MIU404 視聴想査隊~機捜らしさと「善意」が交錯した第9話初動報告

(バックナンバーはマガジン欄からどうぞ)(今回も観た人向けです)

第9話「或る一人の死」、願いを汲みつつ期待に応えつつまさかのひっくり返しを見せてくるという激烈展開でした。手に汗にぎりっぱなしという方も多かったのでは。

裏切られていく善意

・REC&成川による麦の騙し討ち
・警察による辰井組の家宅捜索
という二つの流れがあって、警察チームが肝心の所を知らないままに誘拐計画が進んでいく……という焦燥感が刻々と濃くなっていく展開でした。

まず序盤、蒲郡・成川・麦の件を通して、警察の「間に合わなかった、守れなかった」一面が強調されました。そして機捜車を掃除しながらの「間に合う、間に合う」という繰り返しや、聴取帰りに麦から語られた「全部、表の世界だけならいいのに」という願望から、彼らのモチベーション、真っ当な善意に基づく決意が浮かび上がりました。

一方の騙し討ちサイド。まずはRECの「人探し」作戦、この時代の闇インターネット事情の反映としてバッチリ。しかもデマに対するツッコミが突破口になってしまうというのが痛い……加えて、ネットではそれなりに拡散されているに関わらず警察は把握できていないというのも痛いですね。SNSに頼った解決が輝いて見えてしまうのも、公的機関に対する不信感や頼りなさがベースにあるでしょうし。メインは僕らへの警句だと思いますが、公的機関に対するアピールとも取れそうです。
そして成川による麦攻略。3話での交流が成川のブレーキになることを期待していたのですが、それを利用して共感を引き出すという手段を取りました。この後も成川はズルズルと誘拐に加担していくのですが、進むにつれて好感度が下がっていき「まあ、死んでもいいっちゃいいな……」「むしろハムちゃん逃がして死ぬくらいがいいのでは?」という感覚にもなっていました。MIUはそういう伝え方を良しとしないだろうと思いつつも。

その途中、機捜メンバーが怪しい動きに気づきかけるシーンもありました。官舎での伊吹&志摩がRECを見つけた所、あるいは桔梗が(成川からの)麦宛の連絡に気づいた所。どちらも機捜メンバーが警察として・人として正しい選択を優先したゆえに悪事が進行してしまうという結果でした。この辺りを通して、正しい心が逆手に取られていく構図が強調されていく。

ただ、ここでRECから無理に情報を引き出す/麦のスマホを盗み見るという選択を取るべきだったかというと、そうは思えないんですよね。捜査の適法性をずっと描いてきたドラマですから……とはいえ、RECの件を桔梗に報告するとか、ハムちゃんに改めて注意を促すとかの対応はあっても良かったと思います。今回は間に合ったから良かったですけど、もし間に合わなかったらずっと悔やんだかもしれません。無意味と分かっていてもifを辿ってしまう。

報われた善意と機捜らしさ

後半の捜索フェーズ、エトリの言葉を元にした推理もありましたが、運によるところが大きい解決でもありました。成川との待ち合わせ場所や井戸というヒントが分かっても、回る順番が違えばあるいは間に合わなかったかもしれない。しかし運の絡む解決だったことにこそMIUらしさ、さらには「善意」へのテーマ性があったと思うのです。

糸口が掴めてからも、「証拠が揃った→犯人確定」というロジカルな解決ではなく、「街に出てひたすら探す」という、いくらか運の絡む方法が取られていました。これについては「機捜がそういう仕事だから」に尽きるのですが。

1話の記事でこのように書いたのですが。解決までの道筋が見えたとしても、タイミング次第では間に合わないのです。第4話もそうでした。しかし今回、視聴者が一番「間に合ってほしい」と願ったであろうシーンで、彼らは間に合いました。狡いが確実なルートではなく、不確実でも真っ当なルートを歩ませ、その真っ当さを勝利させる。言うなれば、書き手という「神」によるメッセージ、あるいは願いに思えるのです。どうか、真っ当な人が報われる世界でありますように、という。
卑怯に徹してでも確実な勝利を目指すキャラは好きなのですが(Fate/Zeroの切嗣とか)、現実に近いリアリティラインで「警察」を描いた本作でこうした展開が選ばれたことには力強いメッセージに感じます。

そして善意といえば、他の警察に相手にされなかった麦を、桔梗が個人的に保護したのが始まりだというのも大きいですね。自分の命が危ぶまれる中でもエトリへの手がかりを桔梗へ託した麦に、そして取り乱すことなく冷静に闘志を漲らせた桔梗に、痺れまくった人も多いのでは。「一緒に戦おう」という桔梗からの言葉に象徴されるシスターフッド、熱かったです……1話で「実働部隊に女性が少ないのでは」と感じもしたのですが、一番頼れる指揮官に女性を置いたことこそシンボリックだったようにも思います。

だからこそ、個人的に麦を保護する桔梗の「善意」が眩しい。同じ女性ですし、シングルマザーという立場ではありますが、経済的には圧倒的に持てる側ですからね桔梗さん。桔梗と麦の間の、シスターフッド的な関係も好感でした。

というのは4話の感想ですが、改めて桔梗と麦の対照的な人生を通した「善意」が沁みました。水道業者の買収も4話を思い出しましたね。他にも、先述の機捜らしさは1話ともつながりますし、成川の件は3話からでしたし、大切な人を救えたという意味では伊吹&志摩の過去ともつながりますし、その意味でもMIUらしさが詰まっていた。特に成川に対する九重の、単なる犯罪者だけでなく手を差し伸べるべき少年だという向き合い方は熱かったです。

真のラスボス降臨

という風に心底ほっとする解決……と思いきや、ラストで文字通りの爆弾投下です。そもそもサブタイで死が示唆されていましたしスタッフロールが最初に流れた時点で嫌な予感はしていたんですけど、散々ラスボス臭をさせていたエトリが久住に殺されるとは思ってもみなかった。久住は敵方と言いつつも中間管理職と思っていましたし、久住もそう思わせようとしていたようですが、ここにきて容赦なく切り捨て。
そして久住、秒で配信者の垢BANをこなしていた辺り、裏だけでなく表にも手が伸びていそうなんですよね……菅田くんが半端な敵で終わるはずはなかったとはいえ、ヤバさに磨きがかかってきました。

ちなみに。麦&成川に危機が迫ったままというクリフハンガーではなく、解決したけど予想外の問題という構成になっていたのも好感でした。クリフハンガーも嫌いじゃないですけど、引き延ばし続けない潔さが光った。

という訳でラスト直前の次回、サブタイは「Not Found」というタイトル回収です。ひとまず残り2回+総括など、良ければお付き合いくださいませ!

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