MIU404 視聴想査隊~痛くて熱い、反転と逆襲の第4話初動報告

(バックナンバーはマガジン欄からどうぞ)(今回も観た人向けです)

僕は土曜(18日)の夜に観たのですが。タイミングもあって壮絶に泣けた回でした、「やってやったぞ私は!!」エンドが最高。第3話とは対照的に、シリアス色が強いけれど前向きなラスト。

解決編~複数視点×クライシス前兆の追跡劇~

MIUに限らず捜査モノにおいては、「事件をどう解決するのか」と「トリックや動機を含めた真相は何なのか」に向けて話が組まれていきますよね。スタンダードな推理劇だと、真相=犯人の解明がそのまま解決になります。いわゆるフーダニット形式(Who done it)にはこれが多いです。
MIUの場合、こうした犯人当てのフォーマットからは外れた構成が多い(というか毎回スタイルが違ってて凄い)のですが。今回だと、解決パートのアクション・サスペンス成分、究明パートの社会派ヒューマンドラマ成分、ぞれぞれの振れ方とレベルの高さが非常に鮮烈でした。そして、それらの材料を同時に分かりやすく見せていく的確さも。

まずは解決パート。青池が負傷した状態でヤクザに追われっぱなしという緊迫性の高さ。そして大金を持っているという違和感がフックになります。
並行して、警察視点から青池の手がかりを追いつつ、彼女のバックグラウンドが描かれます。青池視点では今の状況が、警察視点では過去が明らかになる構成。

青池の職場が怪しいという推測、社長(とヤクザ)の電話という手がかりから、志摩&伊吹も移動開始。そして、青池の移動先と共に、同じバスに乗った銃撃犯+車を飛ばすヤクザが追いかけるという危険成分も提示されます。惨事リスクとしてはシリーズの中でも屈指、ハラハラ度がすごい。

上司サイドで少数/多数の議論が起こったところで、志摩&伊吹がバスに接近、突入による解決が図られます。作戦を立案したのは志摩だと思うのですが、やはり志摩は心理誘導が上手いし伊吹は俊敏。そして後のシーンでは綾野くんの蹴りが綺麗……
このパート、三人目(社長)の登場がサプライズになっているのですが。冷静に考えれば、「怪しい社長を追ってたら目標のバスについた」→「じゃあ社長どこ行った?」という警戒は出来なくもないような……まあ僕は一切思い至らなかったのですが!

それ以上に、拳銃を突きつけられた志摩の態度が印象的でしたよね。ハッタリで敵の意識を集中させて伊吹を動かすという発想自体は彼らしいのですが、狂気に思えるくらい冷静というかあまりにも自分の安全に無頓着すぎるというか。伊吹に詰られても飄々としたままですし、ラストでも正面から答えていないですし……志摩が自分の命にどう向き合っていくのか、過去と合わせて注目です。

蛇足ですが。

オートマチックの拳銃だと、スライドを上手くずらすことで撃てなくするという対応が(理論的には)可能みたいです。引っぱたいて銃口ずらす方がやりやすそうですが……警察とか軍事組織だとどう教えられているんでしょうね。今回言及されたトカレフは、安全装置すら除いた超簡単設計のおかげでコピー・密輸されまくる、裏社会イメージの強い銃です。最近だと「ソードアート・オンライン」で知った方も多いのでは。

話は逸れましたが。
犯人は確保できたものの、青池はもう事切れているという悲痛な結果に。ここまでの数分、僕は彼女の無事よりも「どう止めるか」に意識が逸れていたこともあり、二重に後味の悪い展開でした。ずっと心配できていなくてごめん、という………そう誘導するための演出だったら怖いなあ……

究明編~解釈の反転と伏線の生き方~

そして究明パートです。
Twitter(ツブッター)が手がかりになるのは今らしいですし、検索避けの暗号表記(¥論だRING=マネーロンダリング)を入れてくるのも実例に鋭敏。
しかしまさかUIがミスリードになるというのは、使っている身としても気づかない……正確にいうと、「上から追うという誤解」に思い当たらないし、それを使おうとも考えつかないです。

(余談ですが、小説の特殊形として使ったことはあります)

そして行動履歴からの宝石店の手がかり、さらに九重から先輩へのツッコミを元に、伊吹が推理を再構築。今回も伊吹の情報アプローチ、無意識にインプットしていくスタイルが活きました。

