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不確かな旅の先で、魂がふるえた

先日、森美術館で開催中の『塩田千春展:魂がふるえる』に行ってきた。血のような真っ赤な霧状のものが広がっている写真をSNSで見た方も多いのではないだろうか。あれだ。森美術館では一部条件ありだが写真撮影をOKにしている。

ご多分にもれず僕も会場に入ってすぐにスマホで写真を撮っていると、インドのほうからやってきたとおぼしき男性から声をかけられた。英語で話しかけられたためよくわからなったが、ジェスチャーの様子から「俺のスマホの電池が切れたんだ! 代わりに写真を撮ってくれ!」とお願いされていることが読み取れた。

めんどくさいからスルーしようかと思ったが、彼はすでに作品の前でポーズを決めている。インドでは「はい、チーズ!」のことをなんて言うんだろうか。「ナン、チーズ!」だろうか。これがそのときの写真だ。彼からSNSでの公開許諾を得てはいるが、一応ここではマスクをかけておこう。

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ダブルピースするような作品だったのだろうか……。それにしても、撮ったのは僕のスマホだ。どうやってデータを送ったらいいものか。彼はフォンナンバーがどうとか必死に説明していたが、一向に理解しない僕に業を煮やして、僕のスマホを勝手に操作しだした。サクサクとインスタでフォローさせられ、「メッセージで送ってくれ、ナン(NOW)!」ときたもんだ。結局、言葉の壁など圧倒的な積極さの前ではレオパレスの壁くらい薄いものなのかもしれない。ともかく、これで一件落着だ。ゆっくりと作品鑑賞できる。
なんて思っていたのも束の間。入ってすぐに出会ったということは、その後も同じペースで回り続けることになる。大きな作品の前では同じように足を止め、そして目が合う。「ここでも撮ってくれ」の合図だ。専属カメラマンか。またピースしてるし。

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もはや彼を含めて一つの作品と言っていいのではないだろうか。ある意味、魂がふるえた。

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彼抜きでも、展示物は写真で見るよりも遥かに迫力があった。アートのこととか、メッセージ性とか全然わからなくてもそれなりに楽しめる(それが良いかどうかは別として)。

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特に印象的だったのは振動するスーツケースが天井から大量にぶら下がっているというもの。どうやって動かしているのだろうか。天井裏にふるわす係の人がいたのだろうか。

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他にも大量シリーズとして窓を使ったものもあった。鉄拳だったら「こんな家はイヤだ」のネタの一つにしているだろう。

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あ、ごめんごめん。最後のは隣でやっていたピクサー展のものだった。

帰ってから改めて展示会のページを見てみたら、インドの彼と出会った作品は《不確かな旅》というもので、“赤い糸で埋め尽くされた空間は、不確かな旅の先にある多くの出会いを示唆しているかのよう”という説明がされていた。

『塩田千春展:魂がふるえる』は10月27日まで開催中だ。気になる方はぜひ行ってみてはいかがだろうか。作品とだけではない、思わぬ出会いもあるかもしれない。

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