)
 無表情になりやすい状態だからこそ見ていて様々な発見がある。

 ビルの近くでタバコを吸っているお兄さんの俯きがちな無表情。夜道をとぼとぼ歩いているおばさんがケータイを見ている時の無表情。朝、公園で木を見上げていたおじいさんの目を細めた無表情。鳩を観察している子どもの目を見開いた無表情。 
 赤の他人なのに「あ、素敵だ」と思う瞬間は唐突にやってくる。

 なぜだろう。その無表情に行き着くまでの、余白にある物語をたくさん想像させてくれるからなのかもしれない。

 心から何もなくなる事なんてきっと死ぬまでない。何かしらの感情が渦巻いているからこそ顔や身体からにじみ出ているのだと思う。

 無表情ってやっぱり素敵だ。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

ご興味あればサポートしていただけると幸いです。表現者としての活動費や質の向上のために役立てたいと思います!

観ていただき大変光栄です!
4
フリーランスのイラストレーター。 「彩りで日常彩る」がコンセプト。 エッセイイラスト「つらつら」更新中。 イラスト、文章、ダンス、音楽など様々な表現が好き。 ホームページhttp://www.ichio.info/
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。