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ひきこもりの贈り物 IN&OUTの余白に/一日一微発見143

東京のコロナの感染者数が200人を超えたり下がったりが続いている。
今は、浜松にいるのだが、誰も好きこのんで、このタイミングで東京に行くという人はいない。

「今はちょっと行く気がしないね」と、会う人誰もが口にする。

FBでニュースを読んでいたら、京都の観光業は壊滅で、前年と比べると90%以上の客が減ったのだという。
東京オリンピックでの観光立国の夢にひたっていた去年のことが、全くウソのようだ。

この状況は、もはや短期ではおさまらないことを誰もが感じている。バタバタとこの後、堰を切ったように、休業のニュースがこれから日々舞い込んでくるのだろう。

新コロナは、すべてを停止させた。
「止まれ」と告げているのだ。

しかし、贈り物もある。それは「ひきこもり」による思考する時間と読書である。

今日も一冊読み終えた。
とても有意義で、未来を感じる読書だった。

それは、ブエノスアイレスの小説家、J.L.ボルヘスの講演録『七つの夜』である。
ボルヘスが1977年にコリセオ劇場で行った一連の講談テキストだ。

この講談は「神曲」「悪夢」「千夜一夜物語」「仏教」「詩について」「カバラ」「盲目について」から成るが、それが語られたのは、6月1日から8月3日までの間。

ちょうど僕が今この本を読んでいる日付とほぼ同じ頃、この本は「語られた」。

因縁。そのことに気づいた時、正直、ささいなことなのに、ギョっとした。
偶然が、宿命や必然に変わる時を体験したのである。

すべての章に刺激されたが、特異なのは、「盲目について」である。
「ひきこもり」の究極のリアルがここに描かれている。
ボルヘスは片目が全盲で、もう一方も「ほぼ」見えない。
盲人の世界が、真っ暗闇ではなく、色がついていることから彼は説きはじめ、「失ったもの」の代償として得られた「別のもの」について語る。

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