解決後に全貌が明らかになることで、ここまでの色んなシーンが伏線として浮かび上がってきます。

まずは「ウサギ」。
自分のアイコンにしている訳ですし、青池にとっては思い入れのあるモチーフなのでしょう。志摩と伊吹の会話でも、逃げる彼女はウサギに喩えられていました。
さらに、ぬいぐるみのうち小さい方は伊吹が持っていき、運転席の前方に座らせるのですが。走行中にずり落ちます。落ちて倒れたまま運ばれていきます、つまりは救えないことの暗示
それでも、大きいぬいぐるみは一億円輸送のアイテムとして、つまりは少女たちの希望の運び手として機能しました。青池自身は救えなかった、しかし彼女が最後に託した希望は空を渡った……やはり小道具使いが上手すぎる……!
さらに、青池視点での高速道路のシーン。インターチェンジの前で、宅配トラックがバスを追い抜き、お互いの行き先が分岐するのが最後の希望として描かれていました。「分岐点」が鍵だった前回を引き継ぐような構図。

続いては「目」です。
逃走の最中、青池が誰かの「目」を前に思案している様子が描写されます。強調はするが明示はしないことで、あれは何だった? という違和感を植え付けておく。
そして、その目の主=迫害を受ける少女への希望を、うさぎの「目」に偽造して届けるという鮮やかな伏線回収。

さらに、伊吹が(防犯カメラを通して見た)青池の視線に注目していたり。彼女の「最後の景色」が話題になっていたりと、「目」を用いた演出が散りばめられていました。

カネの権力性

カネに翻弄された青池がカネで世界に逆襲する話、僕は今回をそう解釈しました。
転落のきっかけとなったのはヤクザの資金源でもあった裏カジノ。賭けに手を出してしまったこと自体は過ちと言えなくもないですが、そこからは裏社会に追い込まれ、母体の巻き添えに近い形で警察の手に。社会復帰できたと思ったら、ヤクザにカネで買収された職場だった、という。

特にショッキングだったのは、カタギにしか見えない職場が裏で悪に買収されていたという事実でした。暴力団を排除する構造が整いつつある社会で、買収を用いて足場を見つける……という戦法は陣馬が語っていた通りですが。その結果「知らないうちに犯罪の当事者になっている」リスクが生まれるのは、多くの社会人にとって背筋の凍る構図だと思います。

違法薬物の使用防止を啓発するキャンペーンで、「暴力団の資金源になるから」が理由の一つとして挙げられていますが、ヤクザが儲かるってつまりこういうことだよ、という啓発としての説得力が凄まじいです。そして前回も違法薬物が登場していたという。

だからこそ、汚れたカネを「善意」にロンダリングする青池の選択が熱い……ちなみに、善意には余裕が必要だという話は冒頭でも出ていました。軽いトーンの場面にも余念がない。

警察が守れなかった人生を巡って

前回、桔梗の息子(ゆたか)の保護者として描かれていた女性=麦にスポットが当たりました。麦も青池も、裏カジノ事件を巡って人生を狂わされた人間でした。
2話と3話では、警察が関係者を確保することでその後の人生は救われる、という側面が強かったと思います。しかし今回の二人、捜査協力した麦は不自由な生活を強いられていますし、青池は暴力団の影響から逃げられませんでした。裏カジノは摘発されたし発砲犯は捕まった、しかしこぼれ落ちた人生も厳然として存在する……という、警察組織の不足を感じさせる描写が濃い回でした。

だからこそ、個人的に麦を保護する桔梗の「善意」が眩しい。同じ女性ですし、シングルマザーという立場ではありますが、経済的には圧倒的に持てる側ですからね桔梗さん。桔梗と麦の間の、シスターフッド的な関係も好感でした。

そして、裏カジノを巡って存在が示された「エトリ」が今後のボスとして登場する可能性も高いですね。前回登場した売人(菅田くん)と併せ、どう出てくるのかが楽しみです。

「アンナチュラル」での、中堂が追っている事件が思わぬ形で進展した作りに衝撃を受けた方は多いでしょうし。コロナで製作スケジュールが狂った中で、どうピースを組み立ててくるのか楽しみです。

(という振り返りを公開するのが次回放送の直前です。間に合った、ということにしておこう……!)

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