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腸内環境改善にフードロス削減。コオロギ粉末がもたらす未来とは【ICHIKAWA COMPANY 社会実証実験レポート】

こんにちは、ICHIKAWA COMPANYです。

今回のレポートは、「コオロギ粉末の経口摂取による腸内環境改善の実証実験」についてです。本実験は、コオロギパウダーを混ぜ込んだクッキーを用意した、食品臨床実験です。コオロギパウダーの摂取前と後の糞便を採取し、腸内環境の改善効果(感染防御作用、抗腫瘍作用、免疫調節作用、アレルギー症状の改善等)を検証することを目的としています。

今回は、株式会社BugMoのCOO西本 楓さんに、コオロギ粉末を経口摂取することで得られる効果や、描いているビジョンなどについて、お話をお伺いしてきたのでお届けします。

海外インターンで感じた「食」への課題

――コオロギパウダーを活用することになったきっかけを教えてください。

西本 楓さん(以下、西本):コオロギに出会ったきっかけは、元々私が昆虫が大好きだったといううことと、大学1年の時にアフリカのウガンダに滞在していたことが始まりです。

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当時、私は食育や給食の改善を目的に、現地の小学校でNPOのインターンをしていました。しかし、色々と食育について教えても、現地で調達できるタンパク質があまりなかったんです。

そのため、食育を教えるだけではなく、その地域で調達できるようなもので栄養価の高いものがないかと考えていたところ、昆虫食を思いつきました。

昆虫食であれば、ウガンダでも簡単に調達し、調理することができます。また、ウガンダの人たちに限らず、日本人にとっても栄養バランスが良く、健康にも繋がるのです。

そういった背景から、昆虫食の中でも特にメジャーで扱いやすく、味や見た目の問題がない昆虫を探していたところ、コオロギにたどり着きました。

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コオロギに対して、「ゲテモノ」とか「気持ち悪い」ってイメージを持つ方も多いと思うのですが、実際はタンパク質がやオメガ3が豊富に入っており、とても栄養価に優れた食べ物なんです。

コオロギは他のいくつかのタンパク質とは異なり、ホルモンバランスの乱れなどの副作用がありません。また、亜鉛、鉄分、カルシウム、マグネシウム、ビタミンB12など栄養素や、マグロ同等量のオメガ3が含まれています。

しかし、弊社でもブラウニーのようなクリケットバーと呼ばれる商品を販売しているのですが、タンパク質やオメガ3が豊富に含まれている食品は、そう珍しくはありません。

そういった従来の健康食品と比較した時に、コオロギ食品が最も長けていることは、「腸内環境の改善」です。コオロギは、栄養が豊富に含まれているだけではなく、腸内環境にも優しい食べ物なんです。

――本実証実験にエントリーした理由を教えてください。

西本:海外では「コオロギによって腸内環境が改善された」というデータがあるものの、国内でそのようなデータはありません。そのため、私たち自身でそれらの効果を実証することができれば、もっとコオロギの良さを認知してもらえるのではないかと考えていました。

また、「コオロギによって腸内環境が改善された」というデータは外国人で検証したものなので、日本人に摂取してもらうことによって、日本人の体でも同じ結果になるのかどうかを検証してみたいと思っていたんです。

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今は運動している方向けのプロテインバーなどを販売しているのですが、本実証実験で良い結果が出れば、もっとお客さんの層を開拓することもできます。

そういった理由から、腸内環境に関しては、元々やりたいと思っていたものの、実証実験となると資金や人材、場所や医療機関などの調達をしなければならないことから、非常に頭を抱えていました。

やりたい気持ちが募っているものの、実現化できずにいた時に、本実証実験のお話を知り、すぐにエントリーさせていただきました。

コオロギ粉末がもたらすたくさんの効果

――本実証実験を行うことで、どのような効果をもたらしたいですか?

西本:良い結果が出ることによって、説得力も増すため、コオロギ食の素晴らしさを世に広めることができます。また、より多くの層に食べてもらえるチャンスでもあります。

実は、コオロギはお年寄りにもぴったりな食べ物なんです。例えば、人間は歳を重ねるごとに、ビフィズス菌が減少し、健康に害を及ぼす悪玉菌が増加してしまいます。

しかし、コオロギを摂取することによって、善玉菌を増加させ、脂質代謝や免疫力を向上させることができます。

実際に、海外の研究では、ビフィズス菌が50倍に増加したという結果も出ているんです。さらに、タンパク質やオメガ3といった栄養素が豊富なことは勿論、コオロギには旨味成分が入っているため、唾液が出にくくなってしまったお年寄りの方でも、旨味成分によって唾液を出やすくさせることができます。

また、牛や豚と比べると、コオロギの育て方は非常に環境に優しいというのも特徴です。そのような理由から、コオロギを食事に取り入れることによって、環境への負担を減らすことにもつながります。

こういった様々な理由から、より幅広い層の方に食べていただき、健康寿命の延伸や不健康な食生活の改善、生活習慣病の改善などに寄与していたいと考えています。

ネガティブイメージ払拭のための努力

――「コオロギ」のイメージ払拭のために、どのような努力をしていますか?

西本:パウダー状態にして、姿形は見せないようにすることは勿論、機能性や栄養価など、「コオロギがなぜ良いのか?」という疑問に答えられるよう、きちんと理由を示すようにしています。

例えば、「タンパク質が豊富なので、筋肉量の増加につながり、痩せやすい体になる」とか、「善玉菌を増加させるため、健康的な体になる」などです。

そして、まずは美味しいことが前提じゃないと誰も食べてくれないため、他の健康食品にないような味にこだわったり、コオロギの旨味を増強したりといった努力をしています。

実は、元々コオロギ自体は旨味があって美味しい昆虫です。一般的にナッツのような味と言われており、塩を全く入れなくても、塩っぽい味がしたり、桜エビみたいな味だと言う方もいます。

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そんな元々美味しいコオロギですが、体が小さいため影響を受けやすく、食べた餌によって、味が劇的に変わるという特徴もあります。そのため、私たちは、どの餌を食べたコオロギが美味しいのかを日々追求しているんです。

また、旨味を増やしつつ、臭みを減らすということにも努めています。そのために、色々な餌を与えてみて、モニターの方に食べていただき、どのように味が変化するのかをフィードバックしていただいてます。

中には昆布のような海藻系のダシが出ているものや、カツオなどの動物系の味が出ているものや、ダシなのにチョコレートやご飯の香りがするものとか、餌によって本当に様々な味になるんです。

そのため、その味に応じて、「チョコレートだったらプロテインバー」、「カツオだったらスープ」など、どのような使い方ができるのかを日々追求しています。

――今後解決していきたい課題はありますか?

西本:主な課題は二つあります。一つ目は、まず「どうやって人に食してもらえるか」ということ、二つ目は、もし一度食べてもらえたとして、「どのように次につなげるか」ということです。

環境に優しいコオロギですが、実はコスト面は結構シビアです。現在ベトナムの農家さんと育てた食用コオロギを使用しているのですが、1kgで1万円ほどするので、その値段以上の価値を感じてもらえるような機能性や味を、開発していかなければなりません。

また、現在は味の方をメインで取り組んでいるのですが、どうしても健康面に対して世の中に認知をさせるには時間がかかります。そのためには、引き続きこのような実証実験を行い、実証していけなければいけません。

そういった一つの検査でも、相当な時間とお金がかかります。そのため現在は、あれこれ手を出すのではなく、より確度の高い特定の機能性に特化しています。しかし、それでも時間がかかってしまっているというのが現状です。

その理由は、新しい食品というのは、まず「理解を持たせることが難しい」ということがあります。

それを示すには、大企業にとっても難しいことなので、私たちのようなベンチャー企業がそこを突破していくためには、相当な努力が必要です。

そのため、まずイメージを払拭し、効果を理解してもらうためにも、引き続き腸内環境への改善効果を実証していかれるように努めていきたいと思います。

環境改善につながる地産地消を目指して

――今後の目標を教えてください。

西本:まず、「コオロギの需要を増やし、コオロギ養殖を盛んにする」というのが目標です。

現在、昆虫の養殖は、日本だけではなくタイやベトナムでも行なっているのですが、いずれは海外でもコオロギの養殖をして、その地域でコオロギを消費するというように、地産地消に努めていきたいと考えています。

また、コオロギ自体は何でも食べてくれるため、「余ってしまった食べ物などをコオロギに与え、美味しいコオロギを育てる」という循環を運用できるシステムを整えていきたいです。

昆虫食であれば、依存と搾取、栄養問題の解決につながり、その土地で必要なタンパク質を自ら生産し、消費することができます。途上国でも、他国の支援に頼らずに、自分たちで食のシステムを構築することが可能となります。

昆虫食という古代の文化を、現代版にアップデートすることで、資本や技術を問わずに食を生産することができるのです。そうすれば、フードロスやエコ問題などの改善にもつながります。

私たちは「人にも地球にも優しく」という強い思いを持って、このプロジェクトに取り組んでいます。そのため、今後も少しでも多くの人や地球環境に貢献できるよう、引き続き追求していきたいです。

――ありがとうございました。

――

今回の実証実験を通して、改めて「コオロギ粉末」という新しい発想に対しての理解を深めることができました。「コオロギ」というと、一瞬目を背けたくなってしまう方も多いかもしれませんが、蓋を開けてみると、そこにはあらゆる効果と可能性があることが分かりました。

腸内環境を改善することは、人々の健康寿命延伸にもつながり、QOLを向上させることにもつながります。また、健康問題だけではなく、今後はフードロスやエコ問題などのソリューションにもなりえるかもしれません。

私たちも引き続きこういった実証実験を通して、皆さんがより良い環境下でより健康的な暮らしを送ることができるよう、引き続きあらゆる可能性を探りながら、開拓していきたいと思います。

